2017 年 58 巻 1 号 p. 1-12
本稿の目的は,家庭奉仕員制度と家政婦の対象領域の変化から日本のホームヘルプの歴史を再検討することである.国際ホームヘルプ協会の国際的定義によれば本来ホームヘルプは供給主体・対象に限定はなく,家庭奉仕員制度も家政婦も共にホームヘルプの構成要素の一つである.しかし先行研究が論じているホームヘルプは家庭奉仕員制度に限定されてきた.
そこで本稿は,同協会の定義に準拠し両者の対象領域の変化に着目して,戦後から2000年までの日本のホームヘルプの歴史を検討した.その結果,日本のホームヘルプは,①1960年代初頭までは両者の対象領域は不明確であったが,②1960年代中頃より家庭奉仕員制度の法制度整備によって名実ともに分化し,③1970年代中頃以降になると高齢化社会などの社会背景の変化に伴い家政婦が在宅高齢者へ対象領域を拡大させたことに端を発し,各々が次第に再接近・同化するという3点の時代区分が存在することが明らかになった.