土と微生物
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安定同位体プロービング(SIP)法で探る水田土壌の炭素動態と微生物
村瀬 潤
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2013 年 67 巻 1 号 p. 39-46

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抄録

安定同位体プロービング(SIP)法は,土壌微生物の機能と系統分類をつなぐ強力なツールである。湛水水田土壌ではその環境を反映した特徴的な微生物代謝が進行しており,各代謝過程に関与する微生物群集のSIP法による解析が精力的に進められてきた。本稿では,水田土壌の微生物研究におけるSIP法の適用例とその成果を取りまとめた。使用する基質の多様化や培養条件の検討によって,様々な場面でSIP法の有効性が示され,これまでに,水稲根から供給される光合成有機物の利用,植物遺体の分解,脱窒,鉄還元,嫌気的微生物代謝における有機酸の代謝,メタン生成,メタン酸化に関わる微生物群衆が解析された。SIP法により特定の微生物の機能が実証されたほか,新規の微生物の関与や新たな微生物代謝の存在も明らかとなった。また,基質をめぐる微生物の共生関係や微生物食物連鎖など,微生物間の相互作用と炭素循環との関係もSIP法によって示された。

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