社会心理学研究
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原著論文
陰謀論信奉と信頼行動との関連:二次分析による検討
松本 良恵李 楊新井 さくら井上 裕香子清成 透子山岸 俊男
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2023 年 39 巻 2 号 p. 43-53

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抄録

Empirical studies have shown that beliefs in conspiracy theories are associated with low self-reported attitudinal trust in other people in general. However, self-reports do not always reflect actual behaviors. The present study investigates whether beliefs in conspiracy theories are negatively associated with actual trust behavior. We conducted a secondary analysis to examine correlations between conspiracy beliefs and trust behavior measured in a monetarily incentivized economic game (trust game) as well as self-reported attitudinal general trust. The results demonstrated that the more people believed in conspiracy theories, the less they entrusted their money to strangers when there was a risk of being betrayed and losing money. The present research confirms that conspiracy beliefs are associated with low trust regardless of whether trust is self-reported attitude or actual behavior which entails the risk of betrayal.

問題

「アメリカを第2次世界大戦に参戦させるため、当時のルーズベルト大統領は真珠湾の防備を手薄にするという罠をしくんで、日本を攻撃に誘い込んだ」、「ユダヤ人の秘密組織イルミナティは、自分たちがコントロールする遺伝子操作食物しか地球上で育たないようにすることで、世界を支配しようとしている」。このような「陰謀論」は、それを信じていない大多数の人にとっては滑稽な妄想に思われる。しかし、少なからぬ人が信じており、単に「面白い話」という以上の影響を及ぼしていることが知られている。

陰謀論に関しては未だ統一的な定義はない状態(Brotherton & Eser, 2015)だが、一般的な理解に近いものとしては、「検証されていない、比較的信憑性の低い陰謀を主張することであり、重要な出来事が超常現象的で邪悪で強力な集団によって実行された極秘計画の結果だと主張すること(Brotherton & French, 2014, p. 238)」や、「陰謀論とは、過去または現在の現象に対する代替的な説明であり、権力者集団が利己的で悪意のある目標を達成するために秘密裏に行動していることを非難するもの(Meuer & Imhoff, 2021, p.1)」などが定義として挙げられる。本研究でも、一般的陰謀論信奉尺度(Brotherton et al., 2013)の著者を含むBrotherton & French(2014)の定義を採用する。

陰謀論の特徴としては、政治、経済、科学などの幅広いトピックをカバーしている(Cairns, 2016; Jolley & Douglas, 2014; Swami et al., 2010)ことや、ある陰謀論を信じる人は他の陰謀論も信じやすい(Goertzel, 1994)だけでなく、それと矛盾するような陰謀論(Wood et al., 2012)や、完全に架空の陰謀論(Swami et al., 2011)までも信じることなどが挙げられる。日本で行われた数少ない研究であるMajima & Nakamura(2020)では、Brotherton et al.(2013)の尺度を邦訳し、日本人を対象に探索的因子分析を行ったところ、先行研究とは異なり、一般的陰謀論信奉傾向と地球外生命体に関する陰謀論信奉傾向の2因子になったことが報告されている。他方で、山本(2020)は日本独自の陰謀論を用いて、内容が異なる複数の陰謀論であってもそれらを全般的に信じる傾向を示すクラスターが存在することを確認している。以上のことから、概して陰謀論信奉者は、ある出来事に関する説明一つひとつに対して、その現実性や論理性を吟味した上で信じているのではなく、権力を持つ悪意ある組織ないし個人の存在が、出来事の背後にあることを前提とした説明を好む傾向があるものと思われる。

陰謀論信奉がもたらす悪影響

陰謀論信奉は、単に代替的な説明を好む傾向にとどまらず、社会的な影響をもたらし得る。例えば、政治的・社会的制度への不信(Kramer, 1999)や政府による人種差別が横行しているという誤った信念(Crocker et al., 1999)との関連が指摘されている。個々人の生活に与える影響としては、陰謀論を信じる傾向と遺伝子組み換え食品や気候科学などの科学に対する拒否感情との関連(Lewandowsky et al., 2013)、代替医療の有効性を信じる傾向との関連(Galliford & Furnham, 2017)、健康診断を受けるかどうかの判断に負の影響をもたらす(Oliver & Wood, 2014)ことなどが挙げられる。さらに、ワクチン接種に対する拒否的な態度(Jolley & Douglas, 2014; Lewandowsky et al., 2013)、「COVID-19のパンデミックはデマだ」と思う傾向、手洗いや人の接触を避けるといったウイルスの封じ込め行動の抑制(Imhoff & Lamberty, 2020)などとの関連も指摘されている。ワクチン接種の拒否傾向やウイルスの封じ込め行動の抑制は、信奉者本人のみならず、多くの他者の健康をも脅かす。これらの研究は、陰謀論信奉が持ちうる社会的影響の大きさを示唆している。

