移植
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2020年コロナ禍、全国救命救急センターにおける臓器提供の実態調査から見えたこと
稲田 眞治
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s15

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抄録

COVID-19(以下コロナ)の蔓延により救急医療へ負荷がかかった2020年、臓器提供数は心停止後9件・脳死下69件の計78件にとどまり、改正臓器移植法の施行後、最も少なかった。日本救急医学会は厚労科研のもと、コロナ禍における臓器提供の現状を把握するため、2020年10~11月に全国救命救急センター290施設へ意識調査を実施、212施設から回答を得てその結果を公表した。202施設が行政依頼でコロナ患者を受け入れ、210施設で一定の防護体制を実施、救急終末期患者の家族への説明形態は116施設で何らかの制限を実施していた。2020年にドナー候補を経験した53施設のうち30施設が臓器提供に至り、臓器提供に至らなかった23施設中、コロナ診療との関連で提供中止になったと回答したのは4施設のみであった一方、67施設で院内コーディネーターがコロナ診療に関わり、85施設が法的脳死判定の手技によるエアロゾル発生に何らかの留意を示し、28施設が臓器提供時に来院する関係者に対し何らかの受け入れ制限を想定あるいは実施していた。本意識調査ではコロナ診療に伴う負荷は総じて臓器提供に直接支障を来さなかったと示唆されたが、自由記載を詳らかに評価すると「マンパワー不足のため臓器提供にならないよう病状説明してほしいと暗に言われた」との記載も確認された。本演題では、意識調査の結果を報告し、コロナ診療に従事している一救急医の立場から、コロナ禍での臓器提供について考察する。

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