抄録
日常診療において四肢弁状創をしばしば経験する。剥脱された皮弁をそのまま戻して縫合すると広範囲の壊死に陥ることが多く,切除するか温存するかの判断に難渋する。われわれは弁状創に対して,皮弁を戻した後にキルティング縫合を行っており,良好な結果を得ているため報告する。5例の四肢弁状創を対象とした。皮弁を欠損部に戻して辺縁を縫合後,キルティング縫合を行い下床に密着させた。皮弁の軟部組織が厚い症例では,遠位側を脂肪除去してからキルティング縫合を行った。剥脱された皮弁は4例で全生着,残りの1例は遠位部の部分壊死を生じ保存的治療を要した。5例とも術後に機能障害は認めなかった。剥脱された皮弁の壊死範囲が広い場合,植皮や皮弁手術などの再手術が必要になることが多い。キルティング縫合は,剥脱された皮弁の生着領域を拡大する有用な選択肢の一つになりうると考えられた。