陰謀論信奉者の特徴

こうした陰謀論を信奉する人々には、共通の心理傾向があることが明らかにされている。具体的にはパラノイド傾向(Brotherton & Eser, 2015; Darwin et al., 2011)、疎外感(Leman & Cinnirella, 2013)、アノミー(Abalakina-Paap et al., 1999; Brotherton et al., 2013; Goertzel, 1994)、自尊感情の低さ(Abalakina-Paap et al., 1999; Galliford & Furnham, 2017; Swami et al., 2011)、権威主義的パーソナリティ(Abalakina-Paap et al., 1999)、敵意(Abalakina-Paap et al., 1999)などがある。これらのことから、ある特定の人々にとって陰謀論が出来事の説明として魅力的に映るのは、疎外され、社会の中で不遇な目に遭っていることを陰謀の主体に原因帰属し、その結果として自尊感情の維持を可能にするといった、ある種の正当化を行うため(Abalakina-Paap et al.,1999; Brotherton & Eser, 2015; Goertzel, 1994)だという説明が提案されている。この正当化仮説の導出に用いられたさまざまなパーソナリティ特性の一つとして、他者に対する信頼の欠如との関連が多くの研究で指摘されてきた。

信頼との関連

具体的に蓄積されてきた知見としては、親密な他者や近所の人といった特定の個人に対する不信(Brotherton et al., 2013; Goertzel, 1994; Leman & Cinnirella, 2013)や、未知の他者一般に対する不信(Abalakina-Paap et al., 1999; Hamsher et al., 1968; Meuer & Imhoff, 2021; Wright & Arbuthnot, 1974)など、さまざまな他者に対する不信との関連が示されている。陰謀論の定義(Brotherton & French, 2014; Meuer & Imhoff, 2021)に基づいて考えると、さしたる権力を持たない個人に対する不信が陰謀論信奉と関連する理由は、直感的には理解し難い。これに対しては、「一般に人は利己的である」といったより高次の信念が陰謀論信奉や他者に対する不信の両方の基礎にあるという解釈(Meuer & Imhoff, 2021)や、「悪意のある他者による不正行為に、制度は介入できない」といった制度に対する不信が対人的な不信の基盤にあるという解釈(van Prooijen et al., 2022)なども見られている。

ただし、これらの知見はすべて心理尺度に対する回答といった自己報告の変数によって導き出されたものであることには注意が必要である。事実、社会心理学の古典的な研究によれば、態度と行動は必ずしも一貫しないことが知られており(Ajzen & Fishbein, 1977; LaPiere, 1934)、信頼と信頼行動の関係においても同様のことが指摘されている(Glaeser et al., 2000)。

信頼行動は、その信頼が裏切られるリスクを伴う意思決定である。そのため、たとえ信頼したいという態度を持つ者でも、裏切られるリスクがある状態で信頼行動に踏み切ることができる保証はない。とりわけ、相手が信頼できるか否かに関する情報が全くない場合や、金銭的なインセンティブのある状況ではリスクはさらに高くなる。例えば、信頼できるかよく分からない相手を信頼して大金を貸したり投資したりする時、相手に裏切られてしまうと、お金は一銭も戻ってこず、大損をすることになる。しかし、態度的な信頼はその限りではない。たとえ他者を信頼すると回答しても、実際に信頼する行動をとらない限り、他者から裏切られる目には遭わないからである。このように、自らが裏切られるリスクを伴う他者一般に対する信頼行動は、その意味で態度的な信頼と同一とは言えず、陰謀論信奉との関連は自明ではない。したがって、信頼行動と陰謀論信奉が、態度的な信頼と陰謀論信奉と同様の関係を持つことを確認する必要がある。

陰謀論信奉と信頼行動との関係

陰謀論信奉と他者一般に対する不信行動との関係に言及している研究に、Wood & Douglas(2013)がある。この研究では、複数のニュースサイトに対するコメントを分析し、陰謀論を支持する発言の方が、陰謀論を否定する発言よりも、不信感を表明する発言(「メディアの言うことは信じない」、「最近は誰も信じられなくなった」など)と共起する頻度が高いことを明らかにした。ただし、ニュースサイトのコメントによって他者への信頼(不信)を表明することは「行動」ではあるが、その信頼が報われることで得られる実質的な利益や、裏切られることによる損失があったとは言い難い。さらに、これらのコメントは自己顕示欲の表れや説得戦略である可能性も指摘されており(Meuer & Imhoff, 2021)、信頼・不信行動の指標としての妥当性には疑問が残る。

