日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集
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  • 福島 慶子, 澤田 博司, 普後 一, 吉田 昭広, 中越 元子
    セッションID: 101
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    モンシロチョウの翅の鱗粉内には、白や黄色のプテリジン色素が蓄積しており、色彩発現にかかわっている。翅のプテリジンを解析したところ、翅に蓄積されている総プテリジン量には有意な雌雄差は認められず、その組成比及び尿酸量が雌雄で異なっていた。さらに、これらの雌雄差は蛹期の翅発生に伴い生じることが解った。今回我々は、モンシロチョウの翅におけるプテリジン色素形成とプテリジン代謝の関係を明らかにするために、プテリジン生合成の律速酵素であるGTP-シクロヒドラーゼ__I__(GTP-CH__I__)に着目し、その酵素活性およびmRNAの発現を解析した。その結果、酵素活性の変動パターンは雌雄同じだが、活性の強さは雌雄で異なっていることが示された。また、色素発現と酵素活性及び遺伝子発現の変動パターンは同調していた。さらに、これらの変動パターンは体液中20-ハイドロキシエクダイソン(20-E)濃度の変動とも連動していた。これらのことから、モンシロチョウの翅におけるGTP-CH__I__の活性は転写レベルでの調節がなされていること、また、タテハモドキやカイコガで報告されているように、20-Eによって転写が誘導されることが示唆された。
  • 大竹 恵乃, 中越 元子, 濱野 國勝
    セッションID: 102
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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     鱗翅目昆虫の幼虫では、窒素代謝の最終産物である尿酸が表皮に多く蓄積され、体色発現のみならず生体防御の役割も担っていることが報告されている。我々は、5齢幼虫期に緑色と褐色の体色二型を示すエビガラスズメにおける尿酸蓄積機構を明らかにするために、エビガラスズメの表皮組織、脂肪体及び体液中の尿酸の蓄積量と、その存在形態について比較検討した。更に、尿酸蓄積の阻害剤と考えられているメラミンを用いて、エビガラスズメにおける尿酸蓄積の阻害効果を調べた。その結果、幼虫期の表皮の尿酸量は経過と共に増加するが、脂肪体ではワンダリング期以降から急激に増加すること、両組織における蓄積量は緑色個体よりも褐色個体の方が多いことが明らかになった。一方、メラミン投与により尿酸の蓄積量は、緑色及び褐色個体共に減少傾向を示した。また、表皮と脂肪体で検出された数種のプテリジンにおいても減少が認められるため、メラミンが尿酸と共にプテリジンの蓄積も阻害することが確認された。更に、顕微鏡観察では、尿酸が含まれていると考えられる顆粒が青色の蛍光を持ち、尿酸は表皮組織中でプテリジン色素と同一顆粒内に存在している可能性が示唆された。
  • 二橋 亮, 藤原 晴彦
    セッションID: 103
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    アゲハ(Papilio xuthus)の幼虫は4齢時までは白と黒の紋様からなり鳥のフンに擬態するが、5齢では緑色の地色に変化し胸部に眼状紋を生ずる。このような紋様の切り替えは脱皮を介して行われるため、まずエクダイソンと紋様の関係を調べた。4齢脱皮期では20E投与によって黒色部の阻害が見られたのに対し、3齢脱皮期では黒色部が淡色化する傾向が見られたものの、その影響は4齢脱皮期ほど顕著ではなかった。次にメラニン合成系に関わる2つの酵素TH, DDCをクローニングし、エクダイソンとの関係を調べたところ、20E投与によってTHは発現量が減少し、DDCは発現が阻害された。また、TH, DDCの発現パターンを定量的RT-PCRおよびin situ hybridizationで調べたところ、3齢脱皮期の将来の黒色部ではTH、4齢脱皮期の将来の黒色部ではDDCが強く発現していた。以上の結果から、4齢までの鳥のフン紋様の黒色部はTH、5齢幼虫の眼状紋などの黒色部はDDCによって制御されていることが確認された。
  • 藤原 晴彦
    セッションID: 104
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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     カイコ表皮タンパク質BmCPG1はGGYGGという特徴的な反復配列構造を含み、外表皮の構成成分として脱皮期に特異的に発現する。この構造は表皮タンパク質以外にも、卵殻タンパク質、セメントタンパク質、植物の細胞壁成分や哺乳類のケラチンなど硬いタンパク質に広く保存されている。したがって、GGYGG構造がタンパク質の硬化と関係していると予測された。二枚貝の接着タンパク質の研究において、そのチロシン残基(Y)はチロシナーゼなどによって酸化され、Di-DOPA形成によってタンパク質間を架橋するとの報告がある。そこで、GGYGG構造を含むペプチドおよびその変異体を多数作成し、チロシナーゼを作用させたところ、GGYGG構造に依存してペプチド間の架橋が観察された。従来のS-S型タンパク質結合以外に、硬いタンパク質ではY-Y結合が広く使われていることが示唆された。さらに表皮形成、卵殻形成における、タンパク質の硬化とチロシナーゼの関係について考察する。
  • 城所 久良子, 安藤 喜一
    セッションID: 105
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    卵休眠における胚発育停止の原因を卵内の酸素不足に求める説がある。その一方でウリハムシモドキ卵においては無酸素条件が休眠深度を浅くすることが判っている(Ando, 1978)。今回無酸素が休眠深度および休眠消去に及ぼす影響について詳しい調査を行った。ウリハムシモドキの前休眠期卵を無酸素(窒素)処理すると休眠を回避する卵の割合が有意に高まった。これに対し、休眠卵を無酸素処理すると休眠深度は浅くなるが休眠は覚めなかった。次に50日の7.5℃処理を、休眠消去に不十分な期間である20日目に5日間の加温処理で中断した。中断を空気中で行うと休眠が再び深くなったが、窒素中で中断処理を行うと温度が高い程休眠が浅くなった。また、7.5℃に50日間おいた卵を25℃に加温と同時に一定期間無酸素にさらすと休眠消去が促進された。無酸素によって休眠が浅くなる反応の一般性を数種の直翅目昆虫を用いて調べたところ、無酸素処理は今回試験した全ての種に休眠を浅くする効果を示した。以上の結果より、無酸素は様々な休眠発育段階で、休眠を浅くする効果を有することが示唆される。
  • 平垣 進, 柘原 岳人, 藤原 義博, 竹田 真木生
    セッションID: 106
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    中国産の大型野蚕であるサクサンは幼虫期の短日によって休眠が誘導され、蛹の状態で越冬し、休眠状態の蛹は長日処理によって覚醒する。カイコにおいて、前胸腺刺激ホルモン(PTTH)の分泌器官である脳-側心体-アラタ体複合器官は、in vitroでセロトニンの刺激によりPTTHを分泌したという報告がある。さらに当研究室のこれまでの実験より、サクサンの休眠蛹を長日条件下に置くと脳内のセロトニン含量が増加したという報告がなされている。これらのことより、サクサンのPTTH分泌、及び休眠覚醒においてPTTH産生細胞におけるセロトニンシグナル経路が深く関与しているとの仮説をたてた。さらに、キイロショウジョウバエにおいて、セロトニンレセプターのタイプ1Aと2の発現量が頭部において約1日を周期として変動しており、暗期(ZT15及び18)に、ピークを迎えたということが報告されている。そこで、サクサンの脳内におけるセロトニンレセプターの発現量の変動と、サクサンの休眠覚醒の関連性を明らかにするために、セロトニンレセプターのクローニングを行い、セロトニンシグナル経路と休眠覚醒、さらには光周性の感受機構との相関性を分子生物学的に解析した。
  • 蹄 暁南, 谷 直紀, 甲斐 英則, 磯部 稔
    セッションID: 107
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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     タイマータンパク質TIME-EA4 (EA4) とその時間よみ調節ペプチドPINとの関係に関する検討を進めるため,両者を5℃ではなく25℃で相互作用させ,EA4のATPase活性発現時間を測定した.
