2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 330_1
腎移植は最良の腎代替療法である。わが国の腎移植件数は増加を続け、昨年初めて2000件を超えた。生体腎移植であれば10年生着率が90%を超える。移植腎は貴重であり拒絶反応などのイベントが起こらないような管理が必要である。このような移植腎の成績の向上は、近年の免疫抑制薬の開発によるものである。現在はタクロリムスや、シクロスポリンのカルシニューリン阻害薬(CNI)、ミコフェノール酸モフェチル、さらにエベロリムスが維持免疫抑制薬として使用される。これらは全てがTDMの対象薬剤であり患者個人、移植の時期により至適な投与量の設定が必要となる。各々に、有害事象があり薬剤の選択も慎重である必要がある。またCNIはCYP3A4あるいは5の代謝酵素により分解されるが、CYPで代謝される薬剤は多く、有害事象の治療の細には薬剤相互作用の観点から、併用薬剤の選択、投与量の設定が極めて重要となる。また、免疫抑制薬は、毎日の服用が必要であるが、ときに服薬コンプライアンスが問題となることがある。コンプライアンスの低下は拒絶反応の発生リスクであり早期に移植腎喪失に繋がる。また、腎移植が成功してもGFRは様々であり、腎排泄性である薬剤についてはその投与量の綿密な設定は避けて通れない。つまり、腎移植の成功は精巧な薬剤の選択、投与量設定、服薬の指導が鍵を握る。すなわちこれらが、腎移植医から薬剤師にお願いしたいことである。