In assessing the endorsement of conspiracy theories, researchers often employ a general approach by measuring adherence to abstract statements rather than specific, concrete conspiracies. One commonly used measure is the Conspiratorial Mentality Questionnaire (CMQ, Bruder et al., 2013). The present study aimed to develop a Japanese version of the CMQ (CMQ-J) and examine its factor structure, construct validity, and test-retest reliability. The results of this study revealed that the CMQ-J demonstrated high internal consistency and temporal stability. It also exhibited positive correlations with existing measures of conspiracy theory, as well as authoritarianism and paranoia, while showing a negative correlation with trust in institutions. These findings indicate that the CMQ-J is a reliable and valuable tool for assessing general inclinations towards conspiracy theories. However, the factor structure of the scale differed from the original version, suggesting a need for future research.
陰謀論は,2人以上の個人や集団が,特定の結果を得るために秘密裏に連携しており,かつ,その謀略が公には知られていないが公益に関わる信念を指す(Douglas & Sutton, 2023)。近年,SNSの普及と不安定な社会・政治的情勢に伴い陰謀論が人口に膾炙する事態となっており,例えば,COVID-19感染禍やロシアのウクライナ侵攻をめぐる陰謀論がSNSを通じて流布されたり,米国大統領選挙をめぐってQAnonと呼ばれる陰謀論に基づいた政治運動が連邦議会議事堂襲撃事件にまで発展したことも記憶に新しい。このことを反映して陰謀論の信奉とその影響に関する研究は増加の一途を辿っている(Douglas & Sutton, 2023)2)。
陰謀論と個人特性との関連については,認知特性から,動機づけ,パーソナリティ,精神病理学的特性まで広範な検討が行われている(レビューとしては,Douglas & Sutton, 2023; Pilch et al., 2023を参照)。加えて,陰謀論が社会に与える影響の研究も多く行われており,公衆衛生上問題のある行動(e.g., Remondi et al., 2022)や,非合法な政治活動を動機づけたり(Imhoff et al., 2021),科学への信頼喪失の結果として社会や環境に対して悪影響を与えることが指摘されている(e.g., Biddlestone et al., 2022)。このように,陰謀論の信奉とその社会的伝達,陰謀論が社会に与える影響に関する研究は,ますますその重要性を増している。
しかし同時に,陰謀論の研究は,旧来の心理学研究と同様,WEIRDと呼称される,高学歴で,工業化された社会に生きる裕福で民主的な西洋(Western, Educated, Industrialized, Rich & Democratic; Henrich et al., 2010)文化圏の参加者に大きく依存しており,そのことが克服すべき重要な研究上の限界であることが指摘されている(Douglas & Sutton, 2023)。このことから,陰謀論信念に関する知見の非一貫性の問題の解決のためにも,多様な文化圏からの参加者を含めた研究の拡充が求められている。そのために解決しなければならない問題の1つに,陰謀論信念の測定手法の確立が挙げられる。
陰謀論信念の測定陰謀論信念の測定手法は,a)具体的かつ特定の陰謀論ないしそれらの組み合わせとして信奉の程度を測る事象ベースアプローチと,b)具体的内容に言及せず一般的な陰謀論概念への賛意を測る一般論的アプローチに分けることができる(e.g., Majima & Nakamura, 2020; Swami et al., 2017)。事象ベースアプローチでは,JFK暗殺説などの政治上の話題,アポロ計画の月面着陸ねつ造説のような科学上の話題など,現実世界の出来事に関わる具体的な陰謀論への賛意の程度によって信念を測定する。例えば,COVID-19感染下で流布する陰謀論の信奉・伝達に寄与する要因の探索や,その陰謀論がワクチン忌避に与える影響の検証など,具体的かつ喫緊の社会的問題に即した研究上の目的がある場合,具体的な陰謀論への賛意を問うのは当然である。しかし,事象ベースアプローチに立つ研究でも,COVID-19陰謀論のような特定のカテゴリに限定せずに,多様な陰謀論の信奉を統合して全体的な陰謀論への傾倒,すなわち陰謀論への嵌まりやすさの個人差を測る場合もある(e.g., Swami et al., 2017)。