     EA4およびPINは,カイコC108号の産下2日後休眠卵から得た(cf. Tani et al., 2001).EA4とPINとをモル比で1:30以上の割合で混合し,カナマイシンA 100μg/ml共存下に25℃で保護した.種々の期間保護した後,セントリコン-10TMを用いてPINを分離し,PINフリーEA4のATPase活性発現までのPIN分離後からの時間を測定した.測定は,まず3時間積分法(cf. Kai et al., 1999)で発現時間帯を求め,次いでその時間帯内で30分毎に行い,詳細な時間を求めた.
     その結果,すでに報告している5℃の場合とは異なり,25℃ではEA4とPINの共存期間が長くなるにしたがってATPase活性発現時期が遅れた.しかし,10日間以上の共存期間ではもはやその遅れは見られず,いずれも約18時間後に現れるようになった.
     PINは,25℃下ではEA4の時間よみを一定限度までいわば巻き戻すように作用するものと考察した.
  • 谷 直紀, 都筑 信彦, 森上 悦子, 蹄 暁南, 甲斐 英則, 磯部 稔
    セッションID: 108
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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     試験管内でみられるEA4とPINの相互関係を生体内での現象と比較検討し,PINの作用機構から休眠時計を考察した.
     カイコC108号休眠卵を用い,まず休眠間発達期間を明らかにした.卵を産下後の種々の時期に5℃冷蔵したところ,遅く冷蔵するにしたがって休眠間発達期間は長くなったが,産下12日後以降の冷蔵ではその延長は見られなくなった.冷蔵開始直前の卵から精製したEA4のATPase活性発現までの時間も,遅い冷蔵卵のものほど長くなったが,産下12日以降ではその延長はなかった.活性発現時期は休眠間発達完了期直前に相当し,試験管内でEA4とPINとを混合した先の演者 蹄の結果と対応していた.EA4-PINは,25℃で複合体を形成したが5℃ではなく,KD値は25℃での約104nMに対して,5℃では約10nMであった.EA4の時間情報はN末領域構造中にあり,N末領域に糖鎖が付加して時間よみを調節し,PINもこの領域で結合する可能性が示された.
     PINは,EA4のN末領域の立体構造変化を夏の温度において引き起こし,休眠時計を形成することが示唆される.
  • 石塚 崇将, 小林 淳, 吉村 哲郎, 田中 良明
    セッションID: 109
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    演者らは、前胸腺刺激ホルモン(PTTH)の種特異的活性決定機構解明を目的として、egt遺伝子を欠損させたカイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)にカイコ、タバコスズメガおよびエリサンPTTHあるいはそれらのキメラ分子のcDNAを発現させ、感染カイコ幼虫における活性を指標としてPTTHの構造と活性の関係を解析してきた。今回、さらに、エリサン幼虫と培養カイコ前胸腺を用いた実験に着手し、以下の知見を得た。サクサン核多角体病ウイルス(AnpeNPV)はサクサンのみならずエリサンにも感染し増殖する。最近、AnpeNPVのA株を遺伝子解析した結果、egt遺伝子に大幅な欠損が生じ不活性になっていたので、カイコとエリサンPTTHのcDNAを導入し、エリサン5齢幼虫に感染させたところ、エリサンPTTH にのみ活性が認められた。また、バキュロウイルスで生産したカイコPTTHを精製し、5齢2〜4日目のカイコ幼虫から摘出した培養前胸腺に投与したところ、4日目の前胸腺で有意な脱皮ホルモン合成活性が検出できた。今後、これらの系を用いてPTTHの種特異活性の普遍性ならびに詳細な分子メカニズムの解明を行う。
  • 永田 昌男, 大和 知永, 青木 不学
    セッションID: 110
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    細菌が感染したと思われるカイコ幼虫において、囲心細胞や周気管腺などが茶褐色に着色する現象が見いだされた。この現象について明らかにする目的で実験を行った。まず、Bacillus thuringiensis (B.t)を5齢カイコ幼虫に注射すると、1日後にカイコは死亡したが、致死直前の幼虫に囲心細胞などの着色は見られなかった。次に、多量のB.t.の加熱死菌を注射した結果でも変化は観察されなかった。投与する菌として大腸菌Escherichia coliを用いると上記とは異なる結果となった。すなわち、加熱大腸菌の注射1日後に、囲心細胞、周気管腺、食道下体は茶褐色になっており、著しい着色がみられる場合には血液自体にメラノーシスが生じていた。また、投与5日後に観察した結果、死亡個体があり、対照区と比べ体重が減少していた。しかし、生存個体の囲心細胞などの着色は注射1日後に比べ、薄れる傾向が認められた。以上から、体腔内への細菌の侵入によって、血液のProphenoloxidase系が活性化し、体腔内にメラノーシスが生起し、生じたメラニンを取り込んで囲心細胞や周気管腺が着色するものと推測された。
  • 大和 知永, 青木 不学, 永田 昌男
    セッションID: 111
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    カイコ周気管腺細胞は囲心細胞や食道下体の細胞と共にathrocytes(nephrocytes)として位置付けられる細胞群と考えられる。数種の鱗翅目昆虫幼虫にトリパンブルー溶液を注射して、周気管腺を調べたところ、クワコでは存在していたが、エリサン、アワヨトウガ、ハスモンヨトウガ、クワノメイガ、エビガラスズメガ、モンシロチョウでは周気管腺に相当する器官は認められなかった。次に、カイコにおける同器官の発育にともなう細胞の形態変化と併せてSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によるタンパク質組成の変化を調べた。形態変化は実体顕微鏡での解剖像やパラフィン切片等で観察した。その結果、蛹化初期の周気管腺の細胞サイズは5令幼虫期のそれと比べて大きく、また幼虫期の同器官の色は白色であるのに対して黄色みを帯びるためその存在を認め易くなった。核(DNA)形態は幼虫期が扁平多角なシート状を呈するのに対し、吐糸期及び蛹期初期で観察されるのは網目状であった。また、電気泳動のバンドパターンは脂肪体や血液のものとは明らかに異なり、囲心細胞、食道下体のものと比較的似ていた。
  • 土田 耕三, Gardetto Jeniffer, 小林 悠, 天竺桂 弘子, 東 政明, 杉山 弘, Jouni Zeina, 前川 秀彰 ...