Libman & Vollan(2019)では、金銭的なインセンティブのある経済ゲームにおける信頼行動と陰謀論信奉との関連を検討している。この研究では、外集団を主体とする陰謀論の信奉傾向が内集団成員に対する信頼を生むという仮説のもとで、金銭的なインセンティブを伴う信頼行動が測定された。具体的には、信頼行動をとるためには金銭的なコストがかかり、その信頼が裏切られる可能性もある実験状況が設定されていた5)。つまり、個人にとっての実質的な損失や利益を伴う意思決定を測定していたと言える。ただし、この研究ではオークションといった特定の状況における入札者同士の結託の予測を不信の指標としており、他者一般に対する信頼については検討していない。また、Meuer & Imhoff(2021)では標準的な経済ゲームの一つである信頼ゲーム(Berg et al., 1995)を用いて陰謀論信奉者が金銭的なインセンティブのある状況で実際に他者を信頼しないという行動傾向を持つことを明らかにした。ただし、この研究では信頼ゲームを行う際、相手の顔写真を呈示し、「その特定の写真の相手」に対する信頼行動を測っていた。このことから、参加者は呈示された顔写真の性別や表情を含む身体的特徴に基づいて、個別の相手の信頼性を判断したと考えられ、厳密には相手についての情報が全くない場合の、いわゆる「他者一般」に対する信頼行動は測定できていない。つまり、相手が自分を裏切るかどうかに関する情報が一切ない場合でさえ、陰謀論信奉者が相手を信頼しないのかについては明らかにされていない。

本研究の目的

このように、陰謀論信奉と他者一般に対する信頼行動の関係については、未だ十分な検討がなされていない。そこで本研究は、陰謀論信奉傾向と、他者一般に対する信頼行動の相関関係の検討を目的とする。心理尺度で測定された信頼のみならず、実際の信頼行動との関連を相関レベルであっても検討することは、陰謀論信奉者による不信行動が社会に与える影響を推測する上でも重要だろう。心の性質は、行動として表出されて初めて他者に対する影響を及ぼし得るからである。

本研究では、信頼ゲームによって他者一般への信頼行動を測定した研究プロジェクトのデータセットを利用し、二次分析を行う。本研究の仮説は以下の通りである。

  • 仮説:陰謀論信奉と、他者一般に対する信頼行動は、心理尺度で測定された一般的信頼と同様に、負の関連を示す。

さらに上記の検討に加えて、当該データセットに含まれている変数のうち、これまで陰謀論信奉と関連するとされてきたパラノイド(妄想)傾向、自尊感情の低さ、権威主義的パーソナリティ、および敵意を分析に加え、欧米を中心に実施されてきた先行研究とは異なる歴史的・文化的背景を持つ日本においても陰謀論信奉と同様の関係が見られるかどうかを確認する。

方法

データセットの概要

本研究は、山岸俊男らによって行われた「向社会的行動の心理・神経基盤と制度的基盤の解明(JSPS科研費 23223003)」および「向社会行動を支える心と社会の相互構築(15H05730)」にて作成されたデータセットを研究代表者の許可のもと、利用した。この研究プロジェクトは、人間の向社会性の心理・神経基盤と、その背後にある制度(他者の反応の予測を可能とする共有信念・誘因複合体)との間の相互構築関係の解明を目的としていた。2012年~2018年3月までの間に、約600人の非学生参加者に計9回の実験研究に参加してもらった6)。参加者募集は、ポスティング会社を通じて東京都多摩地区周辺の住民を対象に、チラシを18万枚配布して行われた。およそ1,400人の応募者の中から、性別と年代がおおむね同数になるよう割り付けを行い、1回目の実験研究には20代~50代の男女564人が参加した7)。参加者は研究実施機関であった玉川大学の実験室を訪れ、実験室内の個室の中に配置されたコンピュータを通して経済ゲームなどの実験の意思決定や、さまざまな心理尺度への回答を行った。当該研究プロジェクト全体の目的と本論文の目的とは異なっているが、人々が社会をどのように捉えるのか、その傾向を探るという点では目的を共有している8)

分析対象変数

本研究で使用した変数と、その変数が測定された実験回は次の通りである。

陰謀論信奉尺度

プロジェクトの第7回目の実験実施時に、表1に示す8つの陰謀論それぞれに対して「世の中には、次のような意見があります。あなたはその意見についてどう思いますか。」と教示し、「1. 正しい可能性はほぼゼロである」から「5. ほぼ正しいと思う」までの5件法で回答を求めた9), 10)。本研究で用いられた陰謀論信奉尺度が一次元構造を持っていたかを確認するため、探索的因子分析(最尤法、プロマックス回転)を行ったところ、固有値から1因子構造が妥当だと判断した(α=.84)。

表1 陰謀理論信奉尺度の各項目の第1因子への負荷と平均値(標準偏差)

