2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 258_1
近年、Ex Vivo Lung Perfusion (EVLP)が障害肺の移植前治療のプラットフォームとして有効であることが、研究にて証明されており、体外でのマージナルドナー肺のテーラーメイド治療に注目が集まっている。トロント大学にて、EVLP評価後に移植適応外と判断されたマージナルドナー肺の約半数が、誤嚥と感染により障害されていることを証明した。 トロント大学にて、感染による肺炎が原因で移植に不適応だった研究肺を用い、肺炎に対するEVLP中の広域抗生剤治療の有効性を証明した。抗生剤(メロペネム2 g+バンコマイシン1 g+シプロフロキサシン400 mg or アジスロマイシン500 mg)をEVLP閉鎖回路の灌流液中に投与することにより、灌流液中の抗生剤濃度を高濃度に維持し、ドナー肺から検出された細菌数とともに、灌流液中のエンドトキシンレベル、移植後の早期移植肺機能不全に関連した炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β、MIP-1 α、MIP-1β)を有意に減少させ、EVLP中の肺機能を改善した。しかしながら研究肺であるが故に、肺移植までには至っていない。 このようなEVLPを用いたtranslational researchとして行われている様々な研究は、臨床に還元することを目標に行われており、本邦においても早急なEVLPの臨床導入が待たれる。