社会福祉学
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自閉症児の母親の障害受容過程 : 1歳半健診制度化の効果と母親への支援のあり方に関する研究
夏堀 摂
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2002 年 42 巻 2 号 p. 79-90

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抄録

本研究では,自閉症児の母親の障害受容を促す具体的方策を探るために,1歳半健診の制度化による母親の障害受容過程への影響を明らかにする目的で健診実施以前以後の世代間比較を行い,また,障害受容に要する時間に影響を与える要因の解明を行った。その結果,(1)実施前後で「障害の疑い」「診断」の時期に有意差は認められなかったが,実施群のほうがより早く「公的機関への相談」「親の会への入会」という対処行動をとっていた。(2)世代間で心理状態が不安定な時期や育児困難を顕著に示した時期に有意差が認められた。(3)制度を利用できた実施群は未実施群に比べ,障害受容に要する時間が短くなっていた。(4)制度化後において,母親の障害受容に要する時間に影響を与える要因には「調査時点の母親の年齢」「調査時点の子どもの年齢」「診断時の専門家の説明の仕方」「親の会への入会時期」の4変数が関連していた。以上の結果をもとに,自閉症児の母親の障害受容過程に対する1歳半健診制度の影響と,今日の制度化で育児を経験している自閉症児の母親に対する支援のあり方について考察した。

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© 2002 一般社団法人 日本社会福祉学会
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