一方で,陰謀論への傾倒の個人差を,具体的な行為主体や特定の活動に言及せず測定する一般論的アプローチは,事象ベースに比べ地理的,文化的,時間的文脈への依存度が低いという特徴がある。研究の目的が,そもそも人が陰謀論に傾倒する理由および陰謀論者の心理・認知的な特性の解明,陰謀論への傾倒がもたらす個人的・社会的結果の検証にある場合は,トピックへの親近性や,知識状態が地理,文化,時間的要因に依存する事象ベースでは,測定に含まれるノイズが大きく尺度の汎用性に問題がある。このような目的の場合は一般論的アプローチの方が適している場合もある(Brotherton et al., 2013; Bruder et al., 2013)。このように,両アプローチは,一方が他方に優越しているわけではなく,研究の目的に応じて使い分けるべきものであり,双方の測定手法を整備することは等しく重要である。
一般論的アプローチに立つ尺度には,一般的陰謀論者信念尺度(Generic Conspiracist Beliefs Scale, GCBS; Brotherton et al., 2013; 日本語版GCBS-J; Majima & Nakamura, 2020),陰謀論的心性質問票(Conspiracy Mentality Questionnaire, CMQ; Bruder et al., 2013)があり,ともにこの領域では良く使われている(Pilch et al., 2023)。両者は,具体的内容に依存しない一般的信念を測定する点は共通するが,GCBSが,政府の不正行為,地球規模の悪意ある陰謀,地球外生命体の隠蔽,個人のウェルビーイング,情報の統制という5因子を考えるのに対し,CMQはより抽象度の高い項目を用いて,単一因子構造を仮定しているという点が異なっている。しかしながら,GCBSにおいても,下位因子は相互に高い相関を示しており,陰謀論信念は,個々の領域に分割されるというよりは,それらを総合した首尾一貫した信念ネットワークを形成するものとして捉えられる(Brotherton et al., 2013)。
Bruder et al.(2013)によって開発されたCMQは,5項目が一因子構造をなし,内的一貫性も良好な水準にある(Bruder et al., 2013; Imhoff et al., 2022)。CMQの因子構造の検討はWEIRDサンプルによるところが多いものの,トルコなど非WEIRD文化圏でも単因子構造が見られることが示されている(e.g., Bruder et al., 2013)。また,CMQは具体的な陰謀論の信奉を良く予測し,超常信奉,パラノイア,右翼的権威主義とは比較的高い正の相関を示すこと,それよりは弱いものの社会的支配志向性とも関連することが示されている。一方で,ビッグファイブ・パーソナリティのうち協調性とは弱い負の相関はあるが,それ以外のパーソナリティ特性とは関連しないことが示されている(e.g., Bruder et al., 2013; Dyrendal et al., 2021)。さらに,CMQは良好な再検査信頼性を示すことも明らかとなっている(r=.84; Bruder et al., 2013)。
CMQの利点は,少ない項目で文脈に依存しない信念を測定できる簡便さにある。一般に,測定変数が多くなりがちな相関的研究では,対象者に過大な負担をかけないという倫理上,あるいは努力の最小限化(三浦・小林,2016)による反応の歪みを避けるという実践上の理由から,測定項目は可能な限り少ない方が望ましい。陰謀論信念が,その下位項目として複数の側面を持つとしても,それらが全体的として一貫した信念体系を有しているのであれば,複数因子を仮定するGCBSよりも,より単純な構造を少数の項目で測定可能なCMQは,現代的な測定尺度に求められる要件を備えたツールであると言える。そのため,CMQを一般的な陰謀論への傾倒を測定する尺度として整備することは大きな利点があると言える。
陰謀論信念と個人特性との関連陰謀論信念尺度の構成概念妥当性に関連して,すでに述べた通り,陰謀論は,認知傾向,パーソナリティ,動機づけ,精神病理学的特性など広範囲にわたる個人特性と関連することが示されている(Douglas & Sutton, 2023; Pilch et al., 2023)。例えば,陰謀論信者は,しばしば複数の(時に矛盾する)陰謀論を同時に信じたり,疑似科学や超常現象など陰謀論以外の実証的根拠を欠く主張を信じやすい(e.g., Huete-Pérez et al., 2022; Lobato et al., 2014)が,分析的思考は信念を抑制する(Swami et al., 2014; van Prooijen, 2017)。また,陰謀論は右翼的権威主義や社会的支配志向性と同様に,一般化された政治的態度(generalized political attitude)として機能し,イデオロギー的な信念とそれに基づく行動を引き起こす(Imhoff & Bruder, 2014)ことに加え,これらの政治的態度間には正の相関があることも指摘されている(e.g., Abalakina-Paap et al., 1999; Bruder et al., 2013; Dyrendal et al., 2021)。
