2017 年 58 巻 1 号 p. 57-70
就労移行支援事業は十分な成果を上げているとはいえず,実践現場に適用しうる効果的な「モデル」を構築し,実施・普及させる必要がある.本研究は,全国22事業所において,プログラム評価理論と優良(Good Practice)事例の質的検討に基づき構築した「効果モデル」や具体的な取り組みを規定した「効果的援助要素」に準拠した試行的介入と評価を行い,実践への適用可能性やより効果的なモデルへの発展,「制度モデル」への発展可能性を検討した.
その結果,「効果的援助要素」の実施は就労移行者数や就労定着率の上昇に貢献し,より効果的なモデルへと発展させるためには,OJT(企業でのトレーニング)による支援やネットワーク型の就労定着支援のさらなる検討が必要であることが明らかになった.そして,この「効果モデル」を「制度モデル」へと発展させ,実施・普及を図るためには「効果モデル」に基づいた情報の整理と関係者への提供が必要であるという示唆を得た.