現代微生物学は微生物を「純粋に分離・培養する」ことから始まった。固体培地でコロニーを形成させるという今日誰 もが行っている方法は1890 年代に出来上がったものである。一方,環境微生物の多くは寒天培地でコロニーを形成しないことは古くから知られている事実である。しかし,なぜ「多くの微生物が寒天培地でコロニーを形成しないのか」につい ては十分な検討が行われているわけではない。次世代シークエンシング技術の台頭によって培養せずとも未知微生物のゲノムが解き明かされる時代を迎えたが,微生物を培養することの重要性はいささかも揺らぐことはない。本総説では固体培地に用いるゲル化剤の種類や培地の調製法といった極めて根源的なところに潜む問題点を概説する。