さらに,陰謀論者は政府・公的機関および政治家(Einstein & Glick, 2015; Šrol et al., 2021),科学者(Fasce & Picó, 2019; Lewandowsky et al., 2013)といった権威者に加えて,全般的な対人関係(Goertzel, 1994)に対する信頼感が低く,パラノイア(Bruder et al., 2013; Imhoff & Lamberty, 2018)およびダークトライアド・パーソナリティ(Cichocka et al., 2022; March & Springer, 2019)とも正の相関を示すことが知られている。一方で,一般的性格特性としてのビッグファイブとの間には,経験への開放性や協調性との相関が報告される場合はあるものの知見は一貫せず,近年のメタ分析ではビッグファイブは陰謀論とは有意な関連性はないとされている(Goreis & Voracek, 2019; Stasielowicz, 2022)。なお,神経症傾向とパラノイアの関連から,神経症傾向も陰謀論に影響するようにも思われるが,この点については,パラノイアが強力な陰謀論信念の予測因子であり,神経症傾向との関連性は,パラノイアと分散を共有することによる見せかけの相関にすぎないと考えられている(Imhoff & Lamberty, 2018)。また,例えば,開放性と陰謀論信念の相関は,ビッグファイブ尺度の信頼性が低下すると高くなる傾向にあり,性格特性と陰謀論の相関は,短縮版の性格尺度が用いられることによって生じた測定バイアスである可能性も指摘されている(Goreis & Voracek, 2019)。
本研究の目的と仮説本研究は,日本語版CMQを作成することを目的とし,その因子構造と構成概念妥当性を検討する。本研究では,まず,陰謀論は個別の内容を統合した一貫した信念体系を形成していること(Brotherton et al., 2013),CMQが比較的抽象度の高い測定項目を用いていること,さらに,非WEIRD圏でも単因子構造が確認されていること(Bruder et al., 2013)を踏まえて,以下の仮説1を検証する。
H1:日本語版CMQも単因子構造を持つ。
次に,陰謀論が,超常信奉(Bruder et al., 2013; Huete-Pérez et al., 2022; Lobato et al., 2014)などの実証的根拠を欠いた信念,右翼的権威主義や社会的支配志向性のような社会的・政治的態度(Abalakina-Paap et al., 1999; Bruder et al., 2013; Dyrendal et al., 2021),パラノイア(Bruder et al., 2013; Imhoff & Lamberty, 2018)などの精神病理学的特性と関連すること,一方でビッグファイブ・パーソナリティとは関連しない(Goreis & Voracek, 2019)こと,陰謀論者は,政府や政治家などの政治的権威者(Einstein & Glick, 2015; Šrol et al., 2021),および科学者などの認識論的権威者(Fasce & Picó, 2019; Lewandowsky et al., 2013),さらには全般的な対人関係(Goertzel, 1994)に対する信頼感が低いという知見からは,以下の構成概念妥当性に関する仮説群2を導くことができる。
H2:CMQは良好な構成概念妥当性(a–d:収束的妥当性,e:弁別的妥当性,f:予測的妥当性,g:再検査信頼性)を示す。
H2a:既存の一般的陰謀論尺度であるGCBSや,超常信奉との間に正の相関がある。
H2b:右翼的権威主義および社会的支配志向性との間に正の相関がある。
H2c:パラノイアと正の相関がある。
H2d:CMQは政治家や法制度などの国家,科学者などの専門家,その他の一般的な対人関係における信頼感との間に負の相関がある。
H2e:ビッグファイブ・パーソナリティとの間に,系統的な関連性はない。
H2f:9/11テロ攻撃黙認説のような具体的な陰謀論の信奉を予測する。
H2g:異なる二時点で測定されたCMQは正の相関を示す。
本研究は,著者の所属機関の研究倫理委員会の倫理承認を得て実施された。参加者からインフォームドコンセントを取得し,同意した者のみが参加した。また,仮説および研究プロトコルをOSFに事前登録した後に調査を実施した(後述のデータ入手先を参照)。
参加者と手続き参加者は,調査1, 2に分けて募集され,各320名(計のべ640名)をクラウドワークス経由で募集した。RのsemPowerパッケージによる検定力分析(AGFI=.90, α=.05, 1−β=.90)の結果,各調査で必要な参加者数はn=193であったが,参加資格(18歳以上の日本人),注意チェック非通過などの除外基準への抵触や不完全回答により分析から除外される可能性と,安定的な分析結果を得るという目標を考慮し,320名ずつを募集した。
調査1では,注意チェックに失敗した1名と,参加資格を満たさない2名を除く317名(男性152,女性164,その他性別1名,Mage=40.4,SDage=9.81),調査2では参加資格を満たさない2名を除く318名(男性146,女性172,Mage=40.5,SDage=9.45)が最終的な分析対象となった(電子付録ESMのAppendix A, Table S1も参照)。調査1は2021年8月上旬に,調査2は1から6週間ほどを空けた同年9月中旬に実施された。なお,謝礼支払後に入手可能なワーカーIDと報酬支払用の確認コードによって照合し,2回の調査で,ワーカーID,年齢,性別,最終学歴のすべてが一致する(ただし,調査2時点で調査1よりも1歳上の場合は一致とみなした)という条件を満たす参加者のデータをCMQの再検査信頼性の検討のために抽出した。該当する参加者は132名であった(対象者の人口統計変数の分布はTable S2)。
