日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集
日本蚕糸学会第73回学術講演会
セッションID: 125
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カイコ血球の分化系譜
*中原 雄一金森 保志木内 信神村 学
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抄録

カイコの血液中には、原白血球、プラズマ細胞、顆粒細胞、小球細胞、エノシトイドの5種類の血球が存在し、それらは造血器官内の造血幹細胞や血球前駆細胞に由来すると考えられているが、その分化の機構は不明である。本研究では、血球前駆細胞を培養して終末細胞へ分化させることを試みた。酵素処理して分散させた造血器官の細胞は直径5-10 オmの原白血球および未熟なプラズマ細胞であった。体液を添加したMGM-450培地でこれらの細胞を培養すると、数日以内に細胞数が増加した。この中には顆粒細胞と小球細胞も散見されたが、ほとんどの細胞は直径約10 オmのプラズマ細胞であった。その後、直径12-20 オmの大型の細胞が顕在化した。この細胞はL-DOPAを含む生理食塩水中でメラニンを生成して茶褐色に変色したことから、エノシトイドであることが示された。一方、体液無添加の培地で造血器官細胞を培養すると、細胞数は変化せずに、顆粒を持った直径5-8 オmの小型の細胞が出現した。この細胞は顆粒細胞特異的モノクローナル抗体に反応し、顆粒細胞であることが確認された。これらの結果を基に、新たなカイコ血球の分化系譜を提唱する。

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© 2003 社団法人 日本蚕糸学会
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