抄録
本研究の目的は,専門性と実践性に優れた教員の養成に寄与する,数学専門科目の指導方法を開発することである。そのために,大学1年の学生22名を対象に,探究成果を発表する機会を取り入れた「線形代数学Ⅰ」の教育実践を行い,そこで生じた学びについて分析した。本実践では,探究課題として先行研究で提案されているパーフェクト・シャッフル教材を利用した。学生達は8班に分かれて探究を行い,その成果を発表した。我々は「授業の観察・記録」,「授業感想文の回収」,「受講者へのインタビュー」を行い,収集されたデータから学生の学びの様相を明らかにした。結果として,探究成果発表会を取り入れることにより「専門数学及びその探究についての学び」と,「教員としての資質・能力に関わる学び」の双方が生じることが示された。また,探究の過程において指導者が配慮すべきことについても確認された。