    セッションID: 112
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    中腸と絹糸腺におけるCBPの分布を調べた。 中腸は7等分割し、ウエスタン法によって調べた。CBPは中腸の前部後半部に多く存在し、中部から後部にかけて徐々に減少していた。免疫組織化学法で調べたところ、円筒細胞の細胞質が陽性を示し、刷子縁が強く反応した。絹糸腺は7分割し、ウエスタン法で調べた。CBPは中部絹糸腺の中部と後部に存在していた。免疫組織化学法で調べたところ、中部絹糸腺の腺細胞基底膜に強い陽性反応が見られた。腺腔は陽性にならなかった。後部絹糸腺はCBPに対する免疫反応が見られなかった。中腸および絹糸腺におけるCBPが、YおよびYや、I およびIの遺伝子型に依存しているかどうかを、4種類の黄血や白血系統YI, Y+IYI およびYI を用いて免疫組織化学法で検出した。Y 遺伝子をもつ系統が陽性を示し、Y 遺伝子をもつ系統は陰性であった。
  • 北川 紀雄, 今井 邦雄, 塩見 邦博, 新美 輝幸, 山下 興亜, 柳沼 利信
    セッションID: 113
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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     これまでにサンドウィッチ酵素免疫測定法(Sandwich ELISA法)を用いて食道下神経節(SG)中の休眠ホルモン(DH)蓄積量の発育変動を調査し、休眠と非休眠タイプで差異が認められるのは蛹中期以後であることが判明した。この時期に休眠タイプでは血液中へのDHの放出が盛んになると考えられ、血液中DH量を測定することが重要な課題となった。血液中にはELISA反応を阻害する物質が存在する可能性が考えられたため、これら阻害物質を取り除く有効な方法として逆相カラム等を用いた分画、またはエタノールおよびクロロホルム・ジエチルエーテルによる分画を行い、Sandwich ELISA法によりDH量を測定した。その結果、休眠卵産生系統の錦秋×鐘和の蛹6日目の血液では、何れの方法でもSG摘出個体に対して無処理個体の血液中におよそ5から10倍近いDH量が検出された。つまり上記の処理は血液中に存在する阻害物質を除去するのに有効であると考えられた。一方、完成卵中にDH分子が存在する可能性を確認するため、上記の逆相カラム等を用いた抽出によるDH定量法を検討している。
  • 市川 敏夫
    セッションID: 114
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    カイコガの卵休眠を誘導する休眠ホルモン(DH)はフェロモン生合成活性化神経ペプチド(PBAN)など他の4種のペプチドと同じ遺伝子上にコードされている。このDH/PBAN遺伝子を発現する細胞は食道下神経節に3群あり、実験形態学的研究では後方に位置する1対のP細胞群がDH活性を担い、前方と中央に位置する5対のAM細胞群がPBAN活性を担っているとされている。 本研究では、休眠卵産生予定蛹(D蛹)および非休眠卵産生予定蛹(ND蛹)を用いて、これら3群の神経分泌細胞の電気的活動を蛹期間中連続記録し、活動パターンを比較検討した。3群の細胞群のうち、P細胞群でのみD蛹とND蛹で有意な差があり、D蛹では全蛹期間に亘って中頻度の発火活動が観察されたが、ND蛹では蛹の後期または終期にのみ高頻度の発火活動が観察された。AM細胞群はD蛹、ND蛹とも全蛹期間中、中頻度の発火活動が観察され、有意差はなかった。 以上の実験結果は実験形態学的研究結果を支持すると共に、AM細胞群とP細胞群は異なる種類あるいは組合せの神経ペプチドを分泌していることを示唆している。
  • 末信 晶子, 市川 敏夫
    セッションID: 115
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    カイコガの休眠ホルモン(DH)はメス蛹の食道下神経節にある神経分泌細胞から血中に放出され、発達中の卵に作用して休眠を誘導するホルモンであるが、オス蛹でも相同な細胞は存在し、細胞内にはDHがたくさん存在する(オスの頭部がDHの単離、精製の原材料に用いられた)。しかし、オスにおけるこれら神経分泌細胞の分泌活動の動態およびその分泌物の機能はほとんど不明で興味ある課題である。 本研究では、メスでDH活性を担っているP細胞と相同なオスP細胞の電気的活動を調べた。メス蛹と同様、休眠卵産生予定蛹と同じ環境で育ったオスD蛹では蛹の全期間に発火活動が観察されたが、非休眠卵産生予定蛹と同じ環境で生育したオスND蛹では後期に発火活動が観察された。オスP細胞がDH活性を持つ物質を放出するか調べるために、オスD蛹と食道下神経節摘出メス蛹とのパラビオシスを行い、卵の休眠性を検定したところ、卵は休眠卵であった。以上の結果はオスP細胞もその電気的活動に伴いDHを血中に放出していることを示唆する。オス蛹におけるDHの機能の一端として、山中ら(2000)は翅原基に作用し、秋型紋様の形成に関与していることを示唆した。
  • 阿部 志津子, 楊 平, 鈴木 幸一
    セッションID: 116
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     天蚕の前幼虫態休眠は、抑制因子(RF)と成熟因子(MF)によって制御されていると考えられており(Suzuki et al., 1990)、RFについては単離同定されアミノ酸配列構造が明らかになっている。また、RFがラット肝ガン細胞の増殖を抑制し、細胞周期のG0/G1期で休止させること(Yang et al., 投稿準備中)や、さらには、脂肪酸を結合させたRFが非常に高い確率でカイコ卵を休眠化(Abe et al., 未発表)させるなど、新たな機能を有することを確認してきた。しかし、生体内におけるRFの作用機構については、分子レベルの詳細な解明に至っていない。そこで本研究では、RFに結合するタンパク質に着目し、この単離を試みた。 まず、5個のアミノ酸より成るRFを合成し、これをカップリングしたアフィニティ樹脂を用いてアフィニティ-クロマトグラフィ-を行うことにより、RFに結合するタンパク質を調べた。その結果、天蚕休眠前幼虫の全体磨砕物より得られる抽出物中に、およそ20KDaのRF結合性タンパク質を確認することができた。現在、休眠期と覚醒期におけるこのタンパク質の変動や構造について解析中である。
  • 齋藤 直之, 坂本 伸子, 清水 崇之, 鈴木 幸一
    セッションID: 117
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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     天蚕は卵内で幼虫体を形成した後,前幼虫態で休眠越冬する。この休眠は長期低温処理や、イミダゾール系化合物KK-42により打破される(SUZUKI et al., 1989,1994)。しかし,休眠前幼虫が低温やKK-42のシグナルをどのように受容・伝達するかは不明である。KK-42アフィニティークロマトグラフィーにより、休眠前幼虫全体の可溶性画分から45KDaKK-42結合タンパク質が同定された(SHIMIZU et al., 2002)。そこで、このタンパク質抗体を天蚕休眠前幼虫の腸内に注入後、KK-42を塗布し、休眠打破機構への影響を検討した。その結果、このタンパク質の抗体によってKK-42→→→休眠打破の経路は阻止されることなく、ほとんどの休眠前幼虫は覚醒した。一方、45KDaKK-42結合タンパク質抗体によるWestern blottingによって、中枢神経系(CNS)に約90KDaのシグナルが検出された。従って、この90KDaKK-42関連タンパク質の内部配列の解析を試みた。
  • 楊 平, 安 嬰, 田中 弘正, 澤 佳子, 阿部 志津子, 鈴木 幸一
    セッションID: 118
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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     天蚕の前幼虫態休眠は,抑制因子(RF)と成熟因子(MF)の二つによる液体系を介した制御機構という従来にない新しい休眠制御モデルが提案されている(Suzuki et al., 1990)。これまで休眠中の前幼虫から5つのアミノ酸から構成される生理活性ペプチドが決定された。このペプチドが生物界において相同性を示すペプチドは存在せず,新規生理活性ペンタペプチドであるこが明らかになった。しかし,RFのようなアミノ酸の少ないオリゴペプチドの遺伝子解析には,現在確立した方法がなく,このようなペプチドの遺伝子が解析された例は極めて少ない。また,抗体作製も困難な状況である。 本研究では,より配列の特異性を向上させるために,RFの一次構造の前後に,プレプロペプチド切断部位になることが多い塩基性アミノ酸対を付加した。この付加した塩基性アミノ酸をRFプレプロペプチドの一部と予想し,これをもとにプライマーを考案した。休眠前幼虫全体から作製したcDNAライブラリーを鋳型とし,RACE法によりPCR反応を行なった。その結果,0.6kbp付近に特異的なバンドが検出された。現在はこのPCR産物の解析を進めている。
  • 須山 英悟, 松永 朋子, 塩見 邦博, 神村 学, 藤原 晴彦
    セッションID: 120
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    鱗翅目昆虫では、翅周縁部にあるBL(bordering lacuna)と呼ばれる構造の外側が蛹の時期に切り取られることで、複雑な形の翅が形成される。このとき、エクダイソンの刺激によってBLの内側の細胞は増殖し、外側は細胞死を起こすことが知られている。この領域特異的なエクダイソン応答の機構を知るため、エクダイソン受容体(EcR)の2つのisoformについてwhole-mount in situ hybridizationを行なったところ、EcR-AはBLの外側のみ、EcR-B1は内側のみで発現していることがわかった。EcR-isoformの転写制御機構を明らかにするため、それぞれの転写開始点から上流1.7-2.0kbの配列について培養細胞BmNを用いたルシフェラーゼアッセイを行い、基本転写活性に必要な領域と、EcR-Aのエクダイソン応答配列(EcRE)を同定した。さらにEcR-isoformの上流配列とEGFP遺伝子を組み込んだバキュロウィルスAcNPVを、培養中の翅および蛹(個体)に感染させたところ、領域特異的なEcR-isoformの発現を再現することに成功したので報告する。
  • 田中  良明, 行弘 文子
    セッションID: 121
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    カイコ4齢幼虫に20-ハイドロキシエクダイソン(20E)を添食させて脱皮誘導した早熟5齢幼虫の中腸に、エクダイソン(E)を投与した場合に上皮細胞の更新、特に新生細胞の増殖・分化が誘導される。こうしたEの特異的な作用発現に関与する信号伝達系を明らかにするため、cAMPやcGMP、Ca2+、DAGなど細胞内セカンドメッセンジャーのアナログやProtein kinaseのactivator等を中腸に投与し、Eと同じ形態変化が誘導されるか検討した。その結果、cAMPアナログとForskolinを投与した場合にのみ新生細胞の分化が誘導されたが、円筒細胞や盃状細胞の細胞死はEを投与した場合とは異なり誘導されなかった。次にアデニル酸シクラーゼやProtein kinase Aの阻害剤を培地に加えて中腸をEまたは20Eと培養したところ、20Eによる細胞死はこれらの阻害剤に影響されなかったが、Eによる新生細胞の増殖・分化は阻害剤により完全に阻止された。以上の結果から、Eによる新生細胞の増殖・分化の誘導にはcAMPを細胞内セカンドメッセンジャーとする信号伝達経路が関与することが推測された。
  • 長岡 純治, 奥村 真由子
    セッションID: 122
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    カイコの絹糸腺は吐糸終了に伴い,崩壊・消失する.この時期におけるタンパク質を二次元電気泳動法により分離し,調査したところ5齢6日(吐糸開始2日前)では顕著に数種のスポットの消失が認められ,さらに,10日(吐糸2日目)以降,新たなスポットの出現とそれに伴う全スポット数の急激な増加が見出された.この変化の一部は,同時に急激に発現してくるカテプシンL様システインプロテアーゼ(CP)が関与していた.
