2020 年 15 巻 p. 33-47
本研究の目的は,エンパワメント視点に基づくLGBTQの子ども達への学校ソーシャルワーク実践モデルを構築することにある.そして,本実践モデルの構築にあたっては,LGBTQ当事者からの語りによる質的分析を活用していくことにした.
分析の結果,学校教育環境に介在する,LGBTQの子ども達のパワーの減退につながる五つの要因(【LGBTQに不寛容な仕組み】【ショックな出来事】【他者の無理解な言動】【居場所が無い】【否定的な自己イメージ】)とエンパワーを促す四つの要因(【LGBTQに寛容な仕組み】【居場所の存在】【他者の受容的な態度】【肯定的な自己イメージ】)とその構造が明らかになった.また,これらに多元的にアプローチしていくために,エンパワメントプロセスに基づく学校ソーシャルワーク実践モデルを提示した.なお,これらの実践は,子どもの人権と社会正義,多様性の尊重に基づき,ミクロ・メゾ・マクロレベルで子どもの支援に取り組んでいくものである.