本稿は,セルフヘルプグループ(以下,SHG)の「社会変革的機能」に着目し,SHG論と精神保健福祉分野の二つの当事者運動―すなわち「専門家が育成する当事者運動」と「精神病」者運動―の展開過程を研究したものである.当初はSHG論と「専門家が育成する当事者運動」において「社会変革的機能」が意識されていたが,次第に「治療的機能」に重点を置いた実践理論が蓄積されていった変遷を研究から明らかにした.
本研究の知見として,①谷中輝雄が生活支援論の文脈で提示した「当事者の持つ力,可能性を信じて待つ」という実践姿勢が持つ今日的意義,②今後ソーシャルワーカーが学ぶべき実践知は「精神病」者運動を担うSHGにこそあり,彼らとのパートナーシップ形成に向けた実践がSHG論及びソーシャルワークのあり方を拓いていく可能性,③人権モデルの観点からソーシャルワーク/実践に対する省察概念としてセルフヘルプ/SHG概念を示した.
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