    これらのタンパク質,遺伝子の変化とホルモンの関係を明らかにする目的で,吐糸1,3日目の後部絹糸腺を0.5 mg/mlの濃度で20-Hydroxyecdysoneを添加したGrace培地中で培養した.その結果,5齢10日以降に認められた急激な変化が一部再現されたものの,CP遺伝子といくつかのタンパク質についてはまったく変化が見られなかった.このことから,蛹変態期の変化はエクダイソンの直接の影響によって生じている変化と間接的もしくはそれ以外の影響によるものから成り立っているものと考えられる.
  • 東 政明
    セッションID: 123
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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     絹糸腺の腺腔の液状絹では,可逆的なゲルーゾル転移が起こり,in vitro の実験によるとフィブロイン溶液のゲル化は pH 依存性を示す。5齢幼虫へ pH 指示薬(phenol red)を注射して,液状絹の in situ における pH 推定を試みた。 カイコおよびエリサン5齢幼虫へ,5mM Mops-Tris(pH 7)に溶かした5mM phenol red溶液を注射した後,3-4時間経過して絹糸腺を解剖摘出し,液状絹の呈色の程度を検定した。カイコでは,中部絹糸腺(MSG)が肥大してくる5齢4日齢以降,phenol redによる呈色が腺腔内に認められ,MSG中区を中心に黄色から橙色を示し,pH 5.5 以下であると推定された。MSG後区は橙色から桃色を呈し,pH6-7の範囲であることを示唆した。吐糸期になるとMSG中区では次第に中性化することがわかった。後部絹糸腺は盛食期でも吐糸期でも桃色から赤色を示し,液状絹はpH7-8の範囲にあると考えられた。エリサンでは盛食期の呈色は明瞭ではなかったが,吐糸期になるとカイコと同様の傾向を示した。すなわち,液状絹は吐糸期になると中性化し,ゾル化(流動化)するいう考えを in situ での実験から支持した。 酸性化に機能している原形質膜のプロトンポンプ(V-ATPase)の分布との対応についても報告し,絹糸腺でのpH調節の細胞生理について考察する。
  • 阪下 浩介, 日下部 宜宏, 青木 智佐, 河口 豊, 古賀 克己
    セッションID: 124
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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     二本鎖RNAは真核生物の細胞内において様々な生物的機構による応答を誘導する。真核生物において広く保存されている現象であるRNA interference (RNAi) では、細胞内に導入された二本鎖 (ds) RNAは相同な配列を持つ遺伝子の発現を抑制する。一方、哺乳類細胞では二本鎖RNAはPKR経路を活性化し、タンパク質の翻訳開始阻害による抗ウイルス及び抗増殖効果を誘導することが知られている。このことより哺乳類細胞においてPKR経路はRNAiに対して阻害的に働くと考えられている。PKR inhibitor (PKRI) は、PKR経路の主要な因子であるPKR (dsRNA-dependent protein kinase) の活性化を阻害する因子である。PKRIのホモログはショウジョウバエ、線虫など哺乳類以外の生物においても見い出されるが、その機能については明らかにされていない。 今回我々は、カイコPKRIのRNAi効果への関与を培養細胞を用いて検討した。培養細胞への二本鎖RNA導入によるPKRIのノックダウンを試みたが、レポーター遺伝子のRNAiによる発現抑制に対する影響はみられなかった。現在、昆虫細胞における発現ベクター及びヘアピン型RNA発現ベクターを構築し、PKRIの機能のRNAi効果への影響を解析している。
  • 中原 雄一, 金森 保志, 木内 信, 神村 学
    セッションID: 125
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    カイコの血液中には、原白血球、プラズマ細胞、顆粒細胞、小球細胞、エノシトイドの5種類の血球が存在し、それらは造血器官内の造血幹細胞や血球前駆細胞に由来すると考えられているが、その分化の機構は不明である。本研究では、血球前駆細胞を培養して終末細胞へ分化させることを試みた。酵素処理して分散させた造血器官の細胞は直径5-10 オmの原白血球および未熟なプラズマ細胞であった。体液を添加したMGM-450培地でこれらの細胞を培養すると、数日以内に細胞数が増加した。この中には顆粒細胞と小球細胞も散見されたが、ほとんどの細胞は直径約10 オmのプラズマ細胞であった。その後、直径12-20 オmの大型の細胞が顕在化した。この細胞はL-DOPAを含む生理食塩水中でメラニンを生成して茶褐色に変色したことから、エノシトイドであることが示された。一方、体液無添加の培地で造血器官細胞を培養すると、細胞数は変化せずに、顆粒を持った直径5-8 オmの小型の細胞が出現した。この細胞は顆粒細胞特異的モノクローナル抗体に反応し、顆粒細胞であることが確認された。これらの結果を基に、新たなカイコ血球の分化系譜を提唱する。
  • 寺本 時靖, 田中 利治
    セッションID: 126
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    幼虫内部寄生蜂カリヤコマユバチCotesia kariyaiはアワヨトウ幼虫をホスト昆虫とし体内で生育する。メス蜂の卵巣で作られるポリドナウイルス(PDV)と毒液によって卵や幼虫に対するホスト昆虫の生体防御反応を回避していることが分かっている。今回はPDVと毒液がホスト昆虫の血球に及ぼす影響を、ホスト昆虫の血球の数と核相の変化の面から報告する。CV(PDV+毒液)を注入すると1時間で血球濃度はコントロールに比べて約2/3まで減少し、時間が経つにつれだんだんと減少していく。しかし毒液だけを注入すると1時間ではCVと同じ作用を示したが、12時間でコントロールと同じ濃度まで戻った。血球の核相はCVを注入したホストでは8時間で4nと8nのピークが消えた。毒液のみを注入したホストと生理食塩水を注入したホストでは4nと8nのピークが維持されていた。血球でPDV由来のRNaseT2が存在し、その発現量が6?12時間にピークがあり血球の減少や核相の変化に関係あるかもしれない。以上の結果より毒液の作用で血球数が減少し、PDVの作用により血球の増加を防ぐことが示唆された。
  • 凌 爾軍, 深本 花菜, 白井 孝治, 金勝 廉介, 木口 憲爾, 小林 泰彦, 屠 振力, 舟山 知夫, 渡辺 宏
    セッションID: 127
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     家蚕の4・5齢幼虫の造血器官に重イオンビームを局部的に高線量照射しても、その後の発育過程で再生することがこれまでの実験で明らかになっている。そこで演者らは、重イオン照射造血器官の再生には、体液中を循環している血球が関与しているのではないかと考え、器官培養系を用いて再生機構の一端を追究した。家蚕幼虫の体液を 10 __%__加えた Grace の培養液で造血器官(5齢 day 0)を培養すると器官外に血球を多数遊離するが、1Gy 以上の重イオン照射器官を培養した場合はほとんど遊離しなかった。100Gy 照射後 6 日間培養した造血器官を Hoechst 及び TUNEL 法で染色すると、照射造血器官内に多数のアポトーシス小体様の小球が観察され、細胞の多くは死んでいるものと判断された。一方、重イオンを局部照射後 6 日間発育させた幼虫から造血器官を取り出して同様の染色を施したところ、造血器官内の細胞の形態はほぼ正常であることが分かった。 再生過程の器官内には貪食している顆粒細胞等が観察されることから、再生には、重イオンによって損傷を受けた細胞が器官内に進入した循環血球によって貪食・排除される過程が重要と考えられた。
  • 白井 孝治, 芦田 正明, 落合 正則, 金勝 廉介, 木口 憲爾
    セッションID: 128
