移植
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吸入麻酔薬、イソフルランによる肝細胞移植グラフト生着促進効果に関する検討
西牧 宏泰齋藤 純健稲垣 明子中村 保宏山名 浩樹猪村 武弘大橋 一夫宮城 重人亀井 尚海野 倫明後藤 昌史
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s118

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抄録

【背景】臨床肝細胞移植の治療成績には依然として大きな改善の余地がある。比較的良好な結果が報告される動物実験と臨床症例の相異の一つとして、全身麻酔、特に吸入麻酔薬の使用の有無が挙げられる。代表的吸入麻酔薬であるイソフルランは、門脈拡張作用と抗炎症作用を併せ持つことから、移植肝細胞の生着への影響を検証した。【方法】F344ラットをドナー、F344を背景に持つ近交系無アルブミンラットをレシピエントとし、覚醒下で肝細胞移植を行うawake群(AW群)、イソフルラン吸入麻酔下で移植を行うisoflurane群(ISO群)の2群に分け、1.0×10⁷個の分離肝細胞を移植した。移植後、血清アルブミン、AST、ALT、LDH値および血中炎症性因子を測定し、さらに免疫組織化学染色とex vivoイメージングも行った。【結果】ISO群の血清アルブミン濃度は、AW群に比べて有意に高値を示した(p<0.05)。ISO群の血清AST、ALT、LDH濃度は、AW群と比べて有意に低値を示した(p<0.0001)。ISO群におけるIL-1β、IL-10、IL-18、MCP-1、IP-10、RANTES、Fractalkine、およびLIXは、AW群よりも有意に抑制された。一方でレシピエント肝臓の壊死領域は、ISO群においてAW群よりも限局される傾向が確認されたが、肝実質における移植肝細胞の分布には、両群間で差を認めなかった。【結論】イソフルランの使用が、肝細胞移植における動物モデルと臨床移植成績の解離の一因である可能性が示唆された。

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