2019 年 60 巻 2 号 p. 14-24
本研究では,実親と交流のある里子を養育する里親の体験プロセスを明らかにすることを目的とした.実親と交流のある里子の養育経験のある里親にインタビュー調査を実施し,5事例を収集した.得られたデータは,SCQRM(構造構成主義的質的研究法)をメタ研究法としたM-GTAにより分析した.
分析の結果,6つのカテゴリーと13の概念からなる「実親と交流のある里子を養育する里親の体験プロセスモデル」が構成された.本モデルより,里親は,里子の実親との【交流にかかる負担や不満】を感じつつも,【里子の葛藤への関わりの工夫】と【実親・里子の関係調整の支援】を行う循環的なプロセスを体験していた.【里子と実親の交流を支える基盤】に支えられつつ,里親は【実親に対する認識の変容】を経験し,さらに【里親子関係の成熟】の手応えを感じ,自信をもって里子の養育を積み重ねていくことが示唆された.