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    演者らはカイコとエビガラスズメを用い幼虫斑紋形成の機構について研究している。両昆虫の斑紋は主にクチクラ中にメラニンが形成されることによる。この制御には幼若ホルモンが関与するが、その作用は2つの昆虫で全く異なる。今回はメラニン色素形成機構を解明する第一歩として、斑紋のメラニン色素を形成する顆粒フェノール酸化酵素 (gPO)を精製し性質を明らかにすることを試みた。gPOの精製にはメラニン色素を多く形成するカイコの突然変異系統である黒縞(pS)の幼虫を用いた。4眠幼虫を解剖し、新しく形成されつつある新クチクラを採取し、出発材料とした。まずgPOの抽出方法を検討したところ、不活性な状態で抽出が可能となった。このクチクラ抽出液から3つのカラムクロマトグラフィーを行い、gPOをほぼ単一に精製できた。この標品をSDS-PAGEで分析すると、分子量約79,000の位置にバンドが検出された。また、N末端アミノ酸配列を調べた結果、体液中のフェノール酸化酵素前駆体とは異なることが明らかになり、gPOが新規のフェノール酸化酵素であることが示唆された。
  • 深本 花菜, 白井 孝治, 金勝 廉介, 木口 憲爾
    セッションID: 129
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     幼虫体腔内に他個体から切り出した皮膚片を移植すると、移植皮膚片は真皮細胞の切断部分が癒着しシストを形成する。演者らはこのシスト形成過程と皮膚に傷をつけた時の治癒過程を比較・検討し、真皮細胞の損傷修復と血球との関係を追究中である。シスト形成は 1). 皮膚片の切断面付近に血球が集合、2). 集合した血球が扁平化して血球塊を形成、3). 血球塊中に真皮細胞が伸張し断絶部をふさぐ、4). 真皮細胞からクチクラが分泌される、の過程で進行する。今回、さらに詳細に検討するため、移植皮膚片の細胞分裂を調べた。その結果、まず移植 8 時間後から、集合した血球が分裂したが、その後休止した。移植後 12 時間から 20 時間には皮膚片の真皮細胞層が全体にわたって分裂した。この分裂も移植 28 時間後には休止した。次に刺傷をつけた皮膚の周辺を調査をした結果、受傷 12 時間から 16 時間後に傷の周囲数百 μm の真皮細胞が一斉に分裂することが明らかになった。つまり、シスト形成過程で見られたように傷周辺の細胞が一斉に分裂した後成長することが推察された。現在培養実験を行い、創傷部分の閉塞に血球がどのように関与しているかを調べている。
  • 田端 真由子, 飯野 熙彦, 滝川 新一郎, 澤田 博司, 間瀬 啓介, 山本 俊雄, 原 明
    セッションID: 130
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    BH4生合成系:カイコcarbonyl reductaseとヒトaldo-keto reductase family memberとの比較検討田端真由子・飯野熙彦(日大・文理・生物)、滝川新一郎・澤田博司(北里大・基礎科学センター・生物)、間瀬啓介・山本俊雄(生物研・松本)、原明(岐阜薬科大・生化学)テトラヒドロビオプテリン(BH4)は、神系伝達物質であるモノアミン合成やセカンドメッセンジャーとして重要な機能を持つNO合成の際に補酵素として働く重要な生理活性物質である。従来から、BH4合成においては,セピアプテリン還元酵素(SPR)が必須であると考えられてきた。しかし、最近我々によりカイコ脂肪体中から、SPRの代わりにBH4を合成することが出来る新たなカルボニル還元酵素(CR)が発見された。この事実はヒトの遺伝病であるBH4欠損症に対して新たな展開をもたらした。 今回、我々はカイコCRと同様の機能を持つ還元酵素をヒトaldo-keto reductase(AKR) family memberに登録されている酵素の中から検索した。その結果、カイコCRと類似する機能を持った、いくつかのヒトAKRの存在が明らかになった。
  • 定金 惠子, 島田 秀弥, 黄 俊逸, 古澤 壽治, 河野 義明, 亀田 幸彦
    セッションID: 131
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     蚕の前部絹糸腺では吐糸開始よりトレラーゼ活性が急激に上昇する。これまでに、本酵素は分子量が83kDの単量体酵素であることが判明しているが、その生理的役割については明らかではない。そこでこの点を明らかにするため、トレハラーゼ阻害剤であるバリドキシルアミンA(VAA)の絹糸腺トレハラーゼ活性に及ぼす影響について検討した。まず、VAAの影響をin vitroで検討したところ、0.1μg/200μlで約90%の活性が阻害された。次に、吐糸開始3日前にVAA(0.1-10μg/頭)を経皮投与し、その後の絹糸腺のトレハラーゼ活性を日毎に測定した。その結果、トレハラーゼ活性はほとんど阻害されなかったが、吐糸開始後の吐糸量はVAAの投与量の増加に伴って減少し、中部絹糸腺に液状絹が貯留した。一方、吐糸直前にVAA(0.5-10μg/頭)を投与したところ、投与1日後ではトレハラーゼ活性が阻害され、吐糸量も対照区に比べて少なかった。以上の結果から、前部絹糸腺でのトレハラーゼは吐糸に関与しているとともに、VAAはトレハラーゼ活性阻害のほかに絹蛋白質の絹糸腺での貯留といった多面的な作用を引き起こすことが分かった。
  • 岩田 健一, 藤原 義博, 竹田 真木生
    セッションID: 132
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     卵休眠時に胚が発育停止する原因として、胚自身が発育停止する機構を有しているとする説と、卵黄やしょう膜、卵殻等の胚以外の卵構成要素に原因を求める説がある。胚培養はこの問題に迫る有力な方法であると考え、Grace培地を用いて実験を行い、突起形成を発育の指標として以下の結果を得た。1.前休眠期から培養を開始した胚は30℃で突起形成までに2日間を要したのに対し、産卵後15日以上経過した休眠卵から取り出した胚は4日以上を要した。2.除卵殻卵と休眠卵から取り出した胚を併置培養すると胚の発育が促進された。3.20-ハイドロキシエクダイソンを培地に添加すると濃度依存的に発育が促進された。しかし、100nMのKK-42を添加しても胚の発育は抑制されなかった。4.休眠時特異的に蓄積されるアラニン(50mM)、及びソルビトール(200mM)を前休眠胚培養時に添加しても発育は阻害されなかった。5.休眠ホルモンは培養胚、及び除卵殻卵に対して効果を示さなかった。以上の結果をもとに卵休眠の制御機構について考察したい。
  • 門  宏明, 日下部 宜宏, 青木 智佐, 李  在萬 , 河口 豊, 古賀 克己
    セッションID: 133
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    DNA二重鎖切断(DSB)は、電離放射線・紫外線などによる外的要因によって引き起こされるだけでなく、細胞内代謝に伴って発生する活性酸素などの内在的要因によるDNA上の恒常的な損傷も、DNA複製を阻害しDSBを引き起こす。しかし、生物はゲノムを安定に保持するための多様なDNA修復機構を備えている。本来、DSBは染色体欠失をもたらす致命的な損傷であるが、真核生物では相同組換え(HR)や非相同組換え(NHEJ)によって修復が行われている。昆虫細胞では、どちらの系が多用されているか不明であり、哺乳類・酵母などの研究により、single strand annealing(SSA)やbreak-induced replication(BIR) など他の修復経路も報告されている。そこで、本研究では、昆虫細胞におけるHR分子機構の解明を目的として、その解析を試みた。 まず、細胞内でHRが起きた場合にのみルシフェラーゼ活性が現れるプラスミド(pLuc5'3' DR)を構築し、さらに、DSB修復経路の一つであるSSAが起こらないプラスミド(pLuc5'3' IR)を作製した。これらのプラスミドをカイコ培養細胞に導入し、48時間後に細胞を回収し、ルシフェラーゼ活性を測定した。その結果、染色体外の二重鎖切断修復にはSSAの経路が多用されているが、HRの経路でも修復が行われていた。現在、染色体内でのHRの解析を行っている。
