社会福祉学
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最新号
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論文
  • 畠中 耕
    2023 年 64 巻 3 号 p. 1-13
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/02/21
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    本研究の目的は近代報徳思想が社会事業の成立と展開に与えた影響について,報徳運動の中心地であった静岡県を対象に明らかにすることにある.本論文はその目的遂行の一端として,静岡県で独自に発展した隣保事業施設である新興生活館を考察対象とする.新興生活館は1930年11月に発生した北伊豆地震の被災地に全国から寄せられた義捐金の使途をめぐる構想から計画され,昭和恐慌期の更生運動下において県内に広く普及した.新興生活館は大日本報徳社副社長佐々井信太郎(1874~1971)の思索の影響を受けて普及したが,その普及は「新興報徳運動」の進展と軌を一つにしていた.本研究を通して新興報徳運動の起点が,北伊豆震災の復興指針として掲げられた新興精神綱領とそこから胎生した新興生活館計画にあることが明らかとなった.

  • 朴 東民
    2023 年 64 巻 3 号 p. 14-25
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/02/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究の目的は,生活困窮世帯の子どもの学習・生活支援事業の実施主体である自治体が本事業における家庭訪問を実施する要因を明らかにし,今後の課題について考察することである.家庭訪問の実施要因として「財政的要因」「人的要因」「自治体の課題認識要因」の三つの要因に着目し,各要因に関連する仮説の検証を行った.調査方法は,全国580自治体の事業担当者を対象に質問紙調査を実施した.分析結果,財政的要因では,家庭訪問の加算措置と家庭訪問の実施状況の間に一定の関連性があることが示唆された.また,人的要因では,専門性のある支援員および家庭訪問体制が整っている支援団体の確保と家庭訪問の実施状況の間に関連性がみられた.そして,自治体の課題認識要因では,自治体が期待する事業成果の中身において家庭訪問の実施群と未実施群の間で傾向の違いがみられた.この知見を踏まえ,本事業における家庭訪問の充実を図るための課題を示した.

  • 延原 稚枝, 門下 祐子, 武子 愛, 名川 勝
    2023 年 64 巻 3 号 p. 26-40
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/02/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究は,知的障害者の支援者を対象に知的障害者および一般人に対する性的態度尺度を用いた質問紙調査を行い,知的障害者に対する性的態度を明らかにするとともに,知的障害者の性別と性的態度の関連性を検討することを目的とした.支援者は知的障害者の性的表現・性行動に概ね受容的な回答をしていた.ただし,一般人に対する性的態度尺度およびその知的障害者の性的態度尺度(対応項目)の合計得点平均値についてt検定を行うと,知的障害者に対する性的態度尺度のほうが有意に平均値が低かった.また,知的障害者に対する性的態度では,質問紙の主語に示す性別で2群に分けt検定を行った結果,知的障害男性より知的障害女性に対する得点の平均値が有意に低かった.したがって,支援者の知的障害者に対する性的態度は概ね受容的であるものの,一般人に対する性的態度と比較すると有意に保護的で,それは知的障害女性に対して顕著であることが明らかとなった.

  • 太田 健一, 浅石 裕司, 川口 真実
    2023 年 64 巻 3 号 p. 41-53
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/02/21
    ジャーナル 認証あり

    まちづくりを活動目的とする多世代で構成されたNPOにて,会員の活動継続要因を明らかにすることを目的にグループインタビュー調査を行った.特に世代ごとの活動継続要因と世代間の関係性に着目した.その結果,活動継続要因の世代ごとの特徴として,20代30代では《活動が良い経験》,【若者の活動スタイルに合った組織風土がある】などが挙がり,40代50代では《活動自体への意欲》,【まちづくりに適した地域の土壌があった】など,60代70代では《他者とのつながり》,《自分の役割を感じる嬉しさ》などが挙がった.全世代に共通して,《やりたいことができる環境》が挙がった.世代間の関係性として,60代70代の下の世代へのサポート,下の世代と関わる時のスタンスなどは,20代30代,40代50代の《やりたいことができる環境》を強化していた.世代ごとに活動継続要因の特徴は異なり,これらは多世代だからこそ強化されていることが示唆された.

  • 古井 克憲
    2023 年 64 巻 3 号 p. 54-67
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/02/21
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,権利擁護の観点から,重度・最重度知的障害のある人の意思決定支援(SDM)の問題と課題について医療同意にも焦点を当て検討する.国内外の先行研究,フィールドワークでのエピソードをもとに検討した結果,まず「地域の施設化」の枠内ではなく「障害のない者との平等」を志向し,SDMを行う選択・決定の幅を拡げることが課題であると指摘した.つぎにSDMの促進要因となる本人と支援者との関係の親密さには支援者各々で質の違いがあり,SDMのプロセスで「支援の輪」を構成する重要性が確認された.そして,医療同意に家族の意向が優先される現状でSDMを行うには,本人と共同および親密な関係にある支援者の意向を決定内容にいかに含められるかが問われると考察した.今後の課題として「障害のない者との平等」の機会の保障,SDMのライフステージを通した連続性,支援者の応答性の向上を目指す組織体制の整備が重要であると提示した.

調査報告
  • 口村 淳
    2023 年 64 巻 3 号 p. 68-83
    発行日: 2023/11/30
    公開日: 2024/02/21
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    本調査報告の目的は,短期入所生活介護(以下,ショートステイと記す)における生活相談員の予約業務および稼働率管理の実態や課題について明らかにすることである.A県内にある短期入所生活介護事業所全239カ所に勤務する生活相談員を対象に質問紙調査を行った(121通/有効回答率50.6%).調査の結果,ショートステイの生活相談員が行う予約業務および稼働率管理の特徴として,以下の3点が明らかになった.第一に,生活相談員は予約業務を相談援助の一環としてとらえており,柔軟かつ丁寧な対応が展開されていること,第二に,生活相談員が担う予約業務には,相談援助の側面と同時に稼働率管理の側面があること,第三に,生活相談員が稼働率管理に固執するあまり,多職種との板挟みに陥る可能性があることである.生活相談員が孤立しないために,稼働率管理の責任を生活相談員のみに帰するのではなく,事業所としてのサポート体制が必要と考えられる.

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