土と微生物
Online ISSN : 2189-6518
Print ISSN : 0912-2184
ISSN-L : 0912-2184
農耕地土壌における硝化による温室効果ガス一酸化二窒素(N2O)の発生とその対策
―硝化制御による N2O 発生抑制剤開発の基盤構築―
大林 翼 Nobuhiro Luciano Aoyagi山崎 俊正多胡 香奈子早津 雅仁
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2023 年 77 巻 2 号 p. 51-60

詳細
抄録

硝化は脱窒と窒素固定とともに生物地球化学的に重要な窒素循環プロセスのひとつである。硝化反応によって,アンモニアが硝酸に変換される過程において,温室効果ガスの 1 種である一酸化二窒素(N2O)が生成される。さらに,農耕地土壌における硝化反応は窒素肥料成分の地下水への溶脱といった環境汚染や窒素損失にもつながっている。硝化による窒素損失や N2O 発生を低減させるために,抜本的な対策が求められている。本稿では,農耕地における「硝化(特にアンモニア酸化)」と「N2O」の 2 点に着目し,まず,硝化反応に関わる微生物と硝化からの N2O 生成機構を解説した。次に,農耕地土壌における硝化と N2O 発生について,環境要因と微生物の両面から説明した。農耕地土壌における硝化由来の N2O 削減のための既存の硝化抑制技術を概説した後,農耕地土壌での N2O 発生の寄与度が大きいアンモニア酸化細菌(AOB)の生理生態の特徴を述べた。そして最後に,ヒドロキシルアミン酸化還元酵素(HAO)に着目した新規硝 化抑制剤の開発について解説した。

著者関連情報
次の記事
feedback
Top