  • 後藤 信太郎, Loeb Marcia, 竹田 真木生
    セッションID: 134
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    一般に、鱗翅目昆虫中腸では、脱皮時の体サイズの増加に伴い、その器官サイズおよび細胞数が増加することが知られている。しかし、中腸細胞分化促進因子、MDF1(Loeb et al., 1999)に関する報告があるものの、中腸細胞の増殖因子については、ほとんど知られていない。鱗翅目昆虫の幼虫中腸で、インスリン様の免疫化学反応が認められており、インスリン様ペプチドは、細胞増殖因子としても知られていることから、昆虫インスリン様ペプチドであるボンビキシンが、鱗翅目昆虫中腸細胞にたいして、細胞増殖因子として働くのではないかと考えた。今回、ヨトウガの幼虫中腸培養細胞を用いることで、インスリン様ペプチドであるボンビキシンの作用を細胞数計測により調べた。この結果、10-14Mから10-10Mという低濃度で、細胞数を増加させることが明らかになった。また、ボンビキシンによる細胞数の増加率は少ないが、インスリン、IGFも細胞数を増加させることが分かった。
  • 張 平波, 山本 幸治, 伴野 豊, 藤井 博
    セッションID: 135
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    Many proteins including 30 kDa protein, storage protein, chymotrypsin inhibitor and so on had been shown that they were synthesized in the larva stages of fat body of silkworm, secreted into hemolymph, and then transferred between different organs and cells with the physiological development. Protein profiles of fat body in the developing silkworm larvae were analyzed by means of two-dimensional gel electrophoresis (2-DE) and mass spectrometry (MS). The analysis of fat body gave rise to a protein map comprising approximately 1000 spots detectable by silver staining following high 2-DE with a pH range of 3-10 and a mass range 12-100 kDa. To obtain landmarks for fat body, 142 spots were identified by peptide mass fingerprinting using MALDI-TOF-MS. Spot matching, alignment and quantitation was performed with PDQuest software. Comparison of temporal profiles of fat body protein in the developing silkworm larvae revealed significant changes in the expression of proteins during development.
  • 光増 可奈子, 新美 輝幸, 山下 興亜, 柳沼 利信
    セッションID: 136
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     カイコのトレハラーゼには可溶型、及び膜結合型の存在が知られている。卵巣、及び中腸より単離されたcDNAより推定されるアミノ酸配列から、コードされるトレハラーゼは可溶型であると考えられる。又、一般的に膜結合型はアンカーを介するか、膜貫入により結合している可能性が考えられてきた。既知のカイコトレハラーゼ遺伝子(trehalase 1)解析の過程で、これまでとは異なる塩基配列を持ち、ヒトトレハラーゼのアミノ酸配列により相同性の高いcDNA断片配列が見い出された。そこで、今回、新規のトレハラーゼcDNA(trehalase 2)の単離を試みた。現在、3' 非翻訳領域を含む1675bpの塩基配列を決定しており、5' RACEによる全長の塩基配列の決定を進めている。推定される513残基のアミノ酸配列中には、コンセンサス配列であるtrehalase signature 1, 2、及び相同性の高いグリシンリッチな領域が見られた。又、トレハラーゼ1とは異なり、トレハラーゼ2のアミノ酸配列のC末端側には、疎水性の高い、膜貫通領域が存在することから、このcDNAは膜結合型トレハラーゼをコードする可能性が示唆された。
  • 前田 拓志, 日下部 宜宏, 中島 信彦, 渋谷 典広, 河口 豊, 古賀 克己
    セッションID: 137
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     細胞に目的遺伝子を導入した際の確認に、レポーター遺伝子を共発現させる方法がとられることがある。哺乳類細胞では、encephalomyocarditis virus由来の非メチオニン性リボソーム導入部位を用いることにより、1種類のmRNAから2箇所のORFを翻訳可能となっており、汎用されている。しかし、このエレメントは昆虫細胞では効果が非常に弱く、実際の使用には適さない。 そこで、昆虫RNAウイルスであるPlautia stali intestine virusに存在する同様のエレメントに注目し、これを応用したバイシストロン性ベクターを構築し検討を試みた。GFP強制発現プラスミドで、GFPの終止コドンの下流に本エレメントとhygromycin耐性遺伝子を直列に挿入し、カイコ培養細胞株BmNに導入した。これをhygromycin存在下で培養すると、約50日後、高頻度でGFPを発現する細胞群が得られた。 この細胞群でGFPは、下流の遺伝子と融合せず発現していた。また、単離した3クローン中2個は、薬剤非存在下でもGFPの発現を維持していた。このことからクローン選択の際にも本ベクターは有効であると考えられる。 現在、選択マーカーを別薬剤に改変したベクターを構築しており、その結果についても報告したい。
  • 酒井 雅人, 鈴木 幸一
    セッションID: 138
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     Bombyrinは中枢神経系に特異的に局在し,アミノ酸配列からlipocalin familyに属するタンパク質(Sakai et al., 2001)と考えられるが,Bombyrinの機能を解析する上で関連情報は不十分である. そこで本研究ではBombyrinのゲノム構成および機能性について検討した.ゲノムサザンブロット解析をおこなったところ,Bombyrin遺伝子はハプロイドゲノムあたり1コピー存在すると推定した.さらに,Bombyrin遺伝子のゲノム構造を解析するために2種類の鋳型DNAでLA-PCRをおこない塩基配列を解析したところ,4つのエキソンから構成することが判明し,この特徴は昆虫由来のlipocalinタンパク質のゲノム構成と一致した.さらにBombyrinの機能性については,昆虫細胞−バキュロウイルスを用いた遺伝子発現系で得られた組換え型Bombyrinと,二価金属イオンの存在下でATP,NDPを反応させた.その結果,NDPに対応する三リン酸型ヌクレオチドとADPが生成することから,組換え型BombyrinはNDP kinase様活性があることを示した.NDP kinase様活性を示したlipocalinタンパク質は,Bombyrinが初めての知見と考える.
