抄録
Verticillium dahliaeは多犯性の植物病原糸状菌であるが,その宿主範囲は菌株ごとに異なる。例えば,本菌菌株にはピーマンに病原性を示すものと示さないものがある。しかし,病原性決定機構は不明である。ピーマンへの病原性が異なる菌株Chr208(病原性なし)とVdp4(病原性あり)を遺伝的に交雑したこれまでの研究で,ゲノム領域GL3がピーマンへの病原性に連鎖することが示されている。そして,本研究で菌株Chr208(病原性なし)とCns(病原性あり)を交雑した場合も,同様の結果となった。ところが,菌株TV103(病原性なし)とCns(病原性あり)を交雑した組換え株では,ゲノム領域GL3と菌の病原性は一致しなかった。この組換え株をDNAマーカーにより解析したところ,別のゲノム領域GL5がピーマンへの病原性と連鎖することが明らかになった。一方で,非病原菌由来のGL3を持つ菌株は病原力がやや弱い傾向が見られた。さらに,菌株TV103(病原性なし)とVdp4(病原性あり)を交雑して解析したところ,GL3もしくはGL5のいずれか一方のゲノム領域がTV103(病原性なし)に由来する組換え株は,病原性を示さなかった。以上のように,従来知られていたゲノム領域GL3に加えて,GL5にもV. dahliaeのピーマンに対する病原性や病原力の決定に関与する遺伝子が存在する可能性が示された。