日本薬物動態学会年会講演要旨集
第18回日本薬物動態学会年会
セッションID: 8PF-31
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D-3-Hydroxybutyrate(HBA)による培養ヒト結膜上皮細胞(CCL20.2)でのapoptosis抑制効果とエネルギー代謝の関連
*吉崎 聡中村 滋佐藤 宏山野 好章樋口 明弘坪田 一男
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キーワード: n-6, m-6
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抄録

【目的】我々はHBAがCCL20.2の血清除去刺激によるapoptosis誘導を抑制することを報告した.HBAはケトン体の1つで,種々のストレス状態においてもエネルギー基質として有効利用されることが知られている.そこで本研究ではHBAのapoptosis誘導抑制のメカニズムをエネルギー基質としてのHBA利用の面から検討した.
【方法】CCL20.2 を10%仔牛胎児血清(FCS)添加(+)Medium199(5mMグルコース(Glu),0.01mM HBAを含む)中で3日間培養し,実験1:FCS(-)、FCS(-)+5-40mM Glu,FCS(-)+0.01-80mM HBA,のMedium199に置換し再培養した.24時間後の細胞生存率をアラマーブルーを用いて測定した.実験2: FCS(+)+80mM HBA, FCS(-)+80mM HBA,のMedium199に [14C]HBAまたは[14C]Gluを添加した培地に置換し再培養した.24時間後に,[14C]HBAまたは[14C]Gluから生成した14CO2を液体シンチレーションカウンターで計測し,エネルギー基質としてのHBA,Gluの利用量およびHBA / Glu比を算出した.
【結果】実験1:血清除去による細胞生存率の低下に対してはGluよりもHBAが有効であり,その効果は濃度依存的であった.24時間後の細胞生存率は,血清-では16.4%,40mM Gluでは26.1%に対し,80mM HBAでは55.3%維持された.実験2:血清除去刺激によりHBA,Gluの利用量は共に減少したが,利用量のHBA / Glu比は血清+では0.31,血清-では0.43となった。
【考察】CCL20.2の血清除去刺激によるapoptosis誘導をHBAはGluに比較し顕著に抑制した.また,apoptosisが誘導された状態(血清-)ではHBAのエネルギー基質としての利用率が増加することから,HBAによるapoptosis抑制効果の作用機序の1つとして,代替エネルギー基質としての有効利用が示唆された.

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© 2003 日本薬物動態学会
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