コンピュータ ソフトウェア
Print ISSN : 0289-6540
テストケースのクラスタリングと0–1計画モデルを組み合わせた回帰テストの効率化
阿萬 裕久佐々木 愛美中野 隆司小笠原 秀人佐々木 隆志川原 稔
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2015 年 32 巻 3 号 p. 3_111-3_125

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抄録

開発中のソフトウェアシステムに変更が施された場合,利用可能なすべてのテストケースを再実行してデグレードの有無を確認するのが理想である.しかし,現場においてテストに投入可能な工数は限られており,テストケースの優先順位付けを行って一部のもののみを再実行するのが現実解となっている.近年,そのための支援技術の一つとして,各テストケースにおける不具合検出の期待度(優先度)と実行工数の両方を総合的に考慮し,0–1計画法によってテストケースの選択を行う手法が提案されている.0–1計画法を用いたテストケース選択は,優先度の降順にテストケースを選択するという従来手法に比べて費用対効果の高い回帰テストを実現できることが確認されている.しかしながら,これまでの手法は目的関数の値(優先度の合計値)を最大化することに注視しており,テストの網羅性については十分に考慮できていなかった.仮に特定の機能に関するテストケース群の中に優先度の高いものが多く含まれていた場合,その機能に関するテストケースのみが選択されてしまい網羅性の低い回帰テストになってしまうという状況も考えられるが,そのような状況を回避するための方策はとられていなかった.そこで本論文では,テストケースをそれらの実行履歴に基づいてクラスタへ自動分類し,“クラスタを網羅する”という制約条件を0–1計画モデルに盛り込むことで,より網羅的で効率的な回帰テストを実現するためのテストケース選択手法を提案している.実際に開発・保守されているシステムを対象とした評価実験では,提案手法は従来手法の約1/3の工数で効率的に不具合を検出できることを確認している.

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© 2015 日本ソフトウェア科学会
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