2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 334_1
【背景】臓器移植後の免疫抑制薬の使用は臓器移植の成功率に貢献するが、重篤な感染症に至るリスクがある。今回レジオネラ肺炎に罹患した患者のセルフケア行動の変化について検討した。【目的】レジオネラ肺炎に罹患した患者の生活行動を確認し、セルフケア行動の変化について検討する。【症例・方法】40歳代女性。十数年前に生体膵・腎同時移植施行。腎機能低下を認め透析再導入。今回発熱を主訴に緊急入院しレジオネラ肺炎と診断されICUへ入室。症状改善し29病日目に退院となった。生活行動について入院中の指導および退院後の生活を確認した。A病院看護部倫理審査委員会の承認を受けた。【結果】患者は定期的に温泉浴場を利用するため掛け流し温泉の利用を指導していたが、発症4日前に循環式の浴場を利用していた。入院中に温泉浴場、加湿器等の使用方法について再度指導した。自宅の浴槽やエアコンの清掃を行うなど感染予防への意識が高まり、セルフケアに対する行動変容がみられた。【考察・結論】セルフケアとは、患者が自分自身の生命や健康を維持するために意識的・計画的に行う行動である。本症例は救命し得たが、生命危機に直結する重篤な合併症であるレジオネラ肺炎を経験し、適切な知識を持って患者指導を行うことにより、患者が主体的に生活に応じたセルフケアを促進できた。確実なセルフケアの継続は、臓器移植後の予後改善や移植臓器の長期生着につながると考える。