  • 田中 弘正, 今村 守一, 神田 俊男, 田村 俊樹, 鈴木 幸一
    セッションID: 201
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    ダイアポジンはコガタルリハムシ(Gastrophysa atrocyanea)の長期(約10ヶ月)にわたる内因性成虫休眠の休眠期に特異的に出現するペプチドである.現在までの構造および機能解析の結果,システインを6個含む41残基のアミノ酸残基からなり,in vitroにおいて糸状菌に対する発育抑制および,巻き貝(Conus)由来の毒素(omega-Conotoxin GVIA)と同様のN-type Ca2+ channel ブロッカーとしての活性を持つことがあきらかとなっている.また本ペプチドは,バキュロウイルスゲノム由来のコノトキシン様ペプチドと同一のシステインの配列を示し,さらにイリドウイルスゲノムに含まれるORFと高い相同性を示す.本研究においては,ダイアポジンの機能解析および新規機能性ペプチドの利用を目的として,カイコ細胞質アクチンのプロモータを組み込んだダイアポジン遺伝子をpiggyBac由来のベクター(pBac[3xP3-EGFPafm])を用いてカイコw1-pnd系統に導入した.その結果,蛍光を発する9つの蛾区を得た.
  • 山本 真史, 山尾 真史, 森 肇, Jarvis Donald L.
    セッションID: 202
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    バキュロウイルス発現系を用いて昆虫及び昆虫培養細胞内で発現させたタンパク質は、昆虫型の糖修飾を受けるため哺乳動物とは異なった糖鎖構造を持つ。そのためこの発現タンパクをヒトの病気、疾患等の治療薬として利用することができないという欠点を持つ。そこでバキュロウイルスAcNPVとトランスポゾンpiggyBacを併用した形質転換法を用いて、複合型(哺乳類型)の糖鎖付加を行えるカイコの作製を試みた。
     piggyBacのITR間にIE1プロモーターと複合型糖鎖付加に必要な糖転位酵素、beta1,4-galactosyltransferaseのcDNAを持つ組換えベクターウイルスとpiggyBacの転移を促すヘルパーウイルスをカイコに同時に接種し、飼育を続けた。得られた次世代カイコから導入遺伝子を持つ個体の選抜を行い、beta1,4-galactosyltransferase遺伝子をカイコゲノムのフィブロインH鎖内に持つ個体を得ることができた。この個体をF3世代まで飼育を続け、そのうち一部のカイコに組換えバキュロウイルスを接種し、タンパク質を発現させた。この発現タンパクを回収し、現在糖鎖構造の解析をレクチンブロットにより行っている。
  • 出村 誠, 川口 恭輔, 相沢 智康, 新田 勝利, 滝谷 重治
    セッションID: 203
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    Bombyx moriフィブロインタンパク質の後部絹糸腺での大量産生は、組織特異的な遺伝子発現機構による。フィブロインH鎖遺伝子の転写制御因子の候補タンパク質fibroin-modulator binding protein (FMBP1)が後部絹糸腺から同定された(滝谷ら1997)。FMBP1は291残基からなり、C末端側約半分に特徴的な23アミノ酸残基が4回繰り返すDNA結合ドメインをもつ。このドメインと相同性の高い他のゲノムシークエンスはいまのところ報告されていないが、同様の繰り返し構造が線虫、ショウジョウバエ、ヒトに保存されていることがわかった。また、N端側は弱いながら植物の転写制御因子との類似性が見られたが、転写制御因子としての分子機構は十分解明されていない。本研究では、FMBP1の立体構造を核磁気共鳴(NMR)法で解明することを目的とした。本発表では、DNA結合ドメインのモデルペプチドを作製し、DNA結合等による局所的コンフォメーション変化を1H-NMR測定および円二色性(CD)測定から検討した。
  • 田村 俊樹, 神田 俊男, 桑原 伸夫, 全  国興, 今村 守一, 小島 桂
    セッションID: 204
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    昨年度はトランスポゾンpiggyBacをベクターとする形質転換カイコ作出法の改良について報告し、効率が非常に良くなったことを示した。その後、多くの遺伝子がこの手法によってカイコに導入され、遺伝子機能の解析や絹糸腺による組み換えタンパク質の生産に有効であることが明らかにされている。今年度は導入できる遺伝子の大きさと導入効率の関係について、予備的な実験を行ったのでその結果について報告する。 最初にプラスミド間での転移活性を見る方法を利用して挿入遺伝子の大きさと転移頻度の関係を調べた。遺伝子の大きさが1.6kbと9kbの比較では、後者は前者の約1/8の転移頻度であった。また、この中間の4.5kbや5.2kb、6.5kbの場合は1.6kbが挿入されたベクターに対し、それぞれ2/3、1/5及び1/3であった。次に、実際に形質転換カイコを作って調べたところ、この場合においても挿入遺伝子の大きさが大きくなるにつれて形質転換カイコが作出される頻度が低下する傾向がみられた。以上の結果から、挿入遺伝子の大きさの影響は大きく、遺伝子が大きくなるにつれて効率は低下するものと判断された。
  • 長屋 昌宏, 小林 淳, 高橋 禮子, 加藤 晃一, 吉村 哲郎
    セッションID: 205
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
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    これまで我々は、様々な用途に利用可能な昆虫細胞を用いたタンパク質生産系を構築することを目的に、5種類の鱗翅目昆虫細胞(BmN4、Sf9、High Five、SpIm及びAnPe)のN-グリコシル化特性の比較を行いその類似性を報告してきた。さらにAnPeでは一部に複合型糖鎖が付加する可能性が示唆されたため、2次元糖鎖マップ法を用いてN型糖鎖の構造決定を行い、より詳細なAnPeのN-グリコシル化特性解析を行なった。
    2次元糖鎖マップ法により構造決定されたAnPeのN-グリカンは、Sf9と共通な9種類とAnPeのみに同定されたManα1-3(GlcNAcManα1-6)Man3GlcNAc2および2本鎖複合型のGlcNAcManα1-3(GlcNAcManα1-6)Man3GlcNAc2という2種類の計11種類であった。これらの結果から、AnPeは複合型糖鎖合成の最初に働くGlcNAcTIIの活性が強いことが示唆され、その後に続く糖転移酵素群の促進や合成の妨げとなるGlcNAcaseの阻害を合理的に達成できれば、複合型糖鎖を効率よく付加するタンパク質生産系が構築できるであろう。
  • 郷右近 史朗, 鈴木 幸一, 土井 則夫
    セッションID: 206
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     ヒカリギセルは桑園に自然生息している陸産貝である.福島県郡山地方では昔から肝臓に良いといわれ食しており,肝障害が改善された例もある.その効果はヒカリギセルが多量に含むカルシウム,ビタミンE,グリコーゲン,タウリン等の物質由来との指摘があるが,これらの物質だけでは説明が出来ない効果も確認されている.このことから,いまだに未同定の機能性物質の存在が考えられる.そこで本研究ではヒカリギセル由来の機能性物質の探索を行った. 粉末状にしたヒカリギセルをアセトン,80%エタノールで洗浄後,2%NaClで抽出し粗抽出物を得た.これを用いてラット肝ガン細胞(dRLh84)に対する影響を調べた結果,その増殖を抑制する効果が確認された.また,マウス脾臓細胞に関してはその効果は見られず,正常細胞に対し何ら影響がないことが確認された.現在,この活性物質の同定と構造解析を目的とした実験を進めている.
