抄録
本論文では,教員養成系大学・学部における小学校算数科の教科専門科目において,授業構想力向上を目的としたレポート課題を取り入れた授業を実践し,その効果について考察する。実践を行った授業の前半において,帰納的な推論の過程で法則を見いだす活動に重点をおいた指導を行ったうえで,「数取りゲーム」を題材としてその必勝法を見いだす算数科の授業を構想する課題をレポート形式で課した。本論文では,この題材に関わる,数学科の教科内容学研究において提案されている教科内容構成の6要素について具体を提示し,本題材が教科内容学の観点から見て妥当なものであることを示した。提出されたレポートを,教科教育と授業実践の観点を含めて評価したところ,あらかじめ設定した基準を上回る結果が得られた。また,提出されたレポートのうち過半数の回答で授業の目標が明確に述べられ,約半数の回答で児童の帰納的な推論の機会が担保されていた。これらにより,受講生が授業後に一定の授業構想力を有していることが示唆された。