社会福祉学
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論文
  • 宮田 千佳子
    2025 年66 巻2 号 p. 1-16
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,国内外の司法福祉の研究動向について概要を踏まえつつ,日本司法福祉学会の大会分科会テーマと掲載論文の内容に注目し,司法福祉研究の動向における民事司法の位置づけを明らかにすることを目的とする.司法福祉研究においては,民事司法(民事法のうち特に民法に基づく司法の働き)のうち家事司法を除く領域は,司法福祉の対象として意識されてはいるものの,司法福祉の実践領域として明確に位置づけられているとは言い難い.また規範的解決と問題の実体的解決・緩和という司法福祉の視点から民事司法を論じる研究もほとんど行われていない.民事司法は社会福祉と親和性があり,司法福祉の領域の一つと考えられる.特に,法律相談に内在する福祉課題に対して,司法と一体となった福祉による支援が必要である.今後は刑事司法のみならず民事司法についても司法と福祉の連携のあり方や効果的な司法福祉実践の内実を明らかにしていくことが必要である.

  • 川田 八空
    2025 年66 巻2 号 p. 17-34
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり

    本稿は,セルフヘルプグループ(以下,SHG)の「社会変革的機能」に着目し,SHG論と精神保健福祉分野の二つの当事者運動―すなわち「専門家が育成する当事者運動」と「精神病」者運動―の展開過程を研究したものである.当初はSHG論と「専門家が育成する当事者運動」において「社会変革的機能」が意識されていたが,次第に「治療的機能」に重点を置いた実践理論が蓄積されていった変遷を研究から明らかにした.

    本研究の知見として,①谷中輝雄が生活支援論の文脈で提示した「当事者の持つ力,可能性を信じて待つ」という実践姿勢が持つ今日的意義,②今後ソーシャルワーカーが学ぶべき実践知は「精神病」者運動を担うSHGにこそあり,彼らとのパートナーシップ形成に向けた実践がSHG論及びソーシャルワークのあり方を拓いていく可能性,③人権モデルの観点からソーシャルワーク/実践に対する省察概念としてセルフヘルプ/SHG概念を示した.

  • 堀 兼大朗
    2025 年66 巻2 号 p. 35-48
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり

    本稿の目的は,自閉症者がどのようなプロセスで大学進学を選択したのかを明らかにし,高等教育進学に関する支援への示唆を得ることである.自閉症者8名を対象とするインタビュー調査のデータから,進路選択プロセスに関わるカテゴリと概念を抽出した.その結果,進学選択には二つのパターンが見出された.一つは,高卒の障害者の就職の難しさ,労働の場で許容されない特性を持つこと,健常者の立場への憧れといった,障害者の社会的立場や特性を考慮したパターンである.もう一つは,進学クラスの所属や興味関心の充足目的を理由とするパターンである.前者のパターンでは対象者が差別や偏見を内面化し,自身を差別の対象と認識していることがうかがえた.この結果から,進路支援の教職員はスクールソーシャルワーカーと連携し,生徒のエンパワーメントを図ることで,自己実現に向けたポジティブな自己変容を促すことの重要性が示唆された.

  • 池田 敏
    2025 年66 巻2 号 p. 49-61
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,文献研究によって,わが国の慢性疾患を有する児童生徒の復学支援に関する研究の現状を把握した.そのうえで,慢性疾患を有する児童生徒の復学支援におけるスクールソーシャルワーカーの役割を明示していくための今後の研究課題について考察を行った.その結果,復学支援においては,居住地校と家庭,病院による連携の必要性が指摘されていたが,その際の調整役については明らかにされていなかった.また,慢性疾患を有する児童生徒の保護者に向けた支援に関する研究については,入院中に限られている現状が示された.このことから,今後の研究課題として,居住地校の特別支援教育コーディネーターによる復学支援の実態を明らかにしていくことと,復学支援の過程で保護者が受けている支援の実態を把握していくことが必要であると考えられた.

  • 口村 淳
    2025 年66 巻2 号 p. 62-77
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,特別養護老人ホーム(以下,特養と記す)の施設長へのインタビュー調査を通して,施設長からみた生活相談員に求められる役割について検討することである.A県内の特養の施設長17名を対象に半構造化面接を実施し,質的分析を行った.その結果,【営業面への関与】【専門的知識・技術の活用】【地域に対する貢献】をはじめとする14個のカテゴリーが生成された.先行研究における業務分類と照合したところ,「運営管理」「連絡・調整」「相談」などの項目に本研究のカテゴリーが該当した.研究結果の検討を通して,施設長からみた生活相談員に求められる役割として,①持続可能な事業展開の基盤づくりに向けた役割,②サービス提供の質に対する役割,③地域貢献に対する役割を見いだすことができた.

実践報告
調査報告
  • 宮地 菜穂子
    2025 年66 巻2 号 p. 95-106
    発行日: 2025/08/31
    公開日: 2025/10/31
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,児童養護施設等退所者と措置中の身近な人との人間関係のあり方と措置解除後のつながりの維持との関連性について明らかにすることを目的とし,愛知県内の児童養護施設および児童心理治療施設,合計23カ所を2017年4月~2022年3月の過去5年間に15歳以上で退所等した者に関して,施設職員が記入する質問紙調査を実施した(施設回収率100%,有効回答数408ケース).分析では,説明変数と目的変数の関係性をクロス集計(χ2検定)で示したうえで,調整変数を追加した二項ロジスティック回帰分析により検討した.その結果,退所者の約2割が,連絡先が不通であることが確認された.そして,説明変数については,職員および他児童との関係性の良さが統計的に有意な負の関連を示した.すなわち,退所時点で職員と他児童との間に良好な関係性が築かれていない者ほど,その後,連絡先が不通状態になりやすいことが明らかになった.

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