コンピュータ ソフトウェア
Print ISSN : 0289-6540
論理結合マップとモジュール結合マップの重なりを用いたソフトウェア進化尺度の提案
花川 典子
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2009 年 26 巻 4 号 p. 4_157-4_172

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抄録

長期間にわたるソフトウェア開発プロジェクトでは,ソースコードの記述量が増加し複雑さが増す.ソフトウェアの複雑さを計測する方法にはモジュール結合度や論理結合がある.モジュール結合はソースコードの静的なプロダクト間の関係を表現し,論理結合はモジュールの同時更新というプロセスの観点からモジュール間結合関係を示す.しかし,開発者がソースコードを修正し,その結果モジュール結合関係が変化するという一連のプロセスとプロダクトの関係は,それぞれの単独尺度では表現できない.そこでモジュール結合と論理結合を用いてソフトウェア進化を計測する新しい尺度SELM(Software Evolution with Logical coupling and Module coupling)を提案する.本尺度は「モジュール結合の高いモジュール群は論理結合も高い」という基本概念に基づき,論理結合の強いモジュール群とモジュール結合の強いモジュール群の集合の差異をソフトウェアの進化として計測する手法である.オープンソースプロジェクトに適用した結果,ソフトウェア全体の進化の様子を結合マップを用いて可視化し,各プロジェクトのSELM値がソフトウェアの進化にともなって変化する様子を明らかにできた.提案尺度は従来の複雑さの尺度よりもソフトウェアの特徴や個人的な開発方針に影響されない尺度であることを示し,階層化された結合マップを用いることで,大規模ソフトウェアの脆弱な部分の特定を支援できる尺度であることを示した.

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© 日本ソフトウェア科学会 2009
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