2006 年 47 巻 1 号 p. 5-17
本稿では,国民年金制度成立時から2004年改革まで,財政再計算ごとに,国民年金の給付水準が基礎的な生活保障といった考え方とどのように結びついてきたのかについて探った.また,2004年改革における国民年金給付の給付削減の程度も明らかにした.国民年金の給付水準は1959年の制度発足以降,1999年改革まで,高齢者の消費実態や生活扶助などと関連づけられ,少なくとも基礎的な生活保障を念頭においたものであった.しかし,2004年改革ではそうした基礎的な生活保障という考え方は明確に示されず,厚生年金と同様に機械的に給付が15%ほど削減された.その結果,2023年に国民年金のモデル年金給付は,生活扶助と比較した場合,制度発足当初の1960年代の水準にまで落ち込む可能性がある.次期年金改革においても,2004年改革のようにその給付が削減されるならば,国民年金は老後の基礎的保障という目的を完全に放棄せざるを得なくなるだろう.