2020 年 55 巻 Supplement 号 p. 376_1
【目的】臓器移植医療においてレシピエント移植コーディネーター(以下、RTC)が遭遇する倫理的場面での苦悩の実態を明らかにする。【方法】本研究に同意が得られた89施設に勤務しているRTC(看護職)を対象に、質問紙調査を実施した。【倫理的配慮】所属施設の研究倫理審査会の承認を得て実施した(承認番号:19021)。研究協力は自由意思に基づくものとし、質問紙の回答をもって同意を得た。【結果】84名(回収率47.5%)から回答が得られた。認定資格所有は64名(76.2%)で、そのうち兼任28名(43.8%)、専任15名(23.4%)、専従19名(29.7%)であった。最も多くRTCが遭遇した倫理的場面は、『レシピエントの意思決定(86.9%)』『RTCと患者家族の情報の隔たり(85.7%)』『倫理的感受性の向上を意識(84.7%)』『移植後の患者の自己管理(86.9%)』であった。【考察】認定RTCのうち兼任者である43.8%が、認定資格の更新が危ぶまれる状況下で業務を行っており、組織内でのRTCの存在価値を発信していく必要性が迫られている。 また、臓器移植医療におけるRTCの苦悩は、移植の意思決定や術後の自己管理に関する問題への関わりに依拠する可能性が高く、レシピエントやドナー・家族が移植決定時に遭遇する様々な葛藤や、移植後に起こりうる問題に立ち向かうためのサポートの必要性が示唆された。