外科と代謝・栄養
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特集 「サルコペニア併存消化器外科手術に対する術前・術後栄養管理」
救急・集中治療領域 重症患者における栄養管理
中西 信人小谷 穣治
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2022 年 56 巻 6 号 p. 229-234

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抄録

 救急・集中治療領域では重症状態にある消化器外科手術患者の管理をすることが多い. 重症患者の栄養管理において, 早期経腸栄養,経静脈栄養 , 蛋白質 , カロリー , リフィーディング症候群 , 急性期後における栄養管理の重要点をまとめた. 早期経腸栄養は48時間以内に開始する必要がある. しかし, ノルアドレナリンを約0.2 μg/kg/min以上使用するような超重症な病態では非閉塞性腸管虚血をきたす可能性があり, 経腸栄養を遅らせるのが望ましい. 経静脈栄養は急いで投与する必要はなく, 約1週間以上経腸栄養が開始できない場合に検討が必要である. 蛋白質は筋萎縮を予防するためにも1.2‐2.0 g/kg/day程度必要であり, 透析を施行している患者などより蛋白質が必要な患者にはさらの高容量の蛋白質が必要である. カロリー投与は間接熱量計を使用して消費エネルギー量に基づいて投与するのが望ましいが, 間接熱量計を使用できない場合は25 kcal/kgなどの計算式を用いて過剰にならないように, Permissive underfeedingで投与する必要がある. 一方で, 栄養開始後のリフィーディング症候群に関しては常に注意する必要があり,リスクの高い患者では連日の血中のリンの値を測定することが望ましい. 急性期離脱後は十分量の蛋白質とともにカロリーもフルフィーディングに移行していく. これらの栄養管理は栄養士とともに多職種で行うことが望ましく, 多職種で重症患者の栄養状態向上して, 社会復帰を目指していく必要がある.

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© 2022 日本外科代謝栄養学会
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