参加者をQualtricsに誘導した上で,参加者からインフォームドコンセントを取得した。協力に同意した参加者は,最初に日本語版CMQに回答した後で,それ以外の尺度にランダムな順序で順次回答した。最後に,人口統計変数質問と注意チェックに回答し,すべての回答が終了した時点で,ランダムに生成された確認コードを表示した。正しい確認コードを送信した参加者には,参加報酬として140円が支払われた。
材料本研究で用いられた8種類の尺度(ESM Appendix Cも参照)のうち,日本語版陰謀論的心性質問票(CMQ-J)のみ,再検査信頼性の検討のため両調査で測定された。それ以外は一方でのみ用いられ,調査1で実施されたのは,一般的陰謀論信念,右翼的権威主義,パラノイアチェックリスト,信頼感の4尺度であった。それ以外の超常信奉,社会的支配性志向,ビッグファイブ・パーソナリティ,具体的な陰謀論の信奉尺度は調査2でのみ実施された。また,両調査の最後で,年齢,性別,学歴,エスニシティ,母国語を尋ねた後,注意チェックとしてIMC課題(増田他,2019)に回答を求めた。
日本語版陰謀論的心性質問票(CMQ-J)Bruder et al.(2013)によるCMQを,原著者から翻訳の許可を得,日本語に翻訳した。訳出に際して,著者が日本語訳を作成後,専門業者による逆翻訳と日本語訳の自然さのチェックを経て,最終的な訳文を決定した。CMQ-Jは,一般的な陰謀論を述べる5項目に対し,0–100%の間で10%の間隔で区切られた選択肢から1つを選び同意の程度を表明するものであった。項目テキストはTable 1,教示を含む全文と原語版との対照表,および詳細な項目統計量はESM Appendix B, Table S3, S4にある。
Item (with labels used in Table 2) | Survey 1 n=317 | Survey 2 n=318 |
---|---|---|
1. 私は,大衆には決して知らされない,とても重大なことが世界で数多く起きていると思う。(Classified incidents) | 70.1 (20.5) | 63.8 (21.6) |
2. 私は,政治家はふつう,自分たちの意思決定の本当の動機を教えてはくれないと思う。(Hidden motives) | 73.6 (18.0) | 71.7 (18.2) |
3. 私は,政府当局が,すべての市民を厳重に監視していると思う。(Close surveillance) | 40.1 (20.7) | 36.7 (21.4) |
4. 私は,表面的には関連のない出来事が,しばしば秘密の活動の結果であると思う。(Secret activities) | 48.9 (22.3) | 45.7 (22.5) |
5. 私は,政治的な決定に強い影響力を与える秘密の組織が存在すると思う。(Secret organization) | 53.2 (25.2) | 48.8 (24.8) |
Total | 57.2 (16.1) | 53.3 (16.7) |
既存の一般的陰謀論信念の測定尺度として,日本語版一般的陰謀論者信念尺度(GCBS-J; Majima & Nakamura, 2020)を用いた。Brotherton et al.(2013)のGCBS原版は,政府による陰謀(例 政府は,自国へのテロ行為を容認,またはそれに関与し,その関与を偽装している),悪意ある地球規模の陰謀(いくつかの重大な出来事は,秘密裏に世界を操っている小集団の活動の結果である),地球外生命体の隠蔽(例 異星人からの接触の証拠は,大衆には伏せられている),個人の健康(例 ある種の病原体や病気の感染拡大は,ある組織による慎重かつ秘匿された活動の結果である),情報統制(例 現在の産業に不都合な先進技術は隠されている)の5因子構造を考えており,本研究でも,下位因子ごと,および全体得点を,項目の評定値を平均して求めた。なお,GCBS-Jは5因子それぞれ3項目ずつの計15項目に対して,1(きっと正しくない)~5(きっと正しい)の5件法で評価を求める尺度である。
改訂版超常信奉尺度超常信奉の尺度として,改訂版超常信奉尺度(Revised Paranormal Belief Scale, RPBS; Tobacyk, 2004)を使用した。RPBSは,伝統的宗教信念,超能力,魔術,迷信,心霊主義,超常生命体,予知の7下位尺度計26項目からなり,参加者は各項目に7件法(1:強く同意しない~7:強く同意する)で回答した。なお,RPBSは,PBS(Tobacyk & Milford, 1983)の一部を修正したものであるため,中島他(1992)によるPBSの日本語訳を使用した。RPBSで変更された項目は,中島他(1992, 1993)を参考に訳出を行った。
日本語版右翼的権威主義尺度日本語版右翼的権威主義尺度(Right-Wing Authoritarianism, RWA; 高野他,2021)は2因子30項目に−4~4の9件法(−4:全く同意しない~4:とても強く同意する)で回答を求める尺度である。項目の評定値に5を加えて1~9となるように変換し,因子毎に求めた評定値の平均を,それぞれ権威主義,因習主義の得点とした。なお,本研究では,RWAにある4つの練習項目は用いなかった。
社会的支配性志向尺度三船・横田(2018)による日本語版SOD(Social Dominance Orientation)尺度を用いた。7件法(1:全く同意しない~7:完全に同意する)による16項目の評定値の平均を社会的支配志向性の得点とした。
