土と微生物
Online ISSN : 2189-6518
Print ISSN : 0912-2184
ISSN-L : 0912-2184
卵菌ウイルスを用いたピシウム菌の生態調査の可能性
望月知史
著者情報
ジャーナル フリー

2020 年 74 巻 2 号 p. 45-49

詳細
抄録
卵菌は真菌と同じく菌糸体を持つ微生物であるが,菌界とは異なるストラメノパイル界に属する原生生物の1 つであ る。卵菌には疫病菌,べと病菌,ピシウム菌など重要な植物病原菌が含まれており,Phytophthora属,Sclerophthora属やPlasmopara属から卵菌ウイルスが見つかっている。ピシウム菌に感染する卵菌ウイルスの報告はほとんどなかったが,私たちは極地生息性ピシウム菌(Globisporangium polare)や植物病原ピシウム菌(G. splendensG. ultimum var. ultimum)から新奇なRNA ウイルスを同定した。G. polareG. splendensにそれぞれ感染していたPpRV1 とPsRV1 は宿主菌株の形態や生育に影響を及ぼさない潜在感染性ウイルスであった。北極圏のスピッツベルゲン島のLongyearbyen とNy-Ålesund の2 地点から収集されたG. polareに感染しているPpRV1 の分子系統解析により,G. polareとPpRV1 はそれぞれの地域で独立して進化してきたと推測された。また,福岡県と宮崎県の畑土壌に生息しているG. splendens分離株には高い塩基配列相同性(>99%)をもつPsRV1 が感染しており,PsRV1 に感染したG. splendensは少なくとも九州地域内で移動していると推測された。以上のように,ピシウム菌に感染する卵菌ウイルスを利用し,宿主のピシウム菌の生態を調査できる可能性が示された。
著者関連情報
次の記事
feedback
Top