社会福祉学
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介護職員の虐待認識に基づいた高齢者虐待定義の再構築への試み : 「準虐待」の構造と特徴に着目して
任 貞美
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2014 年 54 巻 4 号 p. 57-69

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抄録

本研究は,「実践上の高齢者虐待定義の構築」に向けて,介護職員の虐待認識を基とに新たに「準虐待」を加え,その構造と特徴を明らかにすることを目的とした.全国の介護老人福祉施設に勤務する介護職員5,000人を対象に,質問紙調査を行い,1,143人を分析対象とした.調査期間は2012年10月11〜25日までである.因子分析を行った結果,「準虐待」の構造として,「尊厳の侵害」「役割の侵害」「自律の侵害」「交流の侵害」の4因子が抽出された.また,4因子の各「下位尺度得点」の平均値を比較した結果,「尊厳の侵害」「交流の侵害」に対する介護職員の虐待認識は高く,「役割の侵害」「自律の侵害」についての虐待認識は低かった.上記の結果から,(1)高齢者にとって重要な生活,「尊厳・役割・自律・交流」の侵害は「準虐待」であること.(2)介護職員が見逃しがちな高齢者の「自律や役割のある生活支援」の重要性について,介護職員の共通理解を強化する必要性が示唆された.

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© 2014 一般社団法人 日本社会福祉学会
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