社会福祉学
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医的侵襲行為への家族同意権の正当化問題 : 成年後見制度における議論を基盤として
鈴木 道代
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2010 年 51 巻 3 号 p. 18-30

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抄録

精神上の障害を抱える者を取り巻く問題のひとつに,医的侵襲行為に対するインフォームド・コンセントが成立しないという問題がある.この問題を成年後見制度における医的侵襲行為への同意権問題から考えると,成年後見人に同意権付与を認めない立場と認める立場がある.本稿では後者に焦点をあて,そのなかでも「家族同意権」付与に言及する5説を整理し,その根拠の正当性の検討を行った.その結果,家族同意権付与に言及する5説は3つの肯定説と2つの否定説に分類することができた.2つの否定説は,家族同意権付与を裏づける法的規定がないということで否定し,3つの肯定説は,"家族であるから当然"という"慣行的"理由づけによる事実論,扶養義務関係や第三者機関による介入の必要性を説く解釈論と立法論によって肯定していた.しかし,3つの肯定説の根拠の正当性は不完全であり,したがって「家族同意権」付与を正当化するには限界のあることが明らかになった.

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© 2010 一般社団法人 日本社会福祉学会
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