2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 252_1
[背景] わが国の脳死肝移植で高齢ドナー・レシピエントが移植成績に及ぼす影響は不明である。 [方法]2019年3月までの脳死肝移植523例のレシピエント・ドナー情報を日本肝移植学会、日本臓器移植ネットワークの協力のもと収集し、高齢ドナー・レシピエント(それぞれ60歳以上と定義)のグラフト生存への影響を検討した。高齢ドナーについては、全期間および期間別(Era1: 1-100例, Era2: 101-300例, Era3: 301-523例)に成績の変遷を検討した。 [結果]高齢レシピエントは63例(12%)おり、1年グラフト生存率は高齢vs非高齢で差はなかった(86 vs 87%)。高齢ドナーによる移植例は70例(13%)おり、1年グラフト生存率は高齢で有意に不良で(73 vs 89%)独立した予後不良因子の一つだった。Era1, 2では時代別の解析でも高齢vs非高齢で1年グラフト生存に有意差を認めたが、Era3では差を認めなかった。高齢ドナー70例で1年グラフト廃絶の危険因子を解析したところ、総阻血時間、レシピエント術前ICU入院が同定されたが、Era3ではこれらの因子を持つ症例が少ない傾向で、更に70歳以上の超高齢ドナーを認めなかった。 [結語]高齢ドナーはかつて強力な予後不良因子だったが、近年成績は改善している。症例選択等、各施設の経験が成績向上に貢献している可能性がある。