cDNAによるカイコ分子遺伝子地図作製の過程で作出されたクローンの中に、塩基配列においてミトコンドリア由来の遺伝子に相同性が高いものがいくつか見出された。 そこで、クワコおよびクワコとカイコの交雑後代からゲノムDNAを抽出し、サザンブロットハイブリダイゼーションを行った。用いたミトコンドリア由来の遺伝子はNADHデヒドロゲナーゼ、チトクロムオキシターゼ、および16S rRNAである。クワコおよびクワコとカイコ雑種系統から抽出されたDNAをEcoRI、BamHIあるいはKpnIで消化した場合、いずれの遺伝子においても調査個体間に確実な変異は認められなかった。一方、HindIIIまたはSacIで処理したものでは調査個体間にシグナル位置の差異が認められた。これらシグナルの位置に関しインターネットで公表されているカイコあるいはクワコのミトコンドリアゲノム情報(Yukuhiro;2002,Lee et.al;2000)をもとに、制限酵素消化された断片について検討した結果、それぞれの断片の環状mtDNAにおける位置が推定された。特に、チトクロムオキシターゼ遺伝子については、その中に制限酵素SacIの切断領域(B.mori;12684-12689,B.mandarina;12971-12976)が含まれていることが判明した