日本語版パラノイアチェックリスト被害妄想的観念の尺度として,山内他(2007)による日本語版パラノイアチェックリスト9項目を用いた。同尺度は,妄想的観念の経験頻度だけでなく,確信度,苦痛度の3側面を測定するものであるが,本研究では経験頻度のみについて5件法(1:全く考えたことがない~5:いつも考えている)で回答を求めた。
信頼感Murphy et al.(2021)の組織への信頼感(Trust in institution)尺度を元にした8項目を用意した3)。内訳は,政治政党,議会・国会,政府,警察,法制度,科学者などの専門家,隣人や地域の人々,親戚・身内であり,Murphy et al.(2021)に倣い,政党から法制度までの5項目の平均を国家に対する信頼感(1:全く信頼していない~5:完全に信頼している)として扱った。それ以外の3項目は,それぞれ評定値をそのまま得点として使用した。
日本語版Ten Item Personality Inventoryビッグファイブ・パーソナリティは,TIPI-J(小塩他,2012)によって測定した。参加者は,5因子×2の計10項目に7件法(1:全く違うと思う~7:強くそう思う)で回答し,各因子2項目の合計を,外向性,協調性,勤勉性,神経症傾向,開放性の得点とした。
具体的な陰謀論の信奉陰謀論信念目録(Belief in Conspiracy Theory Inventory, BCTI; Swami et al., 2017)のうち,「新世界秩序」「9/11テロ攻撃」「ケネディ大統領暗殺事件」「ダイアナ妃暗殺疑惑」の4項目について,9件法(1:完全に間違い~9:完全に正しい)で回答を求めた。同尺度の日本語版は,Majima & Nakamura(2020)による。
本研究における分析は,いずれも統計ソフトウェアR(ver. 4.2.0)により行われた。確認的因子分析はlavaanパッケージ(ver. 0.6-16)を使用した。
CMQ-Jの因子構造まず始めに,事前登録に従い,オリジナルのCMQで提案された単因子構造が日本語版にも適用可能かどうかについて確認的因子分析(CFA)を行った。分析に先立ち,Kaiser-Meyer-Olkinの標本妥当性の測度を求めたところ,項目全体の標本妥当性指標は調査1, 2でそれぞれMSA=0.79, 0.80であり,因子分析の実施に支障がないことが確認された。
単因子モデルによるCFAの結果はTable 2(左)に示される。項目の因子負荷量は.500以上であり,適合度指標についても,GFI, CFI, SRMRは,おおむね良好な値を示した。しかし,AGFIはやや低く,RMSEAについては良好な値とは言えなかった(>0.1)。一方で,McDonaldの信頼性係数ωはωtotal=.811, .828と良好な指標を示した。
Registered CFA | Supplemental factor analyses | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
EFA (Survey 1)a) | CFA (Survey 2) | ||||||
CMQ-J itemc) | Survey 1 | Survey 2 | F1b) | F2b) | h2 | F1b) | F2b) |
1. Classified incidents | .606 | .677 | −.026 | .865 | .722 | .871 | |
2. Hidden motives | .579 | .500 | .114 | .600 | .457 | .607 | |
3. Close surveillance | .654 | .609 | .677 | −.011 | .448 | .622 | |
4. Secret activities | .788 | .837 | .885 | −.037 | .743 | .851 | |
5. Secret organization | .754 | .845 | .605 | .178 | .531 | .843 | |
GFI (AGFI) | .933 (.799) | .941 (.824) | .985 (.945) | ||||
CFI | .902 | .931 | .988 | ||||
SRMR | .066 | .062 | .031 | ||||
RMSEA with 90%CI | .178 [.138, .222] | .162 [.122, .206] | .077 [.027, .131] | ||||
Eigenvalues | 1.69 | 1.21 | |||||
% Variance explained | 33.8 | 24.2 | |||||
Inter-factor correlation | .618 | .743 |
Notes. Supplemental factor analyses were conducted due to the poor fit of the single-factor model in the RMSEA. a) Exploratory factor analysis is conducted with maximum likelihood factoring and oblimin rotation. b) F1=Covert activities, F2=Concealment of information. c) Full texts of each item are available in Table 1 and Table S3.
