2010 年 50 巻 4 号 p. 69-81
本研究では,アディクション回復支援においてその存在が期待されながら日本で本来的な実現に至っていない治療共同体の実践導入に向け,治療共同体の形式ではなく内実としての援助システムについて検討することを目的に,アメリカ治療共同体Amityにて参与観察およびインタビュー調査を実施した.調査協力者のスチューデント(入所者)・アプレンティス(スタッフ見習い)・スタッフ12人に対し,「理念・構造・実践」に関するインタビューを実施し,質的分析を行った.これらの三者間のグループ・ダイナミクスを検討した結果,治療共同体は,セルフヘルプ機能と専門的治療の統合として,従来の当事者-援助者の二者関係に加え,中間的存在としてのアプレンティスがおのおのの役割を有する援助システムを有していることが示唆された.また,この援助システムについて「三元的援助構造」と位置づけ,その独自性を提示した.