移植
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エベロリムス使用の現況と課題
市丸 直嗣
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2021 年 56 巻 Supplement 号 p. s193

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抄録

エベロリムスは本邦では2007年に心移植領域で最初に保険収載された。その後に腎移植領域において日本で治験が実施された後に2011年12月に保険収載され,今年で10年となる。エベロリムスは臨床腎移植でそれまで用いられていた他の免疫抑制薬と違う作用機序をもち,mTORと結合して細胞増殖シグナルを阻害することで免疫抑制作用や細胞増殖抑制作用をもつ。また,血管内膜肥厚を抑制することにより長期予後改善が期待できるという特徴的な長所を有する。高用量では腎癌などで保険収載されている。

欧米では当初カルシニューリン阻害薬(CNI)との代替や切替えの報告が多く,限定的な使用に留まった。本邦では欧米の臨床試験結果から学び,CNIやステロイドの長期使用による副作用を軽減することにより,移植腎および患者の長期予後改善を目指して用いられた。従来の多剤併用免疫抑制療法にadd onし,長期移植腎障害が問題となるCNIを低用量化する,ステロイド中止などの種々の免疫抑制レジメンが採用されている。

エベロリムスの副作用として問題となる蛋白尿,腎機能低下,脂質異常症について,機序の解明や適切な症例選択についての知見が集積され,安全に使用できるようになってきている。長期間観察が必要な悪性腫瘍についての知見も近年蓄積されつつあり,エベロリムスによる腎移植患者の長期予後改善が期待されている。

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