社会福祉学
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論文
戦前期東京市における在宅精神病者への方面委員と特別衛生地区保健館の活動
末田 邦子
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2018 年 59 巻 3 号 p. 1-15

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抄録

本研究の目的は,戦前の東京市方面委員および東京市特別衛生地区保健館の在宅精神病者に対する両機関の活動および役割を明らかにすることである.研究の対象期間は,東京市に方面委員が設置された1920年から,東京市が東京都に移行した1943年までと定め,歴史研究の方法に基づき,東京市方面委員や特別衛生地区保健館に関する史資料を検討した.

本研究の結論は以下である.東京市方面委員は,①病院入院や施設入所への精神病者の仲介機能,②精神病者家族への危機介入を含む相談機能を担った.東京市特別衛生地区保健館は,①診断機能,②保健婦訪問を中心としたアフターケア③方面委員や小学校等との連携を行った.両者は精神病の予防が国家的政策である時期でも,精神病者家族の身近な存在として,病者家族の立場にたった実践活動を展開していた.しかし精神病者本人への関わりは診断のみで,当時の限界も示された.

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© 2018 一般社団法人 日本社会福祉学会
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