本研究は事前登録段階ではCMQ-Jが単因子構造を持つと仮定していたが,予測に反して,単因子モデルが一部の適合度指標において良好とは言えない結果を示したため,CMQ-Jの因子構造を探索的に再検討した(Table 2およびESMのAppendix Dを参照)。ここでは,調査1データによる探索的因子分析を行い,そこで得られた因子構造と単因子モデルとの間で適合を比較するため,調査2データを用いて確認的因子分析を行った。
調査1データのEFAでは,平行分析は2因子,最小平均偏相関(MAP)基準は1因子を推奨した。試行的に3因子解も検討したが,全項目が第1,または第2因子に対して強い因子負荷量を示し,第3因子の負荷量が高い項目が見られなかったため,2因子解を採用した。第1因子は項目3, 4, 5に対して強い負荷量を持つ,極秘裏な秘密活動に関するものであった。第2因子は項目1, 2に対して強い負荷量を持つ,情報の隠匿に関するものであった。内容の違いもさることながら,秘密活動因子の項目3–5は,情報隠匿因子の項目1, 2に比べて項目個別の信奉得点が低いという特徴も見られた(Table 1)。
続いて単因子モデル,2因子相関モデル,2因子の上位に高次の潜在因子を仮定した高次因子モデルの3つを候補としたCFAを行った。ただし,高次因子モデルは潜在変数の共分散行列が正定値ではなくモデル識別に問題があったため,2因子相関モデルと単因子モデルを比較した。その結果,2因子相関モデルの適合度指標は,すべて単因子モデルよりも良好であった(Table 2右)。また,因子間相関はr=.743と高い値であった。
CMQ-Jの構成概念妥当性前節の通り,CMQ-Jは2因子構造を示しているものの,因子間相関が高いことに加えて,陰謀論信念はいくつかのファセットを統合した一貫した信念ネットワークとして位置づけられる(Brotherton et al., 2013)ことを考慮し,秘密活動因子(CMQ-F1),情報隠匿因子(CMQ-F2)という2つの下位因子だけではなく,CMQ-Jの総合得点(CMQ-Total)を計算し(記述統計量はTable S6参照),これら3つの得点と諸尺度との相関分析を行った(Table 3)。なお,構成概念妥当性の検証に使われた諸尺度の記述統計量はTable S5に示されている。
Survey 1 | CMQ factors | Survey 2 | CMQ factors | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Total | F1 | F2 | Total | F1 | F2 | ||
GCBS totala) | .693 | .695 | .475 | RPBS totalb) | .306 | .369 | .111 |
GM | .574 | .602 | .350 | Religion | .249 | .291 | .105 |
MG | .660 | .671 | .436 | Psi | .263 | .318 | .093 |
ET | .419 | .443 | .251 | Witchcraft | .303 | .355 | .127 |
PW | .565 | .522 | .462 | Superstition | .117 | .182 | −.027 |
CI | .602 | .583 | .449 | Extraordinary life | .216 | .234 | .124 |
RWA total | .190 | .194 | .124 | Precognition | .278 | .348 | .078 |
Authoritarianism | .195 | .207 | .114 | SOD | .058 | .106 | −.039 |
Conservatism | .017 | .008 | .028 | Extraversion | .060 | .090 | −.008 |
Paranoid | .154 | .126 | .153 | Agreeableness | −.004 | .028 | −.058 |
Trust | Conscientiousness | .065 | .067 | .042 | |||
Statec) | −.298 | −.251 | −.284 | Neuroticism | −.053 | −.026 | −.084 |
Professionals | −.120 | −.115 | −.090 | Openness | .057 | .109 | −.047 |
Neighbors | −.072 | −.059 | −.071 | BCTI total | .676 | .682 | .467 |
Relatives | −.038 | −.033 | −.034 | New world order | .595 | .633 | .358 |
9/11 attacks | .452 | .500 | .239 | ||||
JFK | .534 | .477 | .474 | ||||
Princess Diana | .552 | .543 | .405 |
Notes. Significant (p<.05) coefficients were shown in bold face. CMQ-F1=Covert activities factor, CMQ-F2=Concealment of information factor. GM=government malfeasance, MG=malevolent global conspiracy, ET=extraterrestrial cover-up, PW=personal well-being, CI=control of information. RWA=right-wing authoritarianism. RPBS=Revised paranormal belief scale. SDO=Social Doinance Orientation. BCTI=Belief in Conspiracy Theory Inventory (4 selected items only). a) n=316 due to incomplete response. b) n=317 due to incomplete response. c) Trust in state was calculated by averaging trust ratings for five items: political parties, parliament, government, police, and legal systems.
