外科と代謝・栄養
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特集 「外科代謝栄養に役立つ漢方薬の科学的根拠」
疼痛・ストレス:抑肝散
砂川 正隆
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2025 年 59 巻 2 号 p. 56-60

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抄録

 疼痛は心理的ストレスとの密接な関連があり,その相互作用は慢性疼痛患者の治療において重要な課題となっている.抑肝散は古くから使用されてきた漢方薬であり,抗不安作用,抗ストレス作用,鎮痛作用が報告されている.構成生薬には,興奮性シナプス伝達の抑制,抑制性シナプス機能の回復,グリア細胞の活性化抑制,下行性疼痛調節システムの調整といった作用が認められる.また,基礎研究や臨床研究により,抑肝散は神経障害性疼痛や線維筋痛症などの難治性疼痛疾患に対して高い有効性を示し,従来の治療法が無効であった患者に対しても有用であることが示された.さらに,抑肝散はセロトニン神経系の調節やオレキシン分泌抑制,オキシトシン分泌促進を通じて抗ストレス・抗不安作用を発揮し,認知症の行動・心理症状(BPSD)の改善にも効果を示している.これらの多面的な作用は,抑肝散が疼痛性疾患およびストレス関連疾患における治療薬として有望であることを示唆している.

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© 2025 日本外科代謝栄養学会
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