項目負荷量MSD
1NASAのアポロ計画で宇宙船は実際には月に到達しておらず、月面上からの中継画像は地球上の特撮スタジオで撮影されたものである0.5232.293(0.959)
2アポロ計画では宇宙飛行士が実は宇宙人を目撃していたが、NASAはそれを隠している0.6272.360(0.976)
3ロスチャイルド家に代表されるユダヤの大金持ちたちがつくるフリーメーソンという秘密組織が、これまで世界各国の指導者たちを支配してきた0.5772.880(0.862)
4ユダヤ人の秘密組織イルミナティは、自分たちがコントロールする遺伝子操作食物しか地球上で育たないようにすることで、世界を支配しようとしている0.7052.165(0.824)
5映画『未知との遭遇』は、すでに宇宙人と交流を始めているアメリカ政府が、宇宙人の存在について人類にショックを与えないようにする目的で、実話にもとづいて作られた映画である0.7012.229(0.920)
6アメリカを第2次世界大戦に参戦させるため、当時のルーズベルト大統領は真珠湾の防備を手薄にするという罠をしくんで、日本を攻撃に誘い込んだ0.5792.827(1.008)
79・11の米国同時多発テロは、「新しい真珠湾攻撃のような事件があれば世論を味方につけることができる」という、アメリカの新保守主義者のシンクタンクが作った筋書きに従って、アメリカのCIAがテロリストたちを使って起こした事件である0.6642.067(0.938)
8ダイアナ妃はイスラム教徒の大金持ちの子を妊娠していたため、イギリス王室の要請で情報局秘密情報部(MI6)により事故に見せて殺された0.6372.46(0.985)
固有値3.171

信頼ゲーム

信頼ゲームは第5回目の実験で実施された。実験セッションには5人~10人が参加した。各参加者は個別に仕切りのある実験室で実験に参加したため、基本的に他の参加者とは対面せず、匿名状況で実験が行われた。具体的な実験手続きは、次の通りだった。同じ実験セッションに参加した人の中から2人がランダムに組み合わされ、2人のうち一方は預託者、もう一方には受託者の役割が割り当てられた。預託者は、実験者から渡された元手1,000円の内いくらか(0円~1,000円の間の100円刻みの金額)を相手に渡すことができた11)。渡された金額は、実験者によって3倍にされて受託者に預けられた。受託者は、受け取った金額のうち預託者へいくら返すかを10%刻み(500円を預託された場合はその3倍の10%で150円刻みとなる)で決定した。受託者の意思決定は、標準的な測定手法である戦略法(strategy method)によって行われた12)。具体的には「預託者から100円を預けられた場合に何%を相手に返すか」から、「預託者から1,000円を預けられた場合に何%を相手に返すか」までの10通りの場合についてあらかじめ意思決定を行った。参加者には、預託者としての意思決定と受託者としての意思決定の両方を行ってもらった後で、ランダムにペアが組まれて役割が確定すると教示された。各自の報酬金額は、預託者と受託者の実際の意思決定に応じて決定された。

この信頼ゲームでは、預託者は自分が預託した金額の1/3より多く相手が返してくれると信頼できれば預託したほうが良い利得構造になっていた。本研究はこの預託金額を預託者の信頼行動の指標とし、陰謀論信奉傾向との関連を検討する。

一般的信頼尺度

第1回目、第3回目、第6回目の実験で、Yamagishi et al. (2015)の一般的信頼尺度の5項目が測定された。具体的には「ほとんどの人は基本的に正直である」、「私は人を信頼するほうである」、「ほとんどの人は基本的に善良で親切である」、「ほとんどの人は他人を信頼している」、「ほとんどの人は信用できる」という質問に対して、「1. 全くそう思わない」から「7. 強くそう思う」までの7つの選択肢を示し、参加者が自身の考えに最も近いものを選択した。それぞれの回の測定値の平均値と標準偏差が異なるため、本研究で使用したデータセットでは各回で標準化され、それらの平均値を用いた13)

General Social Survey(GSS)の一般的信頼項目

第1回目と第7回目の実験では、シカゴ大学による総合的社会調査(GSS)で用いられた信頼に関する質問項目への回答が測定された。具体的には「たいていの人は信頼できると思いますか、それとも人と付き合うときには常に用心した方がよいと思いますか。」という問いに対して「1. 信頼できると思う」、「2. 常に用心したほうがよい」の2つの選択肢を示し、自分の考えにあてはまると思う方を選択してもらった14)

その他の変数

パラノイドの指標として用いる統合失調症傾向(Raine, 1991; 日本語版:飯島他,2010)は、第3回目の実験で測定された。下位尺度7つの内、統合失調症の陽性症状とされる「関係念慮尺度」、「魔術的思考尺度」、「異常知覚体験尺度」、「猜疑心尺度」を分析に用いた。自尊感情(Rosenberg, 1965; 日本語版:山本他,1982)および権威主義的パーソナリティ(西山,1972)は、第2回目の実験で測定された。攻撃性尺度(Buss & Perry, 1992; 日本語版:安藤他,1999)の下位尺度である「敵意」は第4回目の実験で測定された。デモグラフィック変数は、第1回目の実験で測定された、性別(0. 女性、1. 男性)、年齢15)、婚姻状態(0. 現在婚姻していない、1. 婚姻している)、持ち家の有無(0. なし、1. あり)、学歴(高等教育を受けた(1)か、否(0)か)を用いた。主観的階層については、「かりに現在の日本の社会全体を5つの層に分けるとすれば、あなた自身は、このどれに入ると思いますか。」という質問に、「1. 上」、「2. 中の上」、「3. 中の下」、「4. 下の上」、「5. 下の下」の5件法で回答を求め、逆転処理を行った。年収は「1. なし」、「2. 150万円未満」、「3. 300万円未満」、「4. 500万円未満」、「5. 700万円未満」、「6. 1,000万円未満」、「7. 1,000万円以上」の7件法で回答を求めた。