まず,CMQ-J総得点は,Table 3(左)に示される通り,既存の陰謀論尺度であるGCBS-Jの各下位尺度との間に,最も弱いものでもr=.419(ET)と中程度以上の有意な正の相関を示し,GCBS-J総得点との間にもr=.693と十分に高い相関(いずれもp<.001)が見られた。RWAとは,総得点および権威主義との間に正の相関が見られた(rs=.190, .195, ps<.001)が,因習主義との相関は見られなかった(r=.017, p=.762)。パラノイアとの間には有意な正の(r=.154, p=.006),国家への信頼とは負の相関(r=−.298, p<.001)が見られ,専門家への信頼との間にも弱いながらも負の相関が認められた(r=−.120, p=.033)。一方で,隣人,近親者への信頼との間に相関は見られなかった(rs=−.072, −.038, ps>.203)。
調査2の諸尺度との相関はTable 3(右)の通りである。まずRPBSの総得点とはr=.306(p<.001)と中程度の相関を示した。また,最も相関が弱い迷信(Superstition, r=.117, p=.038)から最も強い魔法(Witchcraft; r=.303, p<.001)まで,すべての下位尺度との間に小から中程度の相関が見られた。一方,SDO(r=.058, p=.300),およびビッグファイブ・パーソナリティ(rs<.065, ps>.249)との間に相関は見られなかった。個別の陰謀論とは,最も弱い9/11黙認説でもr=.452であり,すべての相関係数は有意であった(ps<.001)。
CMQ-Jの下位因子別に相関係数を求めた場合,秘密活動因子は総得点とほぼ同じパターンを示しているが,情報隠匿因子は陰謀論信念を測定する既存の尺度や国家への信頼とは相関するものの,秘密活動因子に比べ全体的に相関係数は小さく,さらに専門家への信頼(r=−.090, p=.109),および一部の超常信奉との間では相関は見られなかった。
CMQ-Jの再検査信頼性調査1, 2の両方に参加した132名について,2回のCMQ-J得点のPearson積率相関係数,および級内相関係数を算出したところ,r=.768, ICC=.741, p<.001, 95%CI[.611, .825]であり,再検査信頼性は良好な水準にあることが確認された。
本研究の結果,日本語版陰謀論的心性質問票(CMQ-J)は内的一貫性と因子負荷量の高さでは良好な値を示したものの,事前登録の時点で想定していた単因子モデルの適合度は,RMSEAについて良好とは言えない結果であった。そのため,因子構造を探索的に再検討したところ,秘密活動および情報隠匿因子からなる2因子相関モデルの方が良く適合するという結果が得られた。これは,仮説1の予測と反する結果であり,陰謀論信念の構造の普遍性に対する疑義を呈しているとも言える(この点についての解釈は後述する)。
CMQ-Jの総得点および下位因子の尺度得点と諸尺度の相関を見ると,まず総得点とGCBS, RPBSとの間に正の相関が見られており,H2aは支持されたと言える。RWAの権威主義および総得点との間には正の相関が見られたが,因習主義およびSDOとの間に相関関係は認められず,H2bについては部分的な支持に留まった。因習主義と相関しないのは,権威主義が権威を敬い尊重する側面,因習主義は伝統や格式を重んじる側面に関わるものであり(高野他,2021),陰謀論への傾倒は伝統の重視ではなく,権威の重視と関連しているためであるかもしれない。このことについて,先行研究では,RWAを下位因子に分けずに総得点として分析している(e.g., Imhoff & Bruder, 2014; Tonković et al., 2021)ことが多く,異なる側面間の関連性の違いが十分に検討されてこなかった可能性がある。ただし,伝統主義(traditionalism)と陰謀論は正の相関を示す研究もある(Lobato et al., 2020)。SDOとの関連が見られなかった点については,SDOは偏見や差別に関わる政治的態度を表し,陰謀論とは関連しつつも別の概念である(Imhoff & Bruder, 2014)ためであるという可能性はある。実際に,SDOと陰謀論の間では,関連性を支持する研究(Bruder et al., 2013; Dyrendal et al., 2021)と否定する研究(Imhoff & Bruder, 2014)が混在し,結果が一貫しない。RWA, SDOと陰謀論の関連性については,より多様な集団を対象にしたさらなる検討が必要であろう。
また,CMQ-Jは,パラノイアとは正の,国家および専門家に対する信頼とは負の相関を示すが,隣人や近親者に対する信頼との間に相関はなかった。ここからH2cは支持され,H2dは部分的に支持されたと言える。これらの結果は,悪意ある他者の行為を想定する点で共通する陰謀論,パラノイア両概念(Imhoff & Lamberty, 2018)の関連性や,陰謀論への信奉が政府や国際機関への信頼(Einstein & Glick, 2015; Šrol et al., 2021)や科学者などの専門家への信頼(Fasce & Picó, 2019)の低下に繋がることを示すことで,CMQ-Jの収束的妥当性について更なる証拠を示したと言える。一方,隣人や近親者への信頼とは相関しないことについては,陰謀論が権力による情報の隠蔽や秘密の活動にまつわる信念であることを考えると,おおむね了解できる結果であり,陰謀論信念は全体的な信頼感の低さというよりは特に陰謀論で語られる行為主体に対する信頼感の低さを反映している可能性がある。
ビッグファイブ・パーソナリティとの間に相関は見られず,H2eの予測,およびメタ分析(Goreis & Voracek, 2019; Stasielowicz, 2022)が示す通り,古典的なパーソナリティ特性と陰謀論には関連性がないとする知見に沿った結果であった。このため,CMQ-Jは一定の弁別的妥当性をもつと言える。さらに,CMQ-Jは,具体的な陰謀論信奉との間に正の相関が見られ,H2fで予測した通り,予測的妥当性を持つと言える。