  • 宮沢 福寿
    セッションID: 207
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     蚕にセラミックスを食べさせる方法による、セラミックス入りの繭糸の開発を行った。 まず、実用化している人工飼料にセラミックスを添加して、セラミックス入り飼料を作った。 これを蚕に給餌して、飼育に適した添加濃度と、効率的な給餌時期を検討した。さらに、給餌したこれらのセラミックスが、繭糸をはじめ、蚕体のどの組織に移行しているか定量分析をして調べた。 飼育結果は、蚕の生育に害の無い飼料への添加濃度は、乾物あたり25%程度までであることが分かった。 セラミックス移行確認の定量分析結果は、繭糸へは飼料への添加濃度に比例して25%まで増加した。また、給餌時期では5齢の後半が特に有効であった。 また,組織への移行では血液、絹糸腺、蛹、脱皮殻、繭糸を定量分析して調べたが、いずれの組織にも移行していることが分かった。 今までセラミックスのような不活性の固体粒子が、蚕の消化管を通過して絹糸へ移行することは不可能という考えが常識とされてきた。 しかし今回の検討で、これを覆す結果が確認されたので報告する。  この結果は、蚕に各種機能性を持つ固体粒子を給餌する方法での、機能性絹を開発する基礎となると思われる。
  • 松原 藤好, 合田 恵子, 陳 瑞英, 安永 大三郎, 近藤 盛之進, 角田 素行
    セッションID: 208
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    演者らは1964年に人工飼料による無菌飼育法を確立して以来、季節に制約されない無菌周年養蚕法とそのシステム化を計り、1989年からは各地に工場を建設して実用化を進めてきた。平成10年4月の蚕糸業法の廃止を契機に日本の養蚕は新しい局面に入った。蚕糸業の再活性化を願って大阪市内に研究所を設置し、周年での蚕、繭の生産とそれらの新分野への利用研究を進めているので報告する。
  • 一田 昌利, 原田 准行, 則本 裕子, 一田 敦子, 行松 啓子, 亀井 加恵子, 古澤 壽治, 原 三郎
    セッションID: 209
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    蚕の人工飼料は1960年代に実用化された。その後多くの改良がなされてきた。しかし、基本的組成は大きく変化していない。一般的な蚕の人工飼料は20種類ほどの成分を混合して作られている。また、人工飼料飼育は無菌あるいは清浄環境維持を前提としている。このため、水と練合された人工飼料はオートクレーブあるいは蒸煮機で蒸煮される。 ところで、我々は桑葉粉末の製造にホソカワミクロン株式会社のドライマイスターを使用した。その結果、製造された桑葉粉末は生に近い状態の成分を保持していた。そこで、この粉末を主成分とした人工飼料を開発した。この人工飼料の特徴は以下のとおりである。1.成分は5種類でシンプルな組成である。2.ほとんどの成分が水溶性であり、混合が容易である。3.蒸煮を必要としない。 上記無蒸煮人工飼料を用いて人工飼料飼育を行った結果、原種用に我々が開発しKIT404110飼料と比較して営繭率及び繭糸質で劣るものの飼育可能であることが明らかとなった。さらに改良を加え、新しい人工飼料としての実用化を目指している。
  • 大浦 正伸
    セッションID: 210
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    昆虫類を用いた有用物質の生産を目的とし、カイコ幼虫を利用した有用蛋白質生産の研究を行っているが,幼虫体内で増殖された蛋白質を含む体液を効率的に採取することが重要である。本研究では,カイコ幼虫体液の大量自動抽出システムの構築を目的に,凍結融解法を応用した体液採取の連続自動化を図るため,幼虫の凍結システムを開発した。連続凍結装置は低温水槽とコンベア装置等から構成し,幼虫を直棒状に凍結させるための冷却水温、移動速度等について検討を行なった。水槽容量は1150×300×230mm,ベルト長1250mm,水中部の長さ700mmである。ベルト速度は,0.5mm/sから3.3mm/sで,幼虫の水中滞留時間を3分30秒から23分20秒まで調整可能である。冷却系は2台の冷凍機により水温を-20℃まで冷却できた。カイコ幼虫の凍結について,-10℃の水中に投入したものは湾曲した状態で凍結した。常温水中に5分放置した後,-10℃の水中に投入した幼虫は,数分で直棒状に凍結した。以上の結果,本装置によりカイコ幼虫の連続自動凍結の可能性を得た。
  • 小林 亨, 高橋 保, 玉田 靖
    セッションID: 211
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
     演者らは昆虫工場のシステム化として5齢4,5日のカイコからの体液採取の機械化を可能にするため,既にカイコ用体液採取装置を開発している。本装置のさらなる性能向上のため,カイコ供給装置の付加とその性能について検討した。 試作したカイコ供給装置は,投入シュータ,受け渡しアーム付きチェーンコンベア,受け取りジグ=把持器,投入タイミングブザー,電磁クラッチ,ユニバーサルジョイント等から構成し,本装置をカイコ用体液採取装置の切開用レーザの右脇に設置して,1頭ずつカイコを供給し,その作業性能について検討した。 (1)0℃で20分低温麻酔した5齢4,5日のカイコを頭部からシュータに1人で2秒毎に1頭投入。(2)次にカイコを仰向けにして真っ直ぐな姿勢にさせ,受渡しアームによりカイコを腹這いにしてつまみ上げ,本アームと同じ速度で併走する体液採取装置の水平になった把持器に移載。(3)本把持器をレーザの手前で倒立させてカイコを切開した。以上の結果,体液を採取することが連続して行えた。また供給装置のない場合に比べ,作業能率が2倍に向上し,1人作業による体液採取の見通しが得られた。
  • 勾坂 晶, 田中 博光, 古川 誠一, 山川 稔
    セッションID: 212
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    カブトムシの体内に細菌が侵入した際に体液中に誘導される抗菌性タンパク質として同定されたA. d. coleoptericin Aは、そのプロモーター領域にNF-kBモチーフ、R1、GATAモチーフ、NF-IL6 モチーフを持っていた。これらの機能性モチーフがどのように転写制御に関与しているのかを、レポーター実験とEMSAによって解析した。プロモーター領域とルシフェラーゼを連結させたレポーターベクターを作製し、カイコのDZ細胞にトランスフェクションして活性を測定したところ、NF-kBモチーフがシスエレメントとして重要であることが明らかになった。そしてこの領域に結合する転写因子としてRelファミリーに属するタンパク質、A. d. Rel A及びBのcDNAをクローニングした。これらをレポーターベクターと共発現させたところA. d. RelAが選択的に活性を上昇させた。そしてA. d. RelAをGST融合タンパク質として発現させ、NF-kBモチーフをプローブに用いてEMSAを行った結果、特異的なバンドが出現しGST抗体の処理で消失した。以上の結果からA. d. Rel Aがこの配列を認識してA. d. coleoptericin Aの転写活性化に関与していることが推測された。
  • 田中 博光, 古川 誠一, 中澤 裕, 勾坂 晶, 山川  稔
    セッションID: 213
    発行日: 2003年
    公開日: 2004/05/27
    会議録・要旨集 フリー
    カイコ抗菌性タンパク質遺伝子の転写を活性化させる転写因子としてRelタンパク質 (BmRel A 及び B) cDNAが単離され、BmRel Bがアタシン遺伝子、BmRel Aがレボシン4遺伝子の転写を特に活性化することがトランスフェクションの実験により明らかになっている。BmRel Aの構造はBmRel Bと比較し、N末部分が52アミノ酸残基余分にあるだけで他は同一である。にもかかわらず、両者における選択的な転写活性化能を有することは大変興味深い。我々はこれらBmRel の欠失体を作製し、トランスフェクション法により転写活性化領域の同定を行った。その結果、BmRel Bによるアタシン遺伝子の活性化にはC末側に存在するプロリンに富んだ領域約80アミノ酸残基が、BmRel Aによるレボシン4遺伝子の活性化にはこのプロリンに富んだ領域に加え、N末の52アミノ酸残基の両領域が必要であることが明らかとなった。また、BmRel A のN末52アミノ酸残基は酵母の生体内においても転写活性化能を有することも確認できた。この配列は疎水性アミノ酸残基と酸性アミノ酸残基に富み、転写活性化領域に存在する典型的な配列の特徴を有することが分かった。
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