社会福祉学
Online ISSN : 2424-2608
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論文
階級関係から問う貧困問題
志賀 信夫
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2020 年 61 巻 3 号 p. 1-13

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抄録

本稿の目的は,貧困問題について階層論的議論(階層論的貧困論)に終始することの弊害を論じつつ,階級論的視点をもった議論(階級論的貧困論)の重要性について明らかにしていくことである.「階層論的議論に終始する」とは,貧困問題をめぐる議論において「資本–賃労働関係」の視点を含まない態度のことを示している.本稿で論じる階層論的貧困論に終始することの弊害とは,①貧困の自己責任論を批判できないこと,②資本による「統治」の論理に抵抗できず,むしろこれを助長すること,③資本に有利な価値規範を相対化することができず,むしろこれを助長すること,などである.これに対して,階級論的貧困論は,資本による「統治」に対抗可能な視点を提示し,資本に有利な価値規範を相対化するための理路をひらくものとなっている.またそれらの可能性を議論展開することは,貧困問題の根本的な撲滅に向けた社会運動への貢献にもつながる.

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© 2020 一般社団法人 日本社会福祉学会
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