CMQ-Jの下位因子別に見ると,秘密活動因子は総得点と同一の傾向を示しているが,情報隠匿因子は,専門家への信頼,および一部の超常信奉との間に相関はなく,また,総じて相関が弱い傾向にあった。この結果について確定的な結論を導くことは難しいが,情報隠匿因子の項目は,秘密活動因子に比べ得点が高く,権力者の情報公開に対する不信感の根強さを示している。そのため,国家への信頼とは負の関連があるが,それ以外の他者への不信や,情報隠匿の要素が比較的薄い超常現象の信奉には繋がらなかったのかもしれない。
また,H2gの予測通り,Pearson,および級内相関は共に有意であり,CMQ-Jは十分な水準の再検査信頼性を示した。本研究の結果は,CMQの原版(Bruder et al., 2013)に比べれば低いものの,日本語による心理尺度構成研究の再検査信頼性に関するメタ分析の結果(ρ=.76,小塩,2016)とはおおむね同水準にあると言える。
以上に述べた通り,CMQ-Jは,先行研究とは異なり2因子構造を持つものの,一方で,両因子は高い正の相関を示しており,陰謀論信念はいくつかのファセットを統合した一貫した信念ネットワークとして位置づけられる(Brotherton et al., 2013)ことを考慮すれば,実用上は,CMQ-J全項目を以て全般的な陰謀論信念の指標として用いることに支障はないと考えられる。したがって,CMQ-Jは,おおむね安定的に陰謀論信念を測定可能な妥当かつ信頼のおける尺度であり,一般論的アプローチに立つ汎用の尺度としての有用さが示されたと言えるだろう。特に,CMQ-Jは協力者への負担を避ける,簡便かつ有用な測定ツールとなりうるという点において大きなアドバンテージがあると言える。
一方で,本研究は,陰謀論信念に関する未解決の問題の存在も示唆している。まず指摘すべきなのは,陰謀論信念の構造の普遍性の問題であろう。この点について,CMQは,非WEIRD圏においても単因子モデルの構造不変性(configural invariance)だけではなく,弱測定不変性(weak metric invariance)も持つという指摘もあり(Bruder et al., 2013),CMQ-Jとの違いを,単純に西洋と東洋の違いに帰属させることは難しい。1つの解釈としては,Douglas & Sutton(2023)による陰謀論の定義的特徴に照らすと,CMQの項目1, 2は,情報の隠蔽に言及してはいるが,必ずしも隠された共謀という要素を含まない言明として解釈される余地があることによる可能性はある。すなわち,CMQ-Jで2つの潜在因子が抽出されたのは,陰謀論の定義的特徴をより敏感に反映した結果かもしれないということである。特に,本研究の参加者は,情報隠匿因子の項目への賛意が強く,権力者の情報公開に対する全般的な不信感の高さが窺える。そのことが,権力者以外の他者への信頼や,秘密活動の要素が薄い超常信奉との間には関連性が見られないことに繋がったのかもしれない。
CMQ-Jが情報隠匿と秘密活動という2つの因子に分かれたことに関しては,これらの項目で記述される内容に対する心理的距離を反映している可能性もある。例えば,科学に対する心理的距離が遠くなると科学懐疑論に傾く(Većkalov et al., 2022)ことや,健康に関する脅威を身近に感じる,すなわち健康問題への心理的距離が近くなると,COVID-19に関する政府の失策に関する言説への言及が増加すること(Kwon et al., 2022)が指摘されている。本研究が実施されたのは,コロナ感染禍による緊急事態宣言発出期間中であったため,そのことが政府機関に対する不信感の増大として表れた可能性がある。ただし,Kwon et al.(2022)では,健康に対する脅威の認識は結果として誤情報にまつわる信念を低下させており,健康への脅威が関連情報に対する活発なファクトチェックや,公的指導者の信用を毀損する主張への拒否につながる可能性を指摘している。そのため,対象への心理的距離と特定の信念の信奉との間に単純な線形的関係を仮定することは難しい。
残念ながら,本研究の知見からこの点についての結論を導くことはできない。陰謀論信念の構造について,その地理的,文化的,あるいは時間的な普遍性の有無や,その結果を踏まえたより妥当な測定方法を整備するために,さらなる知見の蓄積が必要であると言える。CMQ-Jは,そのための有効な測定ツールとなることが期待される。
データおよびマテリアルの入手先と事前登録本研究では,調査の実施以前に仮説およびデータ収集のプロトコルをOSFに事前登録した(https://osf.io/qnk4a/)。データ,マテリアル,分析用スクリプトもOSFから入手可能である。
1) CMQ-Jのバックトランスレーションに際して,ユレイタス社(https://www.ulatus.jp/)の助力を得た。記して感謝申し上げる。本研究はJSPS科研費JP19K03194の助成を受けた。また,本研究は,著者の所属機関における研究倫理委員会の承認を受けて実施された(承認番号:21-研倫-20)。
2) データベースによって結果は異なるが,例えば,Google Scholarにおいてconspiracy theoryを含む文献は1990~1999年の10年間では4,740件がヒットするのに対し,2018~2022年の5年間だけで15,200件がヒットする。
3) Murphy et al. (2021)との違いは,原著では専門家項目群が,科学者,医師,公衆衛生の専門家を個別に評価させたのに対して,本研究ではすべて専門家として1つにまとめた点と,隣人や地域の人々,親戚・身内項目が追加された点にある。なお,Murphy et al. (2021)では,政党,議会,政府,警察,法制度の5項目の合計を国家に対する信頼としているが,本研究では項目平均を国家への信頼の指標とした。