分析対象者

分析に用いる項目すべてに回答した375人(女性180人、男性195人)。

結果

記述統計

分析対象とした各変数の記述統計量を表2に、順位相関分析の結果を表3に示す16)。陰謀論信奉、信頼ゲームにおける信頼行動、一般的信頼(Yamagishi et al., 2015)、GSSの一般的信頼に大きな外れ値は見られなかったものの、正規分布に従っているとは言えなかったため、順位相関を用いて分析した17)。信頼行動の平均値は451.20円(SD 336.29円)だった。500円を選ぶ人が全体の22.13%(83人)と最多で、次いで1,000円が18.40%(69人)、0円が17.87%(67人)であった。この3つの値を選択した人が全体の58.40%だった。

表2 各変数の記述統計量

αMSDMinMax
陰謀論信奉.8382.4100.6381.0005.000
性別0.5200.5000.0001.000
年齢41.18410.35120.00059.000
婚姻状態0.6130.4880.0001.000
持ち家の有無0.4930.5010.0001.000
主観的階層3.0110.8081.0005.000
高等教育0.7150.4520.0001.000
年収*3.5331.6051.0007.000
信頼行動451.200336.2940.0001000.000
一般的信頼(Yamagishi et al., 2015.9180.0420.840−2.5131.975
一般的信頼(GSS)0.5080.4170.0001.000
SPQ関係念慮.7320.2500.2180.0001.000
SPQ魔術的思考.6990.2680.2540.0001.000
SPQ異常知覚体験.6380.1910.1850.0000.778
SPQ猜疑心.7520.3210.2650.0001.000
自尊感情.8704.3810.9411.5006.500
権威主義的パーソナリティ.8673.4470.4212.1754.575
BAQ敵意.8322.7710.6771.1435.000

注)年収の中央値は3 (300万円未満)だった。

表3 分析対象とした変数の順位相関分析の結果

1234567891011121314151617
1. 陰謀論信奉
2. 性別−.016
3. 年齢−.076.050
4. 婚姻状態−.023.026.483***
5. 持ち家−.009−.109*.439***.510***
6. 主観的階層−.115*−.038.227***.335***.303***
7. 高等教育−.114*.149**−.009−.029−.003.168**
8. 年収−.023.599***.233***.131*.043.193**.154**
9. 信頼行動−.143**.065.121*.107*.001−.041.036.089
10. 一般的信頼(Yamagishi et al., 2015−.164**−.007.247***.152**.067.184**.100.135**.255***
11. 一般的信頼(GSS)−.134**.057.178**.120*.026.150**.020.086.255***.638***
12.  SPQ関係念慮.229***−.050−.160**−.186**−.145**−.091.053−.066−.062−.163**−.199**
13. SPQ魔術的思考.290***−.067−.043−.053−.037−.109*−.095.004.023.011−.055.439***
14. SPQ異常知覚体験.213***−.119*−.126*−.108*−.072−.175**−.128*−.091−.055−.128*−.094.538***.595***
15. SPQ猜疑心.133*−.012−.226***−.287***−.199**−.226***−.023−.095−.164**−.363***−.416***.498***.218***.373***
16. 自尊感情−.005.091.254***.251***.119*.325***.112*.225***.022.249***.183**−.123*−.006−.148**−.321***
17. 権威主義的パーソナリティ.201***−.042−.036−.035−.052−.095−.131*.005−.138**−.095−.216***.193**.140**.096.251***−.046
18. BAQ敵意.229***.064−.255***−.217***−.141**−.245***−.008−.023−.156**−.349***−.332***.426***.153**.307***.614***−.471***.199**

*** p<.0001 ** p<.01 * p<.05 p<.10

仮説の検証

陰謀論信奉と信頼行動、一般的信頼(Yamagishi et al., 2015)、GSSの一般的信頼との関係について、デモグラフィック変数を統制した偏順位相関分析を行った結果、陰謀論信奉は、信頼行動および二種類の一般的信頼のいずれとも弱い負の関連を示した。信頼行動との間の偏順位相関係数は−.142(p=.0063)、一般的信頼(Yamagishi et al., 2015)との間では−.132(p=.0112)、GSSの一般的信頼との間では−.110(p=.0342)であった。このことから、他者一般に対する自己報告の態度的な信頼傾向のみならず実際の信頼行動までもが、陰謀論信奉と負の関連を持つことが確かめられ、本研究の仮説は支持された。

