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こどもの脳死下臓器提供における被虐待児除外を再考する
種市 尋宙
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2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 205_2

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抄録

2019年度より開始された厚生労働科学研究「小児からの臓器提供に必要な体制整備に資する教育プログラムの開発(班長 荒木尚)」において、演者は「被虐待児除外に関する研究」を分担している。こどもの脳死下臓器提供におけるプロセスでは、様々な問題点が指摘されてきたが、特に被虐待児除外に関する点は多くの議論と混乱がある。そこで、本研究においては、15歳未満の脳死下臓器提供事例を経験した施設の中で、同意が得られた10施設(11事例)を対象として、主治医および院内関係者に臓器提供の実際に関するヒアリングを行い、データ解析を行った。経験施設における議論の経緯は重要な情報を多く含んでおり、個人情報に配慮した上で現在、解析を進めている。脳死に至る原疾患の事例発生現場は、これまで第三者の目撃がある屋外が典型的とされていたが、実際の経験施設では屋内で第三者の目撃がない事例が大多数であった。各施設内の虐待対応チームや組織が医学的評価を丁寧に行うとともに警察や児童相談所との連携を円滑に行って、虐待評価を行っていた。その他にも「安全のネグレクト」に対する考え方、その扱いなどについても各施設で評価したが、大きな問題とはなっていなかった。被虐待児除外のプロセスでは、家族を疑い評価する医療でもあり、多くの矛盾と困難を内在した医療となってしまった。この混乱を解決するために、まずはその実状を把握することが重要である。

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