2011 年 52 巻 2 号 p. 94-106
本研究の目的は,DV被害者がいかにして暴力関係からの「脱却」を決意するのか.そのプロセスを実証的に明らかにし,その結果を元に支援のあり方について検討するものである.暴力関係から「脱却」したDV被害者7人にインタビュー調査を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った.分析の結果,暴力関係からの「脱却」つまり,加害者からの離別の決意を導くのは,被害者自身の「決定的底打ち実感」であることが明らかになった.「決定的底打ち実感」に至るプロセスは,「限界感の蓄積」を基底に,被害者が現状への意味と気づきを再形成し,限界を限界と認識するプロセスであるといえる.そしてそのプロセスを下支えしたのは,「生き続けている自己」である.支援者は,「生き続けている自己」を支えることが重要であることが示唆された.