移植
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肺移植における術後早期栄養介入の試み
池田 政樹中島 大輔大島 綾子大島 洋平栢分 秀直田中 里奈山田 義人豊 洋次郎大角 明宏濱路 政嗣芳川 豊史伊達 洋至
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s104

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抄録

背景:肺移植後の栄養管理では, 体外循環使用に伴う腸管浮腫, 誤嚥, 肺水腫に注意が必要で, 既存のプロトコルは無い. 今回プロトコルを作成, 導入したので, その成果を報告する.

対象と方法:2019年1月から2020年12月に当院で実施した18歳以上の肺移植43例を対象とした. プロトコルは, 術後2-3日に経腸栄養または中心静脈栄養を開始し, 術後7日目の目標エネルギーを標準体重×25 kcal, 蛋白量を標準体重×1 gとし, 極端なやせは現体重を用いた. プロトコル開始前28例(前群)と開始後15例(後群)で, 栄養開始日, 術後7日目の栄養充足率, 体重・体組成の変化, 脊柱起立筋の筋量(CT断面積)を比較した.

結果:経腸栄養は中央値で前群71%, 後群100%, 中心静脈栄養は前群79%, 後群100%に実施された. 栄養開始は後群で早かった(前群4日, 後群3日, p=0.004). 術後7日目のエネルギー充足率は前群69%, 後群83%(p=0.010), 蛋白充足率は前群74%, 後群95%(p=0.008)であった. 術後1か月, 3か月の体重減少は後群で有意に抑制された(-3.7 kg vs -1.4 kg, p=0.031; -4.4 kg vs -0.1 kg, p=0.013). 術後2か月で細胞外水分率に差はなく, 体重に対する浮腫の影響は否定的であった. ICU退室時に見られた筋量減少(前群-16%, 後群-12%)は, 術後3か月で後群において有意に回復していた(前群-14%, 後群-4%, p=0.009).

結語:早期栄養介入により, 術後早期の体重減少, 筋量減少が抑制された可能性がある.

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