2017 年 58 巻 1 号 p. 153-163
カナダでは社会正義を根底とするクリティカル・ソーシャルワークがAnti-oppressive practice(AOP)(反抑圧主義)と呼ばれ実践されている.本稿はクリティカル・ソーシャルワークと反抑圧主義の視座を確認したうえで,カナダの社会福祉組織で反抑圧主義がどのように求められ,また福祉に携わる人々がどのように認識しているかを,求人情報の内容の調査,反抑圧主義を組織理念として採用している団体の事例の検討,さらにソーシャルワーカーと学生に行ったインタビューから明らかにする.これらの調査からは,福祉に携わる人々の中にも,反抑圧主義に対する異なる態度があり,必ずしもソーシャルワークの中での主流とは言えないものの,その必要性が認識され,積極的に実践するために取り組みが行われている現場があることがわかった.