社会福祉学
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社会主義体制における福祉システム
平野 寛弥
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2005 年 46 巻 1 号 p. 74-85

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抄録

本稿では,社会主義体制における福祉制度の体系的・包括的把握を日的とし,社会政策と経済政策,およびこの二者から構成される社会創造政策の3つの分析概念を用い,福祉制度の構成を福祉システムという一種の社会経済システムとして考察した.その結果,全人民の福祉の実現を目指し,社会の構造それ自体を改変するという壮大な目的をもった社会創造政策が,その構成要素である経済政策と社会政策の対立により機能不全に陥ったことが明らかとなった.すなわち福祉システムの崩壊である.これに伴い,福祉の実現という目的は一政策領域にすぎない社会政策に縮減されて,社会主義体制での絶対的な地位を喪失することになった.当初社会主義体制の理念であり目的であるとされた全人民の福祉の実現は,その実現化の最中で放棄されたのである.

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© 2005 一般社団法人 日本社会福祉学会
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