抄録
本稿は,音楽鑑賞における感動経験が主体と客体が一体となる「主客合一の経験」と言えるかを,西田幾多郎の純粋経験とデューイの直接経験の理論を手がかりに考察することを目的とする。まず,西田の純粋経験とデューイの直接経験の共通性を整理し,両者における主客合一の経験の特質を明らかにする。次に,音楽による感動経験の特徴を検討し,それが主体の精神と音楽という対象が一体となる経験として理解できることを示す。さらに,美術鑑賞およびスポーツ(陸上競技)における主客合一の経験の事例を取り上げ,芸術や身体活動においても主体と対象が融合する経験が成立することを考察する。以上の検討を通して,諸経験における主客合一の経験の特質を明らかにする。