さらに、先行研究において陰謀論信奉との関係が指摘されてきた変数との関係についてもデモグラフィック変数を統制した偏順位相関分析を行った。陰謀論信奉との間の偏順位相関係数は、統合失調症傾向の陽性症状の下位尺度である関係念慮では.232(p<.0001)、魔術的思考では.275(p<.0001)、異常知覚体験では.186(p=.0003)、猜疑心では.114(p=.0293)であった。権威主義的パーソナリティでは.182(p=.0005)、敵意では.207(p<.0001)であった。以上の変数と陰謀論信奉の関係は先行研究と同様に認められた。しかし、自尊感情の偏順位相関係数は.005(p=.3286)であり、先行研究で見られたような負の関係は見られなかった。

考察

本研究では、陰謀論信奉傾向と自己報告の一般的信頼、および他者一般に向けられた、裏切られるリスクを伴う実際の信頼行動との相関関係を検討した。その結果、先行研究と同様に自己報告の一般的信頼は、陰謀論信奉と負の相関を示した。これに加えて、これまで十分な検討がなされていなかった他者一般に向けられた信頼行動とも負の相関を示し、本研究の仮説は支持された。さらに、欧米を中心に実施されてきた先行研究で陰謀論信奉との関連が示されてきた、パラノイド傾向、権威主義的パーソナリティ、ならびに敵意との正の相関が、日本人サンプルにおいても確認された。加えて、今回の陰謀論信奉尺度を構成していた各項目は互いに全く別の陰謀論に関する信奉の程度を問うものだったが、項目間には中程度の正の相関が見られた9)。欧米での研究結果と一貫するこのような知見は、陰謀論信奉のあり方の普遍性を示唆するものと考えられる。同時に、自尊感情の欠如が陰謀論信奉と結びつくという欧米での知見は再現されず、欧米と日本における陰謀論信奉との相違も見出された。この結果は、少なくとも日本では、陰謀論信奉が自尊感情を回復する手段とはなっていない可能性を示唆するかもしれない。ただし自尊感情については、東アジアの国々の方が欧米よりも低いことや、逆転項目の解釈が国によって異なること(Schmitt & Allik, 2005)などが指摘されており、こうした文化差を考慮した上で、今後さらなる検討が望まれる。

信頼行動との関連を示す意義

これまで、陰謀論信奉傾向が自己報告の一般的信頼と負の関係を示すことは繰り返し示されてきたが、こうした関連性が他者一般に対する実際の信頼行動にまで現れることは、限定的な証拠でしか示されてこなかった。これに対して本研究では、自分の意思決定によって実際に損失を被る可能性のある信頼行動も、陰謀論信奉傾向と負の相関関係にあることを示した。つまり陰謀論信奉者は、態度として他者一般を信頼しないと回答するだけでなく、実際に自分の信頼が裏切られるリスクがある状況で、信頼できるかどうかに関する情報が全くない他者一般を信頼しない傾向にあることが明らかにされた。

もちろん、陰謀論信奉と信頼行動の間の因果関係は依然として不明のままである。したがって、陰謀論を信奉することが他者を信頼しない行動へと導くのか、それとも信頼しない行動の帰結として、陰謀論を信じるようになるのかを、本研究の結果をもって結論付けることはできない。しかし、陰謀論信奉が他者一般への信頼行動とも負の関連を持つという本研究の知見は、因果関係について新たな示唆をもたらす。そうした示唆の一つは、信頼しない行動に伴った、陰謀論信奉者自身に直接的にもたらされる影響である。例えば、陰謀論信奉傾向の高い人々は、他者を信頼しないことで裏切られることはないが、それと同時に信頼が報われる経験やそれを通じて信頼を育む機会も乏しいことが予測できる。詳細な因果に関しては今後の研究を待つ必要があるものの、このように陰謀論信奉傾向の高い人々において他者一般への信頼を醸成する機会が不十分なことで、その陰謀論信奉傾向が維持されるといった負の連鎖を考えることも可能であろう。あるいは、これまでの信頼の議論(e.g., 山岸,1998)に基づけば、陰謀論信奉者は見知らぬ人を信頼して新しく人間関係を拡張するというよりは、信頼できると分かっている知り合い同士の小さな人間関係の輪に留まる傾向があるために、その少数の人々だけが信奉している陰謀論へ傾倒するといった可能性もありうる。今後、陰謀論信奉者が他者一般を行動レベルでも信頼しないことにより、いかなる社会環境に身を置くことになるのかを検討することで、信頼と陰謀論信奉の因果について新たな検討が可能になるだろう。

本研究の限界と今後の展望

最後に、本研究の限界について述べておきたい。第一に、本研究は既存のデータセットを用いたものであり、陰謀論信奉を検討するためにデザインされた研究ではないという点が挙げられる。このため、先行研究で陰謀論信奉との関連が指摘されているものの、データセットに含まれていなかった疎外感、アノミーなどの変数との関連は検討できなかった。したがって、今後これらの変数についても関連を明らかにし、日本における陰謀論信奉の在り様を包括的に検討していく必要があると言える。

