移植
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当院における生体肝移植後リンパ増殖性疾患:成人および小児症例の解析
松村 宗幸宮城 重人戸子台 和哲柏舘 俊明藤尾 淳宮澤 恒持佐々木 健吾斎藤 純健金井 哲史海野 倫明亀井 尚
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s140

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抄録

移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)は移植後の生命を脅かす予後不良な合併症である。2021年までに生体肝移植を施行した208例を対象として臨床病理学的に解析した。対象はPTLDと診断した10例(proven PTLD4例、probable PTLD6例)。移植時の年齢中央値は小児8例では11か月、成人2例では60歳。移植時のEBV-IgGはD+R+が9例、D+R-が1例。原疾患は胆道閉鎖症が8例、B-LC1例、B型劇症肝炎1例。免疫抑制剤の導入はFK+MPが7例、FK+MP+Basiが3例。PTLD発症までの期間中央値は小児で9カ月、成人で38カ月。PTLD発症時のEBV-PCRのウイルス量の中央値は小児で39410copies/ml、成人で0copies/ml。病変の局在はAnn Arbor分類Ⅰが4例、Ⅱが1例、Ⅲが2例、Ⅳが3例であった。proven PTLDの4例において、2例は鼠経リンパ節生検、1例は頸部リンパ節生検、1例は肺生検にて病理検体が得られた。病理像はWHO分類でnondestructive PTLD1例、polymorphic PTLD1例、monomorphic PTLD(DLBCL)2例。6例は免疫抑制剤の減量を施行、3例ではRituximab投与、1例ではRituximab+CHOP療法を行った。外科治療として成人の1例では脾臓摘出+胃部分切除+膵尾部切除を施行し、小児の1例では縦郭の残存腫瘍に対して切除を施行した。全例で生存。小児のPTLDの多くがEBVの感染/再活性化に起因するため、免疫抑制剤の減量後に増悪する場合、病理組織が得られていなくても化学療法を施行することにより良好な予後が得られる可能性がある。

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