2011 年 65 巻 2 号 p. 100-103
有機農業における無農薬栽培が可能な要因として,有機栽培植物の内生菌叢が病害抵抗性を増強している可能性に着目し,イネを材料として解析を行った。有機栽培イネの地上部に生息する内生菌叢を16S及び18S rDNAを用いたPCR-DGGE法により慣行栽培イネと比較した結果,両者で大きな差異はないが,有機栽培イネにのみ確認できるバンドが存在した。さらに,培養法によって同様に比較したところ,有機栽培イネに特徴的な内生細菌が存在することが示唆された。16S rDNA解析から,それらの中にはPseudomonas属菌やBacillus属菌,Curtobacterium属菌など,過去に病害抵抗性を増強する効果が報告されているものが含まれていた。このうち,AZ2株(Pseudomonas sp.)はいもち病菌の付着器直下の活性酸素生成を促進し,侵入菌糸の伸展を遅延する効果があることが明らかとなった。しかしながら,病斑形成には影響せず,AZ2株単独ではいもち病の発生を抑えることはできないと考えられた。今後,その他の菌の影響を解析すると共に,AZ2株の様な内生菌が有機栽培イネに存在する普遍性を検証する必要がある。