コンピュータ ソフトウェア
Print ISSN : 0289-6540
小規模ソフトウェア開発PBLにおけるGitHubを用いた軽量設計文書インスペクションプロセスの提案とその実践・評価
宮下 弓槻山田 侑樹橋浦 弘明櫨山 淳雄
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2021 年 38 巻 1 号 p. 1_3-1_17

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抄録

近年情報系分野における実践的な教育手法として,ソフトウェア開発型PBL (Project Based Learning)に対する注目が高まっている.GitHubに代表されるソーシャルコーディングツールをソフトウェア開発型PBLに導入する実践事例が報告されている.教育において,学習者へのアドバイスや誤りの指摘等のフィードバックは重要である.とりわけ多くの学習者がはじめてプロジェクト形式でのソフトウェア開発を学ぶソフトウェア開発PBLにおいてフィードバックは重要である.ソフトウェアの品質を高めるためには,開発者同士で検証活動を行うことが効果的であるとされている.一般にFaganにより提唱されたインスペクションが効果的な方法であると認識されている.しかしながら,これらの活動は手間がかかること,同期で行うことなどが障壁となる.このような背景から,近年では,モダンコードレビューと呼ばれる,より軽量な方法が実施されている.モダンコードレビューは,インフォーマルであること,ツールを用いたレビューであること,非同期に行えること,コードの変更のレビューに焦点を当てることを特徴とする方法である.本研究では,これらのソフトウェア開発活動で一般に行われているインスペクションやレビューといった検証活動を開発者同士の枠組みに加え,教授者から学習者への1つのフィードバックの機会ととらえる.具体的には,モダンコードレビューの対象を要求仕様書や設計文書に拡張し,それらのレビュー活動をGitHub上で実施するためのプロセス(軽量設計文書インスペクションプロセスと呼ぶ)を提案し,このプロセスを実践したソフトウェア開発PBLを報告する.その結果,本稿で提案したインスペクションプロセスを用いることで,教授者が受講生の作成した成果物の各行にコメントでき,的確なフィードバックを提供することが可能となった.

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© 2021, 日本ソフトウェア科学会
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