移植
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生体腎移植後早期のプロトコール生検の意義
瀬戸口 誠兵頭 洋二新里 高広徳本 直彦齋藤 一隆
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s164

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抄録

[緒言]腎移植後のプロトコール生検の意義の一つとしてsubclinical rejectionを早期発見し、介入することで、後の腎機能低下を防ぐことがある。

[方法]2017年12月から2020年12月まで当院で腎移植を施行された42症例から得られた計80回の生検を解析の対象にした。プロトコール生検の時期は、移植後3か月、6か月、12か月、24か月としている。維持免疫抑制療法はタクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、ステロイドの3剤併用療法で行った。

[結果]いずれ時期においてもTリンパ球関連型拒絶反応を認めなかった。borderline changesを認めた症例は3か月、6か月、12か月、24か月でそれぞれ1, 1, 2, 1例であった。急性抗体関連型拒絶反応は3か月で2例に認められた。患者別でみると、3か月でsubclinicalに急性抗体関連型拒絶反応を認めた症例は6か月、12か月目では慢性抗体関連型拒絶反応となっていた。12か月、24か月目のいずれもborderline changesを認めた症例は術後早期に急性抗体関連型拒絶反応を認めた症例であった。

[結論] 約10%の症例でsubclinical rejectionを認めたが、明らかなTリンパ球関連型拒絶反応は認めなかった。移植後早期に拒絶反応を認めた症例に関しては治療効果の確認を判断するために一連のプロトコール生検を行う意義はあると考えられる。しかし、他の拒絶反応を認めなかった多数の症例一連の生検を行う妥当性は乏しく、症例毎に検討していくことが必要と思われた。

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