第二に、本研究で用いられた8つの陰謀論は、1つを除いて日本社会に関連したものではなく、そのことが結果に影響した可能性が挙げられる。これについては、アメリカが標的になった9.11同時多発テロに関する陰謀論を、直接的な影響を受けたとは言えないEU市民の多くが強く支持している(Swami et al., 2010)ことを考慮すると、日本に関連していない陰謀論だということによって結果が大きく左右された可能性は低いかもしれない。ただし、自分と直接的に関連しない陰謀論(例えば他国の政治的指導者の暗殺など)は、脅威にさらされる集団に対する視点取得傾向が高い人ほど信奉しやすい(van Prooijen & van Dijk, 2014)ことも明らかにされている。このことから日本に関連しない陰謀論を用いたことで、視点取得の低い人たちの陰謀論信奉傾向が適切に測定できていなかった可能性も考えられる。そのため、日本社会においても普遍的な、例えばCOVID-19のような地球規模の課題や、あるいは日本史上の出来事に関する陰謀論(e.g., Fahey et al., 2020)を用いて、本研究と同様の結果が見られるかを検討する必要があるだろう。

第三に、今回用いられた陰謀論信奉尺度の妥当性は十分に検討されたものではなかったことが挙げられる。因子分析の結果から一次元構造になることは確認されたが、各陰謀論について回答するには、「ロスチャイルド家」、「フリーメーソン」(項目3)、「イルミナティ」(項目4)など、日本では一般に知られているとは言い難い固有名詞の知識や、陰謀論の舞台となった国々に関する政治的知識が前提となったと言える。つまり、本研究の陰謀論信奉尺度への回答は、陰謀論に対する信奉傾向だけではなく、そうした前提知識を持つことを測定していた可能性は否定できない。しかしこの点に関しては、陰謀論信奉者は完全に架空の陰謀論(Swami et al.,2011)でさえも信じることを考慮すると、そのような背景知識を必ずしも必要としなかったとも考えられる。もちろん、この可能性に関して本研究のみで決着をつけることはできない。これについては、本研究では二次分析という性質上、叶わなかったが、すでに開発されている一般的な陰謀論を測定する尺度(Brotherton et al., 2013; Bruder et al., 2013)を用いることが有用であろう。

以上のことを考慮して、今後の研究では、欧米の研究で明らかにされてきた変数と陰謀論信奉傾向の間の関連が日本においても同じように見られるのか、その傾向は日本に関連する陰謀論を用いても、一般的な陰謀論信奉傾向を用いても同じように見られるのか、陰謀論信奉傾向と信頼行動との関連は日本以外の諸外国でも同様に見られるのか、といった文化的な差異についてもさらに追求していくことが期待される。

脚注

1) 本研究の一部は、日本グループ・ダイナミックス学会第66回大会および日本人間行動進化学会第11回大会にて発表された。

2) 本論文は、山岸俊男先生によって第一稿が執筆され、改稿の相談を進めている最中にご逝去されたため、残りの著者らによって加筆修正を行った。

3) 現所属:淑徳大学

4) 現所属:安田女子大学

5) この実験では、オークションの競売人役の参加者が、2人目の入札者を招待するためにコストを支払うかどうかが信頼行動の指標とされた。入札者が1人の場合は、その入札者の言い値で落札されてしまうため、競売人は小さなコストを支払って2人目の入札者を招待し、入札者同士に価格競争をさせた方が利益を得られた。しかし、入札者同士が口裏を合わせて低い価格を入札すれば、競売人に不利になる利得構造になっていた。このように入札者同士が結託する可能性がある状況で、入札者同士が競売人を含めた参加者全員の利益のために行動する(=結託しない)と予測して、2人目の入札者をオークションへ招待するためにコストを払う行動が、この実験における信頼行動とされた。

6) 全9回実施された実験の実施時期と参加者数は以下の通りである。第1回目2012年5月~7月(n=563、女性=290、男性=273)、第2回目2012年10月~2013年2月(n=482、女性=231、男性=251)、第3回目2013年4月~6月(n=488、女性=244、男性=244)、第4回目2013年9月~10月(n=473、女性=240、男性=233)、第5回目2013年12月~2014年2月(n=470、女性=241、男性=228)、第6回目2014年5月~7月(n=470、女性=243、男性=227)、第7回目2014年10月~2015年1月(n=451、女性=231、男性=230)、第8回目2015年9月~12月(n=424、女性=221、男性=203)、第9回目2016年11月~2018年3月(n=290、女性=145、男性=145)。

7) 1回目の参加者数は564人だったが、人口統計学的データに矛盾があった1人はデータセットから除外されている。

8) このデータセットを利用した研究は、すでに複数公刊されている(Matsumoto et al., 2016; Nishina et al., 2018; Nishina et al., 2015; Yamagishi et al., 2015; Yamagishi Li, et al., 2017; Yamagishi et al., 2016; Yamagishi et al., 2014; Yamagishi, Matsumoto, et al., 2017)が、陰謀論信奉と一般的信頼との関連を検討しているのは本論文だけである。

