社会福祉学
Online ISSN : 2424-2608
Print ISSN : 0911-0232
論文
老障介護家庭における知的障害者の自立をめぐる経験―当事者視点で捉えた複線径路・等至性モデルによるプロセスの可視化を通して―
福田 真清
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2018 年 59 巻 3 号 p. 30-43

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抄録

本研究は,グループホームで生活する8人の知的障害者本人の視点を通し,老障介護家庭における知的障害者の自立をめぐる一連の行動や認識の変容と,その間に働く自立への促進要因と抑制要因を明らかにすることを目的とした.分析には複線径路・等至性モデルを用いた.分析の結果,知的障害者は《当たり前に親と暮らしている》《母親の言葉を咀嚼し自立に向かう》《新生活に馴染みきれない》《GHで暮らしていくと決心する》という径路をたどり,一部は意にそぐわない自立に迫られていたが,最終的にグループホームでの生活を決意していた.知的障害者が自宅で生活しているときには自立への意識を高め,その理解が深まるよう,自立した生活を送る当事者との交流や実生活に近い形で宿泊体験などが可能となる機会が求められる.そして,グループホームへの入居後は自立した生活が定着するよう,入居者同士の交流や個々の実情に応じた支援が望まれることが示唆された.

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© 2018 一般社団法人 日本社会福祉学会
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