社会福祉学
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社会的養護措置解除後の生活実態とデプリベーション : 二次分析による仮説生成と一次データからの示唆
永野 咲有村 大士
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2014 年 54 巻 4 号 p. 28-40

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抄録

本研究では,社会的養護措置解除後の若者(以下,退所者)の生活実態とその困難さの数量的かつ正確な把握を目指し,4つの退所後実態調査の二次分析を行った.またこれらの調査の実態把握率の課題を克服するため,施設代表者に記入を依頼するアンケート調査を実施し一次データの収集・分析を行った.その結果,退所者は同年齢層(15〜24歳)の18〜19倍の生活保護受給率であり,司法や医療,福祉制度の介入を必要とする退所者も少なくないことが明らかとなった.この状況から,退所者はデプリベーションともいえる生活困難に陥っている可能性が示唆された.進学状況の格差,高い正規雇用率と高い生活保護受給率等相反する状況もみられ,困難が集積する層があると推測された.特に18歳未満での退所は住居・職業ともに不安定になる傾向が示唆された.社会的養護は退所後の生活実態を把握し,入・退所者のライフチャンス保障の方策を講じるべきである.

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© 2014 一般社団法人 日本社会福祉学会
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