9) 項目間の相関は、最も低いものは項目1と6の間の相関(r=.228, p<.0001)、最も高いものは項目2と項目5の(r=.587, p<.0001)だった。

10) 本研究でも使用された、個別の陰謀論に対する信憑性を尋ねるイベントベースの尺度(Abalakina-Paap et al., 1999; Goertzel, 1994; Leman & Cinnirella, 2013; Swami et al., 2010)は、しばしば恣意的に項目が選定されるといった問題点が指摘されている。さらに尺度に対する回答は、陰謀論の対象となった出来事に関する知識や各陰謀論に対する文化的親しみやすさなどに影響を受けることから、国際比較が困難になるとされる(Brotherton et al., 2013; Bruder et al., 2013)。しかし、イベントベースの尺度は、異なる陰謀論への信奉度を尋ねるものでありながら信頼性係数は.70以上になること(Abalakina-Paap et al., 1999; Goertzel, 1994; Leman & Cinnirella, 2013; Swami et al., 2010; Swami et al., 2017)が確認されている。さらに因子分析が行われた場合は一次元構造になること(Goertzel, 1994; Swami et al., 2010, 2017)も複数の研究で確認されており、陰謀論に対する一般的な信念を問う非イベントベース尺度との相関も高い(r=.55~.86) (Brotherton et al., 2013; Bruder et al., 2013)。

11) Berg et al. (1995)の標準的な信頼ゲームでは、両者に同じ金額の元手(例えば1,000円)が渡される。ただし、預託者が全額を受託者に預けて受託者が半額を返した場合(1,000円×3÷2=1,500円)、預託者の受け取る金額は1,500円なのに対して受託者は2,500円を受け取る。したがって、受託者が受け取った金額を返す際に、渡された金額のみに注目するか、それとも、元手も含めた最終的な金額を考慮するかによって、公平性に基づく意思決定の結果が変わってしまう可能性がある。本研究では預託金と最終獲得金額のどちらに注目するかによって意思決定の結果が変わってしまう余地を排除するために、預託者のみに元手を渡した。

12) Fischbacher et al. (2001)によるとSelten (1967)で考案された実験手法で、その後経済ゲーム実験研究で広く用いられている。なお、Brandts & Charness (2011)による研究では、信頼ゲームの預託者側の意思決定(信頼行動)は、strategy methodと、通常の実験方法(direct-response method)の間で差が認められなかったことが報告されている。一方で、信頼ゲームの受託者側の意思決定(返報行動)はstrategy methodとdirect-response methodでは反応が異なることが報告されている。本研究で信頼行動の指標としているのは、預託者側の行動であることから、実験手法がstrategy methodであることによる影響は、ほとんどないと考えられる。

13) 一般的信頼は3回測定されたが、うち1回を欠席したために欠損値がある人が、今回分析対象とした375人中7人いた。この7人についても、2回の測定値を用いて一般的信頼の変数を算出した。なお、各回で測定された一般的信頼(Yamagishi et al., 2015)は、各実験回の参加者の中で標準化されていた(第1回目:562人、第3回目:488人、第6回目:470人)が、今回研究に参加した375人の中で標準化し平均を求めた場合も、3回分すべての一般的信頼がそろっていた368人に限定して標準化し平均を求めた場合でも、本研究で報告する結果とおおむね同様の結果が得られた。

14) 分析時にはそれぞれの回答を2から減算し、「1. 信頼できると思う」、「0. 常に用心したほうがよい」とした上で、2回の測定値の平均値を用いた。

15) 2012年1月1日時点の年齢。

16) 陰謀論とデモグラフィック項目との順位相関分析を行ったところ、主観的階層、高等教育の有無を除いて有意な関係は認められなかった(表3)。ただし、分析対象変数すべてに回答していた人たちではなく、1つでも分析対象の変数に回答した451人にまで分析対象者を広げると、高等教育の有無に関しては、有意な関係が見られなくなった(rs=−.080, p=.0900)。主観的階層は、性別ごとに検討すると男性のみで有意な負の関係が見られ(男性(n=195): rs=−.186, p=.0091、女性(n=180): rs=−.021, p=.7828)、年齢、婚姻状況、持ち家の有無、高等教育、年収をコントロールしてもこの関係が認められた(男性(n=195): rs=−.178, p=.0141、女性(n=180): rs=.029, p=.6997)。

17) シャピロ・ウィルク統計量Wはそれぞれ、陰謀論信奉尺度W=.985 (p=.0007)、一般的信頼(Yamagishi et al., 2015W=.987 (p=.0024)、GSSの一般的信頼W=.786 (p<.0001)、信頼行動W=.899 (p<.0001)であった。

引用文献
